【競馬コラム】笑顔なき有馬記念制覇、思い切り喜ぶ横山武史が見たかった
本当なら派手なガッツポーズとともに喜びを爆発させる横山武史が見られるはずだった。しかし、ゴール後から検量室に向かうまで、手を挙げる仕草すら見せない。ゴーグルの先の表情まではわからないが、とても勝者とは思えない神妙な振る舞いのまま引き揚げてゆくその姿からは、痛切な懺悔の念が伝わってきた。
最強の相棒エフフォーリアと歩んだ1年を、最高の形で締めくくる勝利。思い切り喜びたかったよなあ。そして喜びを分かち合いたかった。勝ってなお悔やまれる、「油断騎乗」の過ち。引きずることなく大舞台で結果を残したことがせめてもの救いだった。
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新たなる王者の、堂々たる走りだった。最終的に単勝2.1倍まで集まった圧倒的支持に応える勝利。意外にも重賞を1番人気で勝つのはこれが初めてで、各馬のマークを退けて勝ったという経験は今後の彼をますます進化させていくことだろう。
レース内容にも風格が漂っていた。スタート直後からのポジション争いには無理に加勢することなく、「行きたければお先にどうぞ」とばかりに中団で悠然と待機。不必要に力む仕草も一切見せず、不利を受けることだけないように馬群の外めを追走してゆく。そして2周目3角過ぎから後続の追い上げに呼応するように少しずつポジションを上げながら、最大の強敵クロノジェネシスを外からフタする形で先に前へ進出。直線入り口では前を射程圏に入れると、そこからも脚色は衰えることなく外馬をねじ伏せた。
天皇賞を制した際の上がり3Fが33.2秒、そしてこのレースは35.9秒。展開も馬場もまるで性質の異なる戦いで、同じように付け入るスキのない強さを見せられるのは歴史的名馬の証。もはや瞬発力か持久力かと長所を問うのも愚かに感じるほど、レベルの高い領域へと到達した今、この馬を負かすのはそう簡単なことではない。
個人的にも、早いうちからこの馬の才能を見出し、まだ万人にバレる前の共同通信杯で◎を打つなど思い入れの強い一頭である。そこから横山武史と二人三脚のコンビでG1を制し、一方で日本ダービーでは悔しさも共有するなど内容の濃い1年を過ごしてきた。それだけに、ファン投票1位に選出された有馬記念を勝つまでに出世したことは感慨深い。だから馬券も当てて一緒に喜びたかったんだけど..w
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◎を打ったステラヴェローチェは4度目の対戦でもエフフォーリアに勝てず。さすがにもう勝負付けは済んだと諦めなければならない..
ゲートの後手は許容範囲内。道中は勝ち馬の直後をピッタリとマークする理想的な形だったが、2周目3角過ぎから大外をぶん回して上がっていったのがちょっと丁寧さを欠いた印象。せめてエフフォーリアの真後ろを通ってくれればよかったんだけど、先に後ろからアカイイトが動いていったのを無視するわけにはいかなかったかな。
直線に向いてからも脚は使ってくれたが、さすがに距離ロスも大きくゴール前で脚色は鈍ってしまい4着。収まるべきところに収まった感が強い。
一貫してインに拘ったディープボンドが2着に粘ったのは対照的。馬場状態とこの馬の特徴を活かしきる和田竜二の好騎乗が光った。この充実ぶりなら来春の天皇賞はかなり有力と見てよいのでは。タフな阪神の長丁場で、改めて人馬一体のファイトに期待したい。
ラストランのクロノジェネシスは3着。4角手前でスパートを待たされるロスもあったが、まともに乗れていたとしても勝ち馬には及ばなかったのでは。上がりのかかる得意な条件での敗戦が、陰りを物語っていたように思う。
タイトルホルダーの横山和生も大外枠の不利を感じさせない立ち回りを見せた。正直ここで菊花賞馬が回ってくるほどの実績はないだろうと、代打騎乗に関して懐疑的に見ていたのだが、ケチのつけようがなかった。今後はまた弟に手綱が戻るのかもしれないが、少なくとも何らかの機会でもう一度コンビを組んでほしいと思わせるものを残した。
アカイイトも前走と同じような形で勝負に出られて、悔いは残らなかったのでは。初めての有馬記念を楽しめたかな幸さん。できれば枠順抽選会に正装で現れてキャーキャー言わせるところから見たいので、来年以降も縁があることを願ってます。
パンサラッサも自らのスタイルを貫いたし、メロディーレーンもさすがに最後はついて行けなかったけど無事に完走できたことが立派。この舞台で晴れ姿を見たいという想いに報いられただけでもみんながすばらしい。
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馬券はエフフォーリアにケチをつけてしまったもんで完敗。ただ、仮に◎を打っていたとしてもどう買っていたか..大した勝ち方はできなかったと思う。たぶん普段のレースならROMに切り替えていたんじゃないかな。相性のいい有馬記念ってことで勝負に出ちゃったけど。
まともに予想して馬券を買ったレースが外れるのがちょうど1年ぶりで、めちゃくちゃ悔しかった。この屈辱を毎週味わうとかもう耐えられんw
しかしステラヴェローチェって今まで結構ナメてたんですよ。共同通信杯でも危険な人気馬認定してたし、日本ダービーでも確か印を入れんかったはず。「皐月賞の3着は着拾いの差しによるもの」とか言って。なのに暮れの大一番でいきなり逆転を託すとか矛盾してませんかね。
回収:0円/購入:3,500円
→ 2021年間回収率:266.7%
栄光の年間回収率が300%を切ってしまった。
しっかし驚いたのは有馬記念のレース直後、はえーエフフォーリア強かったなあと余韻に浸ってるところにいきなり「ホープフルSの枠順決定」との情報が流れてきたことですよ。全く心の準備してなかったw
2歳戦を重点的に追っかけてる身としてはホープフルSこそ総決算ですからね、こっちを当てて気分よく1年を締めくくりたいです。予想エントリは明日アップする予定なのでこちらもお楽しみに。