【読書記録】「魔が差したパン」
O・ヘンリー 著/小川高義 訳/新潮社
※この記事はネタバレを含みます。
概要
O・ヘンリーの短編集。
「最後の一葉」が有名過ぎて、かつ自己犠牲の物語という印象が強いので、O・ヘンリーと聞くとほぉん・・・という、ちょっと醒めた目で見ていたけれど、全体的に展開がお洒落で楽しかったです。
以下は短編毎の感想です。
「ブラックビルの雲隠れ」
強盗犯ブラック・ビルが逃亡先の田舎で、羊飼いとして農家に雇われ、雇い主とも親しくなるが、捜査の手が迫っていることを知り・・・
羊飼いの正体を知らない雇い主がブラック・ビルのニュースに言及した際、自身に疑いの目が向けられるのを、雇い主にあんたがブラック・ビルでは?と疑う冗談で回避する手腕!
「第三の材料」
ボロアパートで出会った貧しい女2人(初対面)が、材料を持ち寄ってスープを作る。あとは玉ねぎがあればねぇ、と言っていたところ、玉ねぎを持った男が現れる。その男は先日、一方の女と運命的な出会いをした大金持ちだった。
この結末は私にはとても寂しかった。
女2人は成り行きでスープを作りながらだんだん仲良くなってきていて、これからもっと親しくなれる予感に満ちているのだ。そこに大金持ちの男が来てしまったら、きっと恋愛が始まって、育ちかけた友情は頓挫してしまう。置いて行かれる方はどんなに寂しかろうと思う。
大金持ちと結婚した女が富豪生活に飽きて、もう一方の女の安アパートに入り浸る続編が欲しいです。
「人生ぐるぐる」
人生というより、お札がぐるぐるする話だ。
治安判事に5ドルを払って離婚した男が、妻への扶養費にするために判事からその5ドルを覆面強盗で奪い返し、翌日妻と仲直りしたので5ドル払って再婚するという、素敵にくだらない話です。