ある者
あるところに、ある者がいた。
ある者は周りに友人はいた。
気に食わないことは避けて、好きなことは受け入れていた。
身の回りに縛り付けることはなかったのだが、いつも独りで寂しく泣いていた。
ある者は心から分かり合える者を探していたのだが、話してみたり会ってみてもやっぱりどこかですれ違っていると思うし、本音では心から分かり合える者を探していないような気がした。
それでもやっぱり、たまに、ふと、孤独や寂しさを感じてしまうので、自分でも「どうしようもねーな。。。」と呆れていた。
何も求められず成果も求められず、何も期待されることなく安心できる者、何かを求めていたのだから、そんな存在はいないと半分以上は諦めていた。
それでも、この根源的な孤独や寂しさを生きている間でふと感じることを永遠に繰り返しながら死ぬのは嫌だったので生きている間で安心できる者を探そうとしていた。
ある者は紆余曲折しながら時間はかかったのだが、安心させてくれる者と出会った。
安心させてくれる者はある者にこう言った「私はあなたに何も求めていないし期待もしていません。生きてもいいし死んでもいいです。
もし生きている間は気ままに南無阿弥陀仏と言って下さいね。
死んだ後はお浄土に生まれさせ如来にしますので、そこで遇いましょう。」
ある者はその言葉を聞いて安心した。
それから、ある者は表面的な孤独や寂しさを感じることはあるけれど根源的な孤独や寂しさを感じることはなくなった。
なぜなら、安心させてくれる者が「死んだ後はお浄土に生まれさせて如来にしますので、そこで遇いましょう。」と言ってくれるからだ。
初めは安心させてくれる者に疑心や抵抗があり好きではなかったのだが、いつでも、どこでも「死んだ後はお浄土に生まれさせて如来にしますので、そこで遇いましょう。」と言ってくれるのでいつの間にか安心していた。
ある者は思った。
「俺はいつも独りで、死んでも独りだと思っていたけど独りじゃなかった」と。
それと同時にある者は生命は根源的に孤独と寂しさを抱えていることを知った。
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