【競馬コラム】生き残りをかけて..レッドベルオーブと幸英明さんの逃走劇
正直、何をみっともないレースをしてるのかと呆れながら見ていた。
日曜小倉メイン・小倉日経オープン。単勝2番人気のレッドベルオーブに初めて騎乗した幸さんだったが、スタート直後から引っ掛かり気味にハナを奪うと、そのままペースを緩めることなく後続をグングン引き離す大逃げに出た。
そう、確かにこの馬は気性が難しい。2歳時にデイリー杯2歳Sを制し、朝日杯FSでも3着に入った実力馬。しかしその後の大成を阻むのが、脚元の弱さと前向きすぎるメンタルだ。昨年の皐月賞で敗れた後に骨折が判明し、この春に戦線復帰を果たしてからも3戦して凡走が続いた。前走は1400mの安土城Sを使うなど距離短縮も視野に入れながら折り合い面の改善を図りながら、なかなか結果にはつながらず。かつて将来を有望視された良血馬が、夏の小倉でOP特別を走っていることが現状の苦悩ぶりを物語っている。普段なかなか藤原英昭厩舎の馬に乗ることの少ない幸さんにその手綱が巡ってきたことも、期待値が低いことを暗に示していたように思う。
そして前述の通り、制御不能の逃走劇が始まった。前半1000mは57.6秒。鞍上が手綱を引き気味に駆ける素振りを見ると、後ろのジョッキーからすれば余計に速く見えたかもしれない。3角を過ぎても差が詰まる気配がなく、ちょうどこのタイミングで幸さんが何度かキョロキョロと後ろを振り返っているが、残っている脚からしてもしかしたらこのへんで勝利を予感していたのかもしれない。上がり3Fも<11.9-11.7-12.5>と極端に失速することなく、終わってみれば3馬身差をつける楽勝だった。
ということで、決して折り合えずにヤケクソの逃げを打ったというわけではなかったようですw 正直この勝利で次への展望が開けたとは言えないが、ただただ我慢させられて馬群の中でもがいて終わるレースを繰り返すよりは、こういう新境地を開拓できたことが今後の生き残りにつながるかもしれない。
「生き残り」といえば、幸さんもこの夏ようやく存在感を示す勝利になった。本来、夏の小倉といえば重賞でも有力馬を任されるなど序列の高い扱いを受けられる数少ないステージなのだが、どうも今年は影が薄かった。相変わらず騎乗数は多いけど、ただ乗ってるだけ。今村聖奈はともかくとして、西村淳也や鮫島克駿など若い力がグイグイ来ているのを見ると、ついに世代交代の波が押し寄せようとしているのかなあと感じる。これまで何度もはねのけてきた波だけど。
この日は他にも崖っぷちの3歳未勝利馬2頭を初勝利に導くなど、久しぶりの3勝固め打ちに成功。今季の勝ち数も40勝を越え、キャリアハイを刻んだ昨年ほどではないにせよ例年の60勝ペースにもどうにか乗ってきた。そして来週はラプタスで韓国遠征も待っている。充実の秋を迎えるためにも、まずはいい形で夏を締めくくってもらいたい。
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