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まじめな鳥

気を使いすぎた、ある痩せた鳥がいた。
彼は赤粘土と尖った岩石が入り混じった垂直絶壁の頂きに休んでいた。
四方も八方も遠くまで見わたせる、それはきれいに澄んだ場所であった。
しかし彼はつらくてしんどい世界を生きていた。
そして彼は何かを待っていた。

しびれを切らせたように、彼は思いっきり勢いをつけて、逃げるように前へ向かって羽ばたいた。
数時間か数日か数年を飛び続けた。
ある日彼の眼前にいきなり休めそうな場所が現れて心に光が差した。
ヒューヒューヒュー。
彼は見映えのしないくすんだ大羽を几帳面に左右ぴったりに折り畳んだ。
ようやく脚を付けたそこは銀色の反射が照りすぎた要塞ビルの一番上だった。
あれから一向に何も口にすることのなかった彼はますます貧相に痩せてしまっていた。
さらに彼は着地とほぼ同時に脚の肉裏に生ぬるい不快を感じた。
束の間すぐにここを離れようと羽を広げた。

ん、え。
周りをぐるりと見てみれば、彼はさらにさらに高く聳えるコンクリートに囲まれていた。
見下ろしても見上げても空は閉じられていた。
本来の場所がすべて塞がれて、彼は上にも下にも行けなくなってしまっていた。
深く沈み込んだ彼はそれでも努力をしたが、しかしもうここで暮らすしか道は残っていなかった。
彼を苦しめたコンクリートの灼熱はいつまでも無表情で何も言わなかった。

数時間か数日か数年後、ビルが少しずつ傾いてきた。
本当の奇跡であった。
彼の頬のわずかな笑みに斜光が当たったとき、彼はあの日のように思いっきり羽ばたいて隙間をすり抜けた。
彼の大羽は大空に溶けてすぐに見えなくなった。

彼は見晴らしの良すぎるあの崖の中腹にいた。
彼の身体は変わらず痩せこけてしまっていたが、目の奥は以前より優しさと覚悟が満ち溢れていた。
そしてやはり彼は何かを待っていた。

しばらくのち、彼の翼は大きく広がっていた。


※暑すぎる毎日の影響でしょうか。
 あたまがボーっとしています。
 エアコン買い替えようかな。
 皆さんもご自愛ください。
 ショートショートショート書いてみました。
 小説も変わらずぼちぼちと書いています。
 オリンピック選手の体力が欲しい。
 さあ筋トレをしよう。
 週一はしています。

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