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小説朗読
東国原の検証とはいったい何なのか、被験者となる緋卜香があからさまに不安げな態度で僕の胸にしがみついている。 不安を少しでも和らげようと、僕は緋卜香の肩をぎゅっと抱きしめた。 そんな僕らの不安をよそに、東国原は楽しげだ。 「なに、難しい事じゃないさ」 言いながら、東国原はコロコロとチェアのキャスターを転がし勉強机とテーブルを往復した。 戻って来た東国原の手には机の上にあった飴の袋が握られている。 そして一粒、飴玉を袋からつまみ出し、前へ差し出す。 「緋卜香ちゃん、あ
学校からゆるゆると二十五分ほど歩いて到着したマンションは、ちょっとした湖のような貯水池を見下ろすように建っていて、その景観の良い貯水池を左手に見ながら、マンションのエントランスまで行ける道があった。 五階建ての二階。 階段側から三番目のドアが東国原の家だった。 南淵は慣れた様子で、迷いなくそのドアの前に立つとインターホンを押した。 しばらく待つと、女性の声が応対した。 「はーい」 「こんにちは、秋人さんの後輩の、南淵と芦屋です」 決して愛想が良いとは言えないが、さ
南淵の左腕が僕の腰を抱き、僕は南淵の肩にもたれ体重をあずけて歩いていた。 南淵の「おぶって帰ってやろうか?」という真顔の言葉を苦笑いしながら丁寧に断り、そのかわりに駅まで肩を貸してもらっていた。 頭痛は少し治まったものの、めまいでふらついて歩くのを見ていられないと、瀧西と北吉も僕を見守るように後ろをついて来る。 誰かと下校するなんて初めてだった。 学校前の激坂を下ってすぐの所に三山駅があり、電車に乗りさえすれば五分ほどで僕のアパートにほど近い境町駅に到着する。家から
東国原と話がしたい、そう思いつつなんと声をかければ良いのかと悩んでいると、僕の物言いたげな視線に気づいたからなのか、瀧西たちを押しわけ東国原が僕の方へ真っ直ぐ近づいてきた。 だが、その歩き方に違和感があった。 片足を引きずっている? その時、僕は初めて東国原が右足をかばう様に歩いている事に気づいた。 「東国原その足……」 東国原に話しかけようとしたその時、邪魔が入った。 「東国原くん、うろうろしないでちょうだい。お家から迎えが来ているわよ、今から病院に連れて行っても
僕はふと思った。この小芝居を続ければどうなるのだろう。 「ねえ……もし、僕が望めば、君はずっと僕の側にいてくれるの?」 僕の問に、緋卜香は静かに答えた。 「もちろんです。そうできたらどんなに幸せかわかりません」 拾ったフィギュアが、可愛い女の子になってあらわれ、願いを叶えてくれる。そんなオタクが喜びそうな設定を考えたのは、やはり東国原だろうか。 ばかばかしい……と、思った。 だが同時に、僕はそれに付き合うのも悪くないと思った。 東国原の影響を受けすぎたのかと、自分
酷い頭痛がする。 僕は、久しぶりの激しい痛みに襲われていた。 「芦屋くん、大丈夫かい」 東国原の心配そうな顔が、僕をのぞき込む。 僕はベッドに寝かされていた。 「ここは、保健室?」 「そうだよ。南淵くんが君を背負って運んでくれたんだよ」 僕がぼんやり辺りを見回していると、東国原がすまなさそうな顔で言った。 「みんなは授業に行ってもらったんだ、居ても何もできないからね。まあ、私がいたって何も出来ないんだけどね」 「僕、どうして……」 僕は言いながら、ベッドに肘をつい
四人の視線を遮るように両手で頭を抱えた僕は懇願した。 「何でもするから、僕を解放してくれ」 僕は、この歳になって本気で泣くかもしれないと思った。 緊張感をはらんだ空気が僕にまとわりついていた。 何かを待つように、しばらく沈黙が続いていたが、意気消沈した様子の東国原が口を開いた。 「まさかとは思ったが……芦屋くん、君には彼女の声が聞こえていないんだね」 東国原の言葉に、僕は背筋に冷たい物が這い回る感覚に襲われた。 今、何と言った?いや、ちゃんと東国原の言葉は聞こえて
部室に着くなり強引に僕を椅子に座らせ、まるで取り調べをする場面のように瀧西が机を挟んで正面の椅子にどっかと座ると、スカートを気にする風もなく足を組み、僕の前にタブレットを差し出した。 そのタブレットで動画が再生された途端に、僕は絶句した。 「防犯カメラがあったのか!」 僕は心の中で叫んだが、実際にはぐうの音も出ない。 黙りこくった僕に「お茶をどうぞ」と、ちっこい男子生徒がペットボトルを差し出すが、僕はタブレットを凝視するしかなかった。 タブレットの画面はアニ研の出入
芦屋みつる、それが僕の名だ。 田舎町に住むなんの取り柄も無いごく普通の高校生で、親しい友だちもいない根暗で退屈な日々を送っていた。 「はーー」 口癖のような溜め息が溢れ出る毎日。 しかし、これは退屈を憂う溜息ではなかった。 僕は退屈が嫌いじゃない。 惰眠をむさぼるヒナを守ってくれる殻のように、厄介事から守ってくれるのが退屈だ。 選ぶ道を間違えさえしなければ、この退屈という殻に守られながら、うつらうつらと生きていける……はずだった。 しかし、そんな僕が『二十セン
羽新みづきが書いた小説 「ひとかた」孵化する卵 【特別編】第0章 死籠もりを声優(成林ジン)様に朗読して頂いた物になります。 noteのスキも励みになりますが、YouTubeの方でもチャンネル登録といいねをして下さるとさらに喜びます♡ YouTube版 https://youtu.be/9W8mP7tqYY4?feature=shared サイトマップへ戻る https://note.com/821note/n/n26d2addaeb3f
僕が通う高校の購買部のパンは、種類が豊富で人気が高い。 その中でも僕が気に入っているのは定番の、甘みのあるコーンと程よい酸味のあるマヨネーズをのっけて焼いたコーンマヨパン、それとコリコリと食感の良い胡桃入りのパンだった。 昼の時間に合わせて焼きたてのパンを持ってきてくれるので、まだ温かいうちに食べられるのも嬉しい。 その日の昼休みも、いつも通りお気に入りのパンを買おうと購買部に行く途中だったが、邪魔が入った。 クラスメイトに声をかけられたのだ。 「芦屋ちょっといいか?
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「芦屋、体調は大丈夫か?」 授業が終わったあと、老教師に突然そんな言葉をかけられた。 持病の頭痛はここしばらく治まっているし調子は良かったが、担任でもない古典の教師がなぜそんな事を僕に聞いてくるのだろう? 「問題ないですけど……」 訝しげに思いながらも僕は素直に答えた。 それなのになぜか老教師は白髪頭をワシワシと掻き回しながら困ったような顔で僕を眺めおろしている。 「わかった、それならこれに保護者のサインと印鑑をもらってきなさい」 そう言われて手渡されたのは『部活動
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厄介事を一つ片付け、少し軽くなった心持ちで帰ってきたアパートは、朝僕が出ていったままの人けの無い、しんと静まり返った部屋だった。 まるで一人暮らしの部屋だ。 やはり今日も伯父さんは帰ってはいなかった。 寂しいとは思わない。一人は慣れている。 だが伯父さんと、いつ会えるのかと考えない日はなかった。 それを知ってか知らずか、伯父さんから夕方になって電話がかかってきた。 「みつる、今家か?」 優しい声が僕を安心させてくれる。 父方の伯父さんだが、父とは違い物腰の柔