『パへ』稽古日誌0317

佐藤佐吉演劇祭2022関連期間「見本市」参加作品『パへ』の稽古日誌をこちらに書き綴っていこうと思います。

稽古が始まって早もう3日目です。途中からにはなりますが、追って1日目から。
プレzoom稽古で企画の概要等は説明したので、感染対策やハラスメントについてのコンセンサスをとりました。
まだ稽古初日ということもあり、どれだけ合意をとろうとしてもなかなか関係性ができていないうえだと難しいこともありますが、そういった話ができる稽古場(どんな現場でも当たり前でありたいですが)だといいなと思います。
私がどれだけ気をつけていても、演出家と俳優という立場上、そして私の書いた脚本で私が演出をする、という構造上、どうしてもパワーが発生します。
私もできた人間ではないから、改めて気をつけたいと思いました。
が、それにより作品に対する「やりたいこと」が弱くならないように、作品に携わる全ての人の気持ちは大切にしつつも、「作品を洗練していく」「そのためになるべく妥協しない」ということを念頭に置こう、と思いました。でも、難しい。
私はもともとコミュニケーションに長けていない方なので、言葉を選ぶのにすごく時間がかかってしまいます。けど、がんばります。

最初は読みから。今回スケジュールとか企画側に提出しなきゃいけない諸々で早めに立ち稽古に入ってしまいましたが、できたら読みの稽古は長く取ったほうがいいよなあと思ったりしました。
私は声、音にかなりこだわる方なので、俳優が自分のやりたいこと、のせたい気持ちみたいなところとそういったものの融合はすぐにはなかなか難しいなと思いました。
今回参加していただいている鳥島明さん(はえぎわ)、日下七海さん(安住の地)どちらも本当に声や音、そして佇まいが良いです。だから出演をお願いしたのですが。私は熱を持たずに発話できる人が好きですが(説明が難しいので抽象的な表現になってしまいますが)、胃や心には確かに炎があってほしくて、お二人とも地面を感じさせてくれます。
二人の声に音に、イマジネーションをたくさんもらいました。

立ち稽古に入り、改めて私は自分が『反復マニア』だということを思い知りました。私はよく戯曲を書いていて、同じ動きを一定し続けるとか、同じやり取りを何回も発生させるとかそういうことをよくするんですが、「続ける」という行為には神性とか祈りとか、そういう尊さがあると思っていて、だから大好きです。
今回も、そんな感じが存分に含まれています。あと息切れ。息切れ大好き。
俳優の身体が感じられる作品が好きです。私は言葉が好きだから、言葉にしか興味がないと以前は思っていたんですが、だんだん肉体を伴った言葉、言葉を伴った肉体が好きなんだということに気づいてきました。ただ、手放して疲れるというよりは、疲れている身体を自覚しながら、コントロールしようとする、というか。しかしコントロールできないのが疲れなのでそれが本当にいいんです。

3日目の最後に通しをして、見えてきたものがたくさんありました。あと上演時間とか。(…)
いきなり削ったりするのではなく、今の状態でもっとできることはないか、試行錯誤、練り練りとしていきます。

初めてご一緒するお二人なので、なんだか不安になってしまい、「大丈夫ですか?楽しいですか?面白いですか…?」と聞いてしまった時があって、二人を困らせてしまいました。反省。私だけはこの世で一番面白いぜ!とせねば。
と、思いつつ、不安だし孤独ですね。と、お世話になっている劇団の主宰の方が言っていました。そうだよなあ。
昔、脚本や演出をしている時よりも今もっと不安がすごくなることがあって、昔より大人になった自分とか、色んな現実を知って小さくなった自分を感じる。

日々演劇に対して色々思うことがあるけれど、でもまずはとにかく、目の前で起こっていること、目の前にいるあなた、それだけは目を離さないように。と思います。


はぎわら水雨子


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