見出し画像

【ゆるやかな殺人】これが量販中古車店の仕事です。

野生の車屋ナカノです。
今回はいつもの"正しい車の知識"のお話ではなく、
中古車店の闇の「実例」を記事にしようと思います。

タイトルにもある通り、人が〇にかねないレベルの粗悪中古車に当たりました。
人為的ミスではなく、明らかな「故意犯」です。
僕は以前から「中古車は量販中古車店で買うべきではない」と言い続けていますが、それは間違っていなかったと確信する出来事でした。

もちろん、すべての量販中古車店がこのような車を売っているわけではありません。
しかし、”故障隠し”が起きやすいシステムになっているのは事実。
大きな中古車店になるほど評価システムが機能しませんし、クオリティよりも回転率を重視したほうが儲かるからです。
多少壊れていても、売ったもん勝ち。
接客担当と整備担当は別ですから、騙すことに心が痛むこともありません。

「これが、量販中古車店のリアルです。」

注意喚起としてはもちろんですが、あなたがこのような中古車を買って損をしないように。
業界の欠陥や、あなたが騙されない方法を事実ベースで解説いたします。

野生の車屋ナカノ
整備工場、板金屋、中古車店、レースメカニックなど15年の業界歴。
自分の店を持っていたこともあり(私は居ませんが現存)
得意分野はサスペンションセットアップと地球が終わるまで乗れる錆止め。
頭が悪いため電装系は苦手。(できなくはない)

ナカノ

整備不良なんて生易しいものじゃない。これは殺人である。

普段僕は、「元業界人」として自動車関係の発信をしています。
中古車業界の闇やそれに騙されない方法などを記事にしていますが、あえて今回は騙されてみました。(記事にするために)
その車がこちらです。

マフラー側は熱害で錆びやすいです

見ての通り、サビで大きな穴が空いていますね。
もちろん、これでは車検に通りません。
あなたが車に詳しくなくてもわかるはずです。
必要な強度がまったく出ていないから、車検に通らないのです。

その穴をパテで塞ぎ、検査官の目を騙して車検を取っていたようです。
ちなみにパテは、フランスパンくらいの強度しかありません。
「運転の最中にフレームが折れたらどうなるか」
想像するのは容易ですよね。

サビ穴隠しされていた場所は、リアサスペンションのすぐ近くです。
ここが破断した場合、最悪車輪(車軸)が吹き飛びます。
タイヤが床を破壊して車内に入り込んだ例もあります。
僕は実際に、破断して走行不能になる車を何台も見てきました。(もちろん事故になりました)

叩いたら落ちてきたパテ

フレームのサビ穴がどれほど危険か、車に関わる人なら知らないはずがないのです。
つまり直すことではなく、「隠すこと」が目的なのは明白。
闇車検もいいところ。こんなのは整備士の仕事じゃない。
詐欺師…いや、これは「ゆるやかな殺人」だ。

(僕も、帰り道に〇ぬ可能性があったと思うと恐ろしいですね)

フレームのサビ穴は絶対に溶接修理。それ以外はダメです。

ではどのように直せばいいのか?
一応サラッと紹介します。
ズバリ「溶接修理」すべきです。

当たり前ですよね。
サビで朽ちて鉄板がなくなった部分。
そこにあるべきは「鉄」一択であり、基本的に例外はありません。
ほかの素材を使えば強度不足、あるいは強度が高すぎて他の部分に負担がかかってしまいます。

ということで、強度が必要なメインフレームをパテで塞ぐなんてのは、純度100%の怠慢です。
※強度に関係のない外装部分へのパテはもちろんOKです

実際に溶接修理している方がいらっしゃったので、興味のある方は読んでみてください。
(とても手間のかかる作業です)

中古車店はなんで溶接修理しなかったのか?

溶接修理は難しい。外注しか勝たん。
  • 溶接できる設備がなかった

  • 溶接できる技術がなかった

  • 人件費や外注費用で利益が減るのを嫌った

このあたりでしょうね。
そもそも、自社整備工場のない中古車店はザラにあります。
中古車店は車を売るのが仕事なので、これは否定しません。
外注だとしても、しっかり整備されていればそれで良いのですから。

しかしパテでのサビ穴埋めは、おそらく自社で行っています。
「整備工場」がこれをやってしまうと、不正車検で営業停止になります。
(最近このあたりの規定が厳しくなりました)

しかし自社工場のない中古車店の場合、不正な整備が原因で営業停止になることはありません。
なぜなら中古車店は、「点検整備ができない事業所」という扱いだからです。
ややこしい言い回しなので、かいつまんで説明します。

はて、なんのことやら

ウチは点検整備ができません。
整備士が居ないし、設備もないですからね。

えっ?ウチで売った車、不正な整備されてたんですか!?
いや~まいったな!『整備士が居ないから』気づかなかったよ!
ウチは『点検整備ができない』お店だからな~
点検できないんだもん、気づかないのは仕方ないよね!
(実際には自社でやっている)

量販中古車店あるある

こんな無罪放免がまかり通ってしまうということ。
シンプルに、クソです。

【接客担当≠整備担当】接客担当との僕の、実際のやり取りを再現。

「俺は人を見る目があるから騙されないぜ!」
と思った方も、読者の中にはいらっしゃるでしょう。

それ、絶対に無理ですよ。
整備担当と接客担当は別ですから。
接客担当は、その車のことを良く知りません。
しっかり整備されていると信じて接客してくるので、あなたは嘘の気配に気づくことができないのです。

実際に接客担当と僕の間で行われたやり取りを紹介します。
あなたも、購入検討中のつもりで読んでいただければと思います。

ちなみにこの車は、溶接修理が得意なお店に譲りました。

ナカノ「この車良さそうですね。4WDだし。
山形ナンバーですけど、フレームに錆などありませんか?」

営業担当「しっかりサビ止めしてあるので大丈夫ですよ!
小さい車ですけど、その分軽いので燃費が良いんですよ。
ナカノ様は普段から、今のような軽装でお出かけですか?
持ち物が少ない方なら車内が狭いのも気にならないと思いますし、4WDだから雪道も楽ですよ!」

ナカノ(生活スタイルまで考えてくれるの、めっちゃ親切!)
ナカノ「そうですね、この車は僕の生活スタイルに合いそうです。
次の車検はいくらくらいかかりそうですか?」

営業担当「しっかり整備済なので、絶対とは言えないですが大きな整備にはならないと思います!
もちろん乗り方にもよりますけど、消耗品だけで車検に通ると思います。」

ナカノ「それなら安心ですね。これに決めようと思います。」
(サビてるの気づいてるけどね)

中古車店とのやり取り。

…はい、こんな感じのやり取り。
正直、かなり好印象でした。
でも…繰り返しになりますが、整備担当と接客担当は別人です。

フレームに穴が空いていることは知らされず、
サビ止めされていることだけ」を知らされているから、むしろ自信を持っておすすめしてくるのです。
接客担当がどんな善人だったとしても、その心が痛むことはありません。
だって当の本人は、その車を良い車だと思っているのですから。

  • 中身はどうあれ、台数を多く並べる。

  • とにかく安く車検を取る。

  • 台数多く並べ、優秀な接客担当に売ってもらう。

  • 可能な限り回転率を上げる

これが量販中古車店の黄金パターンであり、
業界歴15年の僕が量販中古車店を勧めない理由。
ハッキリ言って欠陥構造もいいところです。
しかし同時に、量販中古車店が最も儲かるシステム。

これでは、人を見る目があっても無意味ですよね。
車に詳しくない人にとって、人柄を見ることが唯一の判断材料。
接客だけをしている人ではなく、あなたは整備担当と話さなくてはいけません。

システムに穴だらけ。だから量販中古車店はクソなのだ。

冒頭の繰り返しになりますが、すべての中古車店がこのような粗悪整備をしているわけではありません。
しかし、業界のシステムが不正を迎合していることは事実です。

だから僕は量販中古車店で車を買わないし、人に勧めることもしません。
オーナーと直接話して、信頼できる人なら買う。
あなたが車に詳しくないのであれば、それが唯一中古車を見分ける方法です。

あなたが車を判断できなくても、人なら判断できる。
  • フリマサイト・ジモティーで個人売買

  • 中古車店ではなく「整備工場」で探してもらう

あなたが損しない中古車選びをしたいのなら、圧倒的にこのどちらかがおすすめです。
オーナーまたは整備士と直接話せますからね。

【犯罪示唆】僕が中古車店の整備士を辞めた理由。

この先は僕の身の丈話です。
有益なことは書きませんが、それでも良ければ僕の昔話にお付き合いください。

僕は整備士歴15年。
20歳の頃から整備に関わっていました。
最初は整備士免許もなかったので、近所の整備工場でアルバイトからスタート。
15年前とはいえ、月収8万円の生活はなかなかでしたね…

数年後に整備士免許を取り、年収アップのために中古車店の整備士に転職しました。
給料は3倍以上にアップ。
当時の僕からすると、そりゃもうウハウハです(笑)

騙して儲けることを「小銭稼ぎ」と呼んでいます。将来性ないからね。

「中古車店は収益性が良いんだな」

当時の僕はこう思いました。
…会社が赤字にならないために、危険な状態のまま納車している事実に気がつくまでは。

喜んだのは束の間。当たり前に不適切整備の嵐。

入社から半年もしないうちに、業界の闇に気がつき始めていました。
僕は精神的に疲弊していきました。

  • 日を跨ぐのは当たり前のサービス残業

  • 中古車サイトに載せてからは管理されていない在庫車

  • 車検に通れば何でもいいという会社の方針

  • 整備工場なら違法になる不適切な整備

リアルにこんな感じでした。

これじゃ個人売買と変わらないじゃないか。
いや、比べちゃいけない。それ以下だ。
していないのに、整備代と称して利益を得ているんだから。
車の整備って、こんなのがまかり通っていいのか…?
命を預かる仕事だよな…?

たしかに給料はいい。
今までより良い車に乗れる。
でも、人生の意義?自分の役割というのだろうか。
そういうものが感じられない。
だって僕は今、人を騙してお金を稼いでいる。

僕一人が我慢すれば、あのお客さんは騙されずに済んだのだ。
整備士ってこういうものなのか?
受け入れなければならないのか?

僕は次第に、工具を握ることに罪悪感を感じるようになった。

きっかけになる出来事もサビ穴隠しだった。

きっかけは訪れました。
今回紹介したのと似たような、フレームのサビ穴を発見。
もちろん直すつもりだが、大掛かりな整備になるだろう。
まずは上司に報告しなければならない。

ナカノ「この車フレームダメですね。
ちょっと大掛かりですが、このまま僕がやりますか?
それとも外注出しますか?」

上司「え?パテで塞げばいいんじゃないの?」

ナカノ「…は?外装じゃなくてメインフレームですよ。」

上司「だからパテでいいって」

ナカノ「いや、ちゃんとやらなきゃ危険です。
実際にサビが原因で破断した事例がたくさんありますし、僕も経験したことがあります。
その時は車軸が片方もげて事故になりました。
だからちゃんと直すべきです。」

ここで社長も参戦。

社長「…あのねナカノ君。君は職人気質すぎる。
ウチの利益のこと、考えたことある?」

ナカノ「それとこれは別です。
今の状態で納車したら事故になります。」

社長「話逸らさないでもらえる?
君がやらなきゃ、ウチが潰れるかもしれないんだよ。
責任取れんの?」

「ああ、この人達には何言ってもダメなんだな」
当時、そう思ったのを覚えている。

言われた瞬間、僕の中で何かが切れた。

ナカノ「…潰れるんですか?いいじゃないですか」

社長「…何言ってんの?」

ナカノ「不正車検をやる会社が潰れるなら、良いことじゃないですか。
僕にとっては、人を〇そうとしている会社を潰せるチャンスですよ。
僕がやらなきゃ潰れるんですよね?
喜んでそうします。
そのほうが世の中のためです。」

社長「…わかった。君は明日から来なくていい。」

ナカノ「もちろん、会社都合退職で。」

これをどう捉えるかは、あなたの自由。

「頭の固いやつだな」と思うか、
「ナカノさんが正しい!」と思うか。
それはあなたの自由です。

少なくとも、僕は後悔していませんけどね。
(一時的に収入は下がりましたがw)
あの時思い切って辞めたおかげで、今こうして正しい知識を記事にできています。

僕は、自分が生きていくために必要な分だけお金があれば充分。
スポーツカーに乗らなくても軽自動車で充分楽しめますし、そもそも僕の本業は作曲家ですw
小金稼ぎではなく、道楽として自動車整備ができれば良いわけですよ。

世の中は良い方向に変わっていく

数年前にキジバトを保護した経験があります。

世の中は、少しずつですが良くなっています。
たとえば交通事故。

  • 平成20年の交通事故数は766,394件

  • 令和4年の交通事故数は300,839件

最近、暴走族や走り屋が少なくなったのはあなたも体感していると思います。
すこし乱暴な言い方になりますが、
「交通違反をしづらい社会になった結果、交通事故が減った」
ということが言えます。

中古車も同じく、不正をしづらいシステムになっていきます。
(最近は車検検査が厳しくなりました)
現在の「不正を迎合するシステム」は淘汰される未来しかありません。

その未来へ向けて、今を少しでも加速させたい。
そのためにどうすれば良いか?
簡単です。
愛情を持って車に接する人”だけ”が稼げる社会になればいい。

その些細な手伝いのつもりで、このブログを書いています。
僕の記事を気に入っていただけたら、X(Twitter)フォローもお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?