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思い出の上書き

自慢ではないが、友だちは少ない方だと思う。

人見知りだったり、自分表現が下手だったり、相手に踏み込むのが好きじゃなかったりするせいか、途中でめんどくさくなってしまう。

それでも、30年以上の付き合いの大切な友がいてくれる。

「イカは博多か呼子で食べたいなぁ」と友人が言う。
スーパーで買ってきたイカは長崎産のラベル、どうしても期待してしまったらしい。
新鮮な歯ごたえ、なんとも言えない口の中でまとわりつく甘さ…
「白いイカはやっぱりダメだった。」悔しそうに笑う。

透明感のあるイカを博多か呼子で食べたい、しみじみと杯を口に運び、好みの日本酒を味わっている。

まだ20代、社会人としては若手のころのイカの思い出をいろいろ話す。
いいアテになった。

アラカン世代となって、遠い九州で関わった思い出を酒を飲んで話す日が来るとは予想もしなかったことで、頭の中にはあの頃の友の顔や声がノスタルジックに映っている。

ぼんやりした焦点でどこかを見ながら、30年はあっという間だったよ、と昔の自分に言ってみる。
本当にそうだ。
こんな気持ちはやはり友だちのおかげだ。

思い通りでもなんでもない普通の毎日を一生懸命送りながら一喜一憂してきたんだよ。
友よ、また語りましょう。あの時はこうだったと笑ったり涙したりして話しましょう。

日日是好日なり。

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