Reb Beachインタビュー和訳

ドイツのギター&ベース専門誌『Gitarre&Bass 』2019年9月号掲載インタビュー記事の和訳です。
レブが所属するホワイトスネイクが2019年にリリースしたFlesh&Bloodアルバムについて

GB=『Gitarre&Bass』マガジン
RB= レブ・ビーチ

GB: レブ、ダグ・アルドリッチの脱退とともにあなたのホワイトスネイクでの役割は根底から大きく変わりました。現在はあなたが音楽的なリーダーということで疑いはありませんよね?
RB:音楽的リーダーはデヴィッド・カヴァーデイルのままだ。でも、僕がホワイトスネイクに対して責任重大な立場にいることは確かだね。だからって、沢山給料をもらっているわけじゃないけど。(ニヤリ)
僕は“マシン”が円滑に動くのを助け、デヴィッドとバンドの間の潤滑油として上手く行くことを考えている。
僕はもう16年もホワイトスネイクに所属していて他の誰よりも“上司”を知っているから、他のメンバーがデヴィッドに対して何か思うことがあれば、僕が代表してデヴィッドに話しをするんだ。
もちろん僕の音楽的な役割も変わった。ダグとデヴィッドは素晴らしいソングライターチームだったよ、僕とキップ・ウィンガーみたいにね。
ダグがバンドを去ったとき、僕は自然に彼の足跡を辿ろうとした。同時に、デヴィッドに曲作りにも関わらせて欲しいとお願いしたんだ。

GB:デヴィッド・カヴァーデイルがあなたに「Purple Albumは君のものだ」と告げた時は驚きましたか?
RB:めちゃくちゃ驚いたさ!僕が思っていたような言葉ではなかったからね。
デヴィッドが僕のところに来てアルバムの提案をしたとき、僕は70年代のような音にしたいと思ったんだ。つまり、ラフな…2本のギターにオルガン、ベースとドラム、2,3人の男がバックコーラスをやるような。でもデヴィッドは全く違ったヴィジョンを持っていて、それは最終的に素晴らしい結果をもたらしてくれた。
彼は壮大なプロダクションと歌、それに膨大なギタープレイを求めたんだ。まるで戦車で山を押しつぶすような。彼のアイデアに沿って、そのように作ったんだ。このアルバムが大好きだよ。

GB : その制作方法は今回のアルバム、Flesh&Bloodで求められた方向性を実現するのに役立ちましたか?
RB :実際に僕とデヴィッドはスタジオや彼の自宅で膨大な時間を一緒に過ごした。18カ月以上もの間、僕たち二人はFlesh&Bloodに費やしたし、僕は彼から沢山のことを学んだ。
デヴィッドは一日中たくさんの音楽を聞いている。想像しうる限りのありとあらゆるジャンルのね。彼は世界中で最も多くのiTunesのコレクションを所有している一人で、世界のiTunes購入者TOP20にランクインしてる。天文学的数字のテラバイト数の音源所有者なんだ。
僕にとって非常に興味深い経験のひとつだった。彼とソングライティングをして分かったのは、彼はシンプルなアイデアを好むということ。
3コード、終了。4コード?オーケイ、でもそれで十分だ。プログレ要素無し、例えばキップ・ウィンガーと一緒に仕事をするときみたいに、とてもやりやすかった。
僕が25個ほどアイデアを持ち込んで学んだのは、デヴィッドの前でそれらを披露するのは注意深くやらなきゃならないってこと。彼は他にも沢山のやるべき事柄を抱えていていつも時間がないから。
だから僕は簡単なリフを弾いたんだ、例えば“Hey You”みたいな。2コード、ありがとう、いいよ。ーそれで了承。彼は、アイデアを気に入れば即、受け入れてくれる。

GB:“Sands Of Time”は少しプログレッシブらしさがあるように思いますが?
RB:そうだね、あの曲はアルバムの中で唯一彼が受け入れたスタイルかな。僕は3回アレンジしたんだ、デヴィッドが最初、レッド・ツェッペリンのKashmirソックリに聞こえると言うのでね。それで僕はほんの少し猜疑的になったーこの曲を彼がアルバムに採用してくれるのかな、と。僕はこの曲に大きなプライドをかけていて、ダグが書いた素晴らしいForevermoreの後を継ぐ凄い曲になると思ってた。
Flesh&Bloodにおける不滅の名曲にしたかったのだけど、当初デヴィッドはしっくりこなかったらしい。3回の変更のあと、彼は気に入ったメロディーを見つけ出し、アルバムに収録することにしたんだ。

GB:それはつまり、デヴィッド・カヴァーデイルの前でアイデアを披露する際にはプロフェッショナルとしての演奏を求められるということでしょうか。あなたの曲には完全なデモバージョンが存在するのですか?
RB:いや、全く逆だよ。ベストなのは、アコースティックギターを手に取って、ただアイデアを披露することなんだ。それが彼に気に入ってもらえる大きなチャンスといえる。プリプロダクションが過ぎれば、チャンスはそれに反して少なくなる。デヴィッドはシンプルなアイデアを好み、それを自分自身のインスピレーションにする。作り過ぎたものは好まないんだ。

GB:Flesh&Bloodにおけるあなたのギターは、どこでどのように録音されましたか?
RB:すべてのギターパートは、スタジオ備え付けのプリアンプで録音し、そこからPro Toolsに直接入れた。いつもと同じ方法だよ。
シュアー(Shure)のSM57をKalotte(訳注:Kalotteが何を差すのか分かる方、教えてください…)に取り付けている。
Suhr Shiva-ディストーションペダルをソロで使用し、ディレイはPro Toolsを使って後からミックスした。確かに、インポートの時に本物のフィーリングを得るためのディレイが聞こえたよ。

GB:リズムギターが左と右、そしてオーバーダブが中央ですか?
RB:僕の2つのギター(パート)が、それぞれ左と右、そしてもう2つのパートがもう1人のギタリスト、ジョエル・ホクストラで同じように左と右だ。

GB:ソロをジョエルと分け合うのはどのようにして決めていますか?
どのように合意に至るのでしょうか。

RB:ジョエルは、どんな曲でもお手本のような素晴らしいソロを弾くことができる。でも僕は全然違う。インスピレーションが必要なんだ。この曲は退屈だな、なんて思うと短いソロしか弾けない。美しいメロディーを生み出すためにはコード変更が必要なんだ。だから、僕は自分にあった曲を探しだして、僕が弾きたいように弾き、残りをジョエルに渡す。二人でちょうど半分ずつのソロを弾けるように。

GB:特に素晴らしいのは、Shut Up & Kiss Meのソロだと思います。
素晴らしいトーンにメロディーが良い!あれはファーストテイクですか?あるいは何回か録りなおしたのでしょうか?

RB:ああ、どうもありがとう、すごく嬉しいよ。あのソロはまず一回弾いて自分用にメモってあったんだ。録音するときはデヴィッドもいたんだけど、最初のソロは彼には速すぎると感じたようで、彼は正しかったね。

GB:あのソロは完璧だと思います。
RB:僕もそう思うよ。デヴィッドも良いと思ってた。僕はもう一度録音ブースに入って、中間部分をメロディックなパートに変えたんだ。
スティーヴ・ヴァイ的なプレイ、ではなく、荘厳な感じというか。
僕がFlesh&Bloodで一番気に入っているソロは、Sands Of Timeだ。偉大な何かをやり遂げた気分だよ。

GB:今回のアルバムでは以前のものよりスライドギターが多いですが何か特別な理由があるのでしょうか。ミッキー・ムーディーとバーニー・マースデン時代と似たような感じに聞こえますが。
RB:僕が思うに、デヴィッドがどんな方法で作曲したかによるんだ。僕もジョエルもスライド・パートをいくつかプレイした。彼のリフの多くは文字通りスライドでプレイするためのものだ。僕は、以前は殆どやらなかったけどいつしか僕もできるようになった。
その内のいくつかはデヴィッドが僕の前でハミングしたんだよ、つまり…(カヴァーデイルの真似)“ラララ…こんな風にやってみてレブ!”ってね。それで、うーん、と眉をひそめながらどうにかこうにかやってみせる。でもデヴィッドはそれに満足して、(もう一度カヴァーデイルの声色を真似て)“パーフェクトだよ、ダーリン。とても気に入った!”
彼はただただ凄い人物。彼と一緒に仕事をするのはとても楽しいよ。

GB:スライドパートはあなた達が80年代ホワイトスネイクを参照にしたということでしょうか。
RB:違う。ジョエルがこのやり方をバンドに持ち込み、僕らはそれを凄くいいと思った。80年代のことは殆ど考えもしなかったよ、いつも頭にあるのは僕らの新しい曲のことだけさ。

GB:実際、多くのメディアはこのアルバムにある昔のホワイトスネイク的な側面を喜んでいます。
RB:そうだね、それは僕も読んだよ。

GB:その批評は気になりますか?
RB:いや、殆ど気にならない。称賛と受け止めているよ。単純にこうなんだ、“このアルバムからはそのような要素は聞き取れない”と。
ドラムはリッチなサウンドでめちゃくちゃイケてるし、僕には過去の音には聞こえないよ。でも、まぁ…プレスがそう書くなら僕も嬉しい…(軽く考えて)…OK、僕の意見を変えよう。わざと80年代風に聞こえるように仕立てたんだ(笑)
録音はしたがアルバムに収録されていない曲があってね、タイトルはCan't Do Right For Doing Wrongというブルースソングで、僕がデヴィッドに書いた。僕はこの曲はアルバムのいくつかの曲より凄く強力だと思って、デヴィッドに「デヴィッド、この曲は絶対アルバムに採用して欲しい」
と言ったのだけど、却下されてしまった。

GB:もしかすると、彼はPurple Albumの炎のようなエネルギーを再度求めていたのでは?
RB:Purple Albumはスタジオでの録音だった。とっても楽しかったよ、トミー・アルドリッジが僕らのドラマーだからね。全員にエネルギーが漲り、エネルギーそのものになった。いくつかの曲は当初予定していたよりも速くプレイしたんだ。デヴィッドが常にテンポを上げるように煽るんだよ、「速く、もっと速く…!」とね。
Flesh&Bloodの録音は逆に、僕らの日程がバラバラで、全員がスタジオに揃って一緒に演奏することができなかった。そんな風に、毎回シチュエーションは異なるね。

GB:そう言えば、今日のサウンドチェックは長時間、入念に曲のテンポを変えたりして行っていましたね。あなた達がそんな風にしているのを初めて見ましたが。
RB:あぁ、確かに普段はないことだね。でも僕らは1カ月顔を合わせてなくて、今日からフェスティバルシーズンが始まるっていうのでセットリストを注意深くチェックしなけりゃならなかった。だから、デヴィッドから時間をもらって(声なく笑う)今夜プレイしようとしている3つの新曲を時間をかけてやった。そんな時は勿論、ちゃんとしたテンポを掴まなければならないからね。

GB:最後の質問です。ホワイトスネイクのツアーが終わった後は何をする予定ですか?Suhrギターの新しいプロダクトは?
RB:いや、ないんだ。最近ずっと使っていたギターが合わなくなってきたので…彼らが僕のために新しいギターを作っている最中なんだけどね。新しいのを手にする前に、まず今の問題を解決しないと。
それと、ここ何年か手掛けているソロアルバムを録音しているよ。インストゥルメンタルでロックやファンク、ジャズのミックスで、ジャムの部分は一転してシンプルかつキャッチー。ドラムはDave Throckmorton、ベースはPhilip Bynoeが担当している。
それと、8月にはキップ・ウィンガ―とナッシュビルでウィンガーの新しいアルバムに着手する予定だよ。

GB:OK、残りの年もやるべきことが沢山あるということですね。成功をお祈りしています。今日はお話をありがとうございました!