2024/5/4 朝日新聞への質問書と回答
4月21日付の朝日新聞福島総局長大槻規義記者による記事、アナザーノート「「総代で卒業の被災者」その注目がつらい 茶番に苦しんだ子どもたち」において、捏造を疑われる報道がありました。https://ml.asahi.com/p/000004c215/24633/body/pc.html
この報道を巡りSNSでは「炎上」しており、避難や風評を経験しいまも苦しむ福島の被災者などからは重大な事実誤認がある、被災地を傷つける報道被害だという旨の声が殺到しています。事実関係を独自に調査した投稿の一つ、福島県議会の渡辺康平県議の投稿だけでも5月2日時点で53.5万以上のPVとなっており、すでに朝日新聞様の福島県内購読数3.7万部の実に14倍以上も読まれている状況です。
そこで、本件について朝日新聞社としての見解を伺いたく質問書をお送りさせて頂きます。(1000文字の制限があるので複数に分割してお送りします)
お忙しいところ恐縮ですが、以下11の質問に対して、ご担当者様の部署とご芳名を明らかにした上で、5月10日(金)17時までにメールでの回答をお願い申し上げます。
また、返答の有無や回答内容も含めた貴紙のご対応は、記事や書籍、SNS、学術論文などに記録・掲載させて頂きますので予めご了承をお願い申し上げます。
1.記事には「イベントは町内の復興住宅の花壇に、放射性物質をできるだけ取り除いた除染土を用い、花を植える催しだった」と書かれていますが、渡辺県議が福島県と大熊町、さらに環境省と福島高専などの当事者それぞれに事実を確認したところ、その全てから「花壇に花植えはあったが除染土を用いた事実はない」との回答が得られています。
なぜ事実に基づかない捏造報道をしたのでしょうか。その理由をお答えください。
先日は読売新聞記者が紅糀サプリを巡る談話を捏造して諭旨退職、幹部も更迭する事件が起こったばかりです。仮にこれが事実誤認であったとするならば、朝日新聞社では、今回の捏造に対しどのように責任を取るかも具体的にお答えください。
2.これまでSNSで当該記事に対し無数に寄せられている抗議を無視している理由をお答えください。また、この対応は大月総局長個人の判断であるか、朝日新聞としての判断であるかも合わせてお答えください。
3.処理土の最終処分・再生利用の課題解決と合意形成はこれまで当事者である大熊・双葉両町長と議会が繰り返し要望し、これは中間貯蔵施設敷地内にかつて暮らしていた住民2000人を抱える最も深刻な被災経験をした多くの住民たちの悲願でもあります。事実、複数の調査によって、多くの福島県民、双葉郡の住民も県外最終処分や再生利用の推進を望んでいます。そうした状況を伝えるどころか、地元が反対ばかりであるかのような見解のみを一方的に書いた根拠と理由をそれぞれご教示ください。
4.この記事では、あたかも中立的な第三者であるかのような立場から合意形成がなされていないといいつつ、一方では前述のような一部個人の見解のみにスポットを当てることで、また事実誤認の可能性がある記載を含めることで、民意を誤解させ、事実上合意形成を自ら妨害するスタンスの構成となっています。問題が残っているからダメだといいつつ、問題を深刻化させる側に加担する。これで読者の耳目を引いてメディアとしての収益をあげる。これは利益相反ではないでしょうか。利益相反という認識があるか否か、イエスかノーかのどちらかで明確にお答えください。
5.この記事には、陰謀論的なナラティブもほのめかされています。新宿・所沢等での再生利用についてネガティブに触れ、「被災者でもある地元の子どもと住民が環境省と組み政策への合意形成を進めようとしている」かのような論調の上、福島高専の先生が「町の人が再利用に合意するように頑張ってほしい」と言ったとまで書かれています。
ところが現実には、前述のように双葉町大熊町では首長や多くの住民が早期の県外処分を繰り返し要望してきた実態があります。中間貯蔵・環境安全事業株式会社法においては、除染等の措置に伴い生じた土壌等について、「中間貯蔵開始後30 年以内に福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずる」ことが国の責務としても明記されています。そうした状況で、「持ち出される側」の町の人に対して再利用の合意を強く求める行為は極めて不自然と言えます。
前述したように、すでにこの記事では「使われていない土を使っていた」かのような捏造がありました。福島高専の先生による当該発言も、本当にあったのでしょうか。
文章からはこの発言の主体がぼかされています。「住民が合意するように」という旨の不自然な発言は具体的に、いつ、どこで、だれが言った発言で、大月記者はどのような方法で事実の裏付けを取ったのでしょうか。お答えください。
なお、当然ですが、「取材源の秘匿」という理屈は成立しえません。あたかも被災地の誰かが不正なことをしているかのような陰謀論じみた仄めかしをすること自体が、被災地に、貴紙がしばしば懸念を表明してきた「分断」を招く故です。この記述は、ただでさえ苦境にあえぐ被災者に対して報道被害を起こす可能性を誘発するものであり、実際にこの記事によって、記事の登場人物や福島高専に疑念をもつ反応も多数でています。既にこの記事は公表され、社会的影響が生じてしまっています。誰かが不正をしたかのような認識させる事実を公表した以上、取材源と取材方法を明確にし、説明責任を果たす必要があります。もし違うと言うのであれば、その社としての理由を明確に述べてください。
6.上記の記述も事実に基づかない捏造であった場合、記事は福島高専や大熊町の住民の方々をはじめとする多数の被災者の方々の民意に対する全国からの誤解を招くと共に、要望されている早期の県外処分と復興を阻害することにも繋がります。記事を訂正・謝罪するか、あるいはこの記事の作成に関わり責任がある者にいかに処遇するか明確にお答えください。
7.記事内では『「子どもたちのため」「社会のため」にと、大人が子どもの語りを誘導することもある、と指摘する。それは、報道機関にも当てはまる。』『震災をテーマにする限り、視聴者が理解しやすい「子どもたちの像」が必要なのかもしれない。』『子どもの側も、報道機関の発信に協力したり、発信を見聞きしたりしながら、「像」をつくっていった。』との記述がありました。
これらに対し、<朝日新聞による当事者の口を借りた腹話術報道、マッチポンプ・クレイムである。当事子供であった女性をまるで人質のように矢面に立たせ、更に傷付け、その被害をもってさらに問題を深刻化させて記事にする利益相反であるし、記事中の記述をそのまま返せば、『震災をテーマにする限り、朝日新聞が利用しやすい「当事者たちの像」が必要なのかもしれない。先日、処理水の報道を確認したが、やはり海洋放出を懸念し反対したり、風評への不安を語る姿がほとんどだった』とさえ言える「前科」が朝日新聞には大量にある。>との批判も出ています。この批判が正当でないと考える場合、それを覆す具体的な根拠と共に反論をお願いします。
8.別の関連記事についても質問致します。大月記者は2021年9月にも、「風評加害者」って誰? 汚染土利用に漂う不安な空気との記事を書き、返信が624件、引用コメントも含めたリポストが1532件と大炎上状態になっています。その中には、「(風評加害者は)お前だ」「鏡を見ろ」などといった意見論評にあたるものもありますが、「処理土を汚染土と書いたこの記事自体が風評加害」などと事実誤認や不当な印象操作への疑念を呈した反応も多数含まれます。貴紙はしばしば社会の「分断」に懸念を呈し、政治・行政に「説明責任」を求めます。当然、Xアカウントへのリプライ等は御社側でも見れる状態になっています。しかし、この記事自体が、事実として、火のないところに煙を立てて「分断」を煽り、同時に事実誤認や不当な印象操作への「説明責任」を果たさない大月記者の姿をあらわにしています。これらの批判を無視し続けてきた理由をお答えください。
9.上記2021年記事では風評加害について「いやな空気」などと書いていますが、風評加害という用語と概念は3.11前、それどころか2004年以前から使用されてきた事実があり、学術的な定義付けもされてきた概念であります。これを無視し、偏った見解のようにとりあげたのは何故でしょうか。その理由をお答えください。
10.私の取材の中で、これら記事内にて実名で名指しされた個人に対し、この記事をきっかけにSNSや仕事上で誹謗中傷をされ、社会的評価が低下し、日常生活・業務に大きな被害がでたという告発や懸念の声があがっています。現在、SNS誹謗中傷は多数の自殺者やうつ病等を引き起こす深刻な社会問題になっていることは貴紙でも報道されてきた通りです。そして、報道倫理上それは深刻な問題として捉えられています。例えば、民放連は2024年4月1日に改正した放送基準「第8章 表現上の配慮」において、「放送内容によっては、SNS等において出演者に対する想定外の誹謗中傷等を誘引することがあり得ることに留意する。また、出演者の精神的な健康状態にも配慮する。」と条文を新設しています。
このような社会情勢の変化がある中で、あえて社会的評価が下がりえる意見論評が含まれる記事内で、特定個人を実名で記述したのか。その理由、そして、その被害の声に対して謝罪するか述べてください。
11.外務省は、『国家及び非国家主体が、日本の政策に対する信頼を損なわせる、あるいは、民主的プロセスや国際協力を阻害するといった目的のために、偽情報やナラティブを意図的に流布する』『ALPS処理水を巡っては、事実とは異なる偽情報を拡散する試みが見られた』とまで明言しています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/pagew_000001_00550.html
これまで挙げた記事の問題点などを根拠に、朝日新聞様は外務省が指摘した勢力と足並みを揃えて復興と問題解決を妨害しようとしている、そのために、ALPS処理水の次には除染土で対立を煽ることを手段にしようとしていると批判する声もあります。
この批判に対してイエスかノーか、また、その意思を証明するために今後具体的にどのような取り組みをするかと共にお答えください。
本件の対応に対しては、他社のジャーナリストも含め高い関心が示されています。
お忙しいところ恐縮ですが、ぜひ回答のほど宜しくお願い申し上げます。
朝日新聞からの返答(5月10日)
冠 省
5月4日付でいただいたご質問について回答致します。
【回答】
まとめて回答致します。
ご指摘の4月21日メール配信のアナザーノートについて、4月28日に配信したアナザーノートで、以下のように訂正しています。
4月21日に配信したアナザーノートで「イベントは町内の復興住宅の花壇に、放射性物質をできるだけ取り除いた除染土を用い、花を植える催しだった」とあるのを「イベントは町内の復興住宅の花壇に花を植え、その後、除染土の再利用について説明会が催された」に訂正します。環境省によると、花壇に除染土は使われていませんでした。筆者の確認が不十分でした。おわびして訂正します。
また、メールが正しく表示されない方向けの「オンライン版」についても、修正版を発行し、差し替えました。
修正版のURL:https://www.asahi.com/articles/ASS4Z355BS4ZDIFI00DM.html
修正版では、以下のように訂正箇所を記載しています。
4月21日にメールで配信した有料会員限定のニュースレター「アナザーノート」で、福島県大熊町内で開かれたイベントについて「町内の復興住宅の花壇に、放射性物質をできるだけ取り除いた除染土を用い、花を植える催しだった」とあるのを「町内の復興住宅の花壇に花を植え、その後、除染土の再利用について説明の場が設けられた」に訂正します。環境省によると、花壇に除染土は使われていませんでした。筆者の確認が不十分でした。おわびして訂正します。この記事ではその箇所を修正しています。
回答は以上です。 ご査収のほどよろしくお願いいたします。
草 々
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