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記憶を辿る写真

私は会話や体験を忘れてしまうことが少ない方だ。特に大切な友人、恋人との思い出は。「よく覚えているね」なんて言われることもあるくらい。長所だと思っている。
昔から写真を撮ることは好きだったけれど、最近は見る方がすきで。むしろ覚えていられるからこそ、撮ることよりも自分の五感で愉しむ時間を優先することが多くなってきていた。


そんな私に、最近ショックなことがあった。
私が仕事で食べたランチについて彼に話をしている時に「前に行った〇〇に似ている感じ?」と聞かれ、なかなか思い出すことができなかった。たくさんヒントを出してくれたのに。
思い出せなかったこともショックだったが、何より彼に少し寂しい思いをさせてしまったかもしれない、と思うと胸が痛んだ。私だったら寂しいもん...ごめんね。


「写真を見れば思い出すよ」

そう言われて、彼が写真フォルダを出そうとしていた時、私も頭の中でも大急ぎで写真のフォルダをスクロールした。すると、パッと思い浮かんだ。


「思い出した!!」

なんで忘れてしまったのかな、私たちが付き合った日に行ったランチだった。


写真を撮ることにズボラになっていたが、思えば自分がファインダー越しに残した景色は、残さない時よりも記憶に濃く残っている、そんな気がした。
それ以上に、写真に残した景色に言葉を載せると尚更だ。


記憶を辿ることができる写真があって、それがいつでも手元にある。この時代に生きている私は幸せ者だ。使わない方が勿体ない。


たくさん、たくさん、残していこう、そう思った。五感で愉しんだ世界を、ファインダー越しに残していくのはとても意味のあることだ、そう思えた出来事だった。

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