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アイアンマンバルセロナ2024振り返り(2)

2作目はIronman Calella-Barcelonaのレース編になります。今回もお付き合いよろしくお願いします。


1. (はじめに)レース概要

91カ国から3,200名のアスリートが集結するIronman Calella Barcelona。自転車文化が根付くヨーロッパの選手が多く、獲得標高は公式には758m、手元のStravaでは1,033mながらもフラットなバイクコースという特徴から、高速レースが期待される大会です。制限時間は16時間と一般的なIronmanレースよりも1時間短いですが、ハードな登りがない分、初めてIronmanレースに挑戦する方でも16時間以内のゴールは可能ではないかと思います。
ちなみに参加国の構成ですが、地元スペイン人が多いのは当然のこと、イギリス🇬🇧からだけで、1,000名以上も参加しているようです。

2. レース当日の朝

繰り返し申し上げていますが、宿がスイム会場に近いので、午前3時とかに起きる必要のあるレースが多い中で、それに比べるとだいぶ余裕のある5時過ぎに起床。日本から持参してきたハヤシライスとお味噌汁、現地のスーパーで買ったバナナを食べるのがいつもレース当日の儀式みたいになっているので、今回もそれをこなす。

スイムに向けては、過去出場したIronmanレース(ケアンズ、台湾)でも同様でしたが、バイクが長丁場になることを踏まえて、今回もトライスーツではなく、バイクジャージでロングのバイクに対処する方針でした。よって、スイムでトライスーツは着用せず、水着の上にウエットスーツというスタイルでスイムに挑みました。

各自ワセリンを塗るなどの最後の準備を終え、6時半過ぎに宿泊先を出て、徒歩でスイム会場へ。レース当日の朝の気温は16度と少し肌寒いですが、震えるほどではなく、むしろ体が引き締まっていい感じでした。

前日の夜に最後の荷物チェックを終えていたので、T1に到着後、自転車に空気を入れるくらいで、ほぼすることはなくなり、ちょうど7時から始まるスイムの試泳時間(Warm up time)を有意義に使おうと、ビーチへ移動。この時点でも6年ぶりのアイアンマンレース、やっぱり緊張はしてました。

YOUTUBEにバッチリ映ったレース前の自分😆

ただ、試泳すると、水温は外気よりと比べてむしろ暖かく感じるくらいで(実際、水温は21.5度でした)、さらに前日の試泳の時に比べると明らかに波が小さい。「なんかいい感じ!」と自然とテンションが上がってきました💪

ちょうど雲の隙間から朝日が見えて、本当に天気に恵まれたことにただ感謝!

スタートエリアは8つに分かれており、それぞれのボックスにはスイムセクションの完了予想時間(60分以内、65分、70分・・・みたいな感じで)が表⽰されています。各参加者は、⾃⾝の予想スイムタイムに最も近いボックスに並びます。
私は前から3つのボックス(予想スイムタイムが1時間10分以内)に入り、スタートを待ちました。他のメンバーは速いボックスだと周りに飲み込まれるから、ということで、もう少し後ろのボックスからスタートすることに。

そして、7時55分に男子エリート、5分後の8時に女子エリートもスタートし、いよいよ我々もIronmanという長い旅の始まりを目前に迎えました。

スタート前の男性MCの盛り上げがスゴい!全員が両手を上げて拍手する「バイキング」の迫力がすごく、会場に地響きのように響き渡ります。加えて、MCの言葉も一言一言も胸にグッとくる感じで「ここに来て、スタート地点に立てて良かった!」とこれだけで満足する気持ちにさせてくれるのはホントすごかったです!また、全員が近くの人と肩を組んでこれからの健闘を讃えあうのも初めての体験でした。

「あなたたちはIronmanに挑戦する戦士だ!」もうこのMCのコメントでテンションMAXに💪
3,000人が一斉に集うスタート地点は圧巻!それにみんな速そうでした!

3. スイムパート振り返り

【公式タイム】1時間15分11秒
AM8時10分、Age Groupがスタート。ノリノリのDJに乗せられて、トンネルをくぐった先がスタート地点。5秒ごとのローリングスタートで、それぞれのIronmanの旅が始まりました。

スイムコースは3.8キロの変則1周回。直前にコース変更があったものの、コーナーが減少したことで、むしろ選手にとっては泳ぎやすいコースとなりました。

IRONMAN Calella - Barcelona スイムコース

上のコース図を見ていただければ分かる通り、1,250m、1,550mの長い直線が2本あるコース。レースの日は運良く波の影響をそれほど受けることがなかったので、変なストレスとを感じることなく泳げました。また、等間隔で配置されたブイも大きいため、ヘッドアップしてもしっかりブイが確認でき、大変安心感がありました。
水の透明度も高く、泳いでいて気持ちいい感じ。一方で、出場者が多いレースだけあって、とにかく1人になることはなかったです(一方で、日本であるようなバトルもそんなになかったです)。

泳ぎ出してからは無我夢中でしたが、周りの出場選手のスイムスピードが総じて速く、私自身、スイムで抜いた覚えはなく、ほぼ抜かれまくった印象しかありません。ウエットスーツを着て泳いでいる自分が、海パン一丁のお腹の出たおじさんにあっという間に抜かれるってこともありました😅

老若男女を問わず、みなさんロケットみたいにすごい勢いで泳いでました

元々スイムはそこまで得意種目ではなかったですが、なんだかんだコロナ禍でもコツコツ二子玉川のスポーツジムで泳ぎ続けた積み上げの結果か、スイムアップは想定タイムよりも速い1時間15分11秒。初めて参加したロングレースのIronman Cairns(2017年)と比較すると、びっくりするくらい速くなっていました。

最後の直線に入った時はなんとなく一抹の寂しさすら感じましたが、無事にスイムアップ完了。ロングのスイムでのPBで更新となりました👍

Garminでのスイムの記録

4. T1パート振り返り

無事スイムアップして、ウエットスーツ、水着からバイクジャージに着替えるため、更衣スペースへ。ただ、気づくとどこで切ったのか、左中指から出血しており、血が止まらない事態に。指を舐めながら着替えるも、いきなりスタート時点でバイクジャージが血だらけになっており、なんとも幸先の悪さを覚え、結構ビビりました😅
T1で要した時間は15分ジャスト。どうしても着替えるための時間が余計にかかってしまって大幅なタイムロスになりますが、次回、ロングに出るようであれば、バイクパートに自信が付いたので、トライスーツでバイクパートをこなそうと思います。

5. バイクパート振り返り

【公式タイム】5時間55分17秒
風光明媚な海岸線を走り、斜度5%くらいの登りを2箇所こなしてその先は街に入ってUターン、そして、同じコースを逆走し、Calellaのラウンドアバウトに戻ってくる地中海沿岸を走る90kmループのコース設定。数箇所の登り坂はありますが、MCが「Super Fast Bike Coures」と連呼するだけのことはある、ほぼフラットと言ってもいいコースだったと思います。
オフィシャル発表は獲得標高758mで、パーソナルニーズバックは26kmと113kmで補充可能になっていました。

また、エイドステーションでもらえるアイテムは、⽔、PRECISION PH 1000 電解質飲料(ボトル⼊り)、Maurtenバー、バナナというラインナップ。

IRONMAN Calella - Barcelona バイクコース
正直、後半は海を見て走る余裕はなかったです・・・。

バイクは興奮状態にある初期の段階が最も要注意、と何度も自分に言い聞かす。多くのアスリートが最初に踏み込みすぎて後半の疲労に繋がり失速する、ということを何度も見聞きしてきたことで、特に最初の30キロまでは抜かれてもムキにならない、というシンプルなルールを自分に課して走りました。
とはいえ、初めてロングのレースで走る愛車のShiv Diskが、車を気にせず走ることができる環境も相まって、無理のない力配分でも時速35キロ〜36キロで快調に飛ばしてくれる。直前にメイストームの大西さんに変えてもらったアームパッドでバイクフォームがめちゃくちゃ安定し、一気にスピードがキロ2キロほど速くなった感じ。「いきなりニューアイテムでレース本番を迎えてはいけない」というレースで絶対にやってはいけない掟に反したことをやってしまいましたが、試走の時から手応えがあったので、運よく予想通りになってよかったでした😮‍💨

これが巨大なアームパット。可動域も広がるし、私に必須アイテムでした

序盤は想定通りのペースで進められましたが、中盤でアクシデントが発生します。カレーリャ到着後の組み立て時にコックピットのネジの締め付けが不十分だったため、走行中にぐらつきが生じてしまいました。大きなセンターのネジがグラグラになり、これでエアロポジション(いわゆる、DHポジション)を取るのが厳しくなって、スピードがキロ30キロ前後に急減速してしまいました。

エアロポジションとは空気抵抗を減らした、体を前に傾けた姿勢での自転車走行

まぁ、でも、180キロを6時間で走ることが目標だったので、序盤で築いた貯金を活かしつつ、残り120キロは時速30キロペースでの完走を新たな目標に設定し、粘り強く走り抜きました。

1周目が終わるラウンドアバウトに周りには大勢の観客の応援がすごかった

とはいえ、今となって思えば、メカトラ用に工具を持っていたので、近くのエイドステーションで自転車から降りて、ネジを締め直せば良かった、と少し後悔の念が。今考えれば当たり前の行動も、その時はどこかでテンパっていたんでしょうね。落ち着いたら分かることですが、冷静な分析ができず、とりあえず走り切ることしか頭になかったということでした。こういう点で想定外発生事象に対するマネジメントには失敗したな、と反省が残りました。下記のとおり、後半にタイムが落ちるのは仕方ないとしても、ある程度緩和できたのにな、と。

バイクパート前半60キロの走行状況
バイクパート最後60キロの走行状況

ちなみに、5人の海外選手から抜かれる際に「Nice bike👍」と声を掛けてもらうなど、黄色とピンクの私のTTバイクは受け入れてもらったようです😆
ありがたき幸せ、なことです。

灼熱の8月に1人大井埠頭を自主練していた時の愛車写真

最後に補給食については、過去2回のIronmanレースの経験(特に前回の2018年の台湾)から、固形物はバイク後半になると身体が全く受け付けなくなることが身に染みて分かったので、今回は前半はなるべくフィナンシェのような柔らかめの固形物を中心に補給し、後半はジェルに頼る戦術で臨みました。補給は、今回は上手くいったと思います。
ちなみにジェルは自作です。これは過去のロングレース(Ironmanのみならず、宮古島なども)も同様で、常に自分で作っていました。今回もレース前日に宿の近くのスーパーマーケットでミックスジュースが売っていたので、ミックスジュース味のエナジージェルという、何ともそそられるジェルを用意してレースに臨みました😋

フラスクに120cc入るので、市販のエナジージェル1回の補給量が40ccであることを踏まえて、今回のレースでも1本を40ccずつ飲んで3回で飲み切る形で補給し、さらにバイクの120km地点にあるパーソナルニーズバックに入れておいた2本目と3本目のフラスクと飲み切ったフラスクを交換して、バイクジャージのポケットに入れて走りました。
一応、市販のジェルも保険的に持って行きましたが、当初の予想どおり、全く使わずにバイクパートを終えることができました。
ミックスジュース味のエナジージェルの味は格別でしたよ😆

6. T2パート振り返り

T2パートはバイクジャージからトライスーツにお着替え。着替えがてらちょっと一服し、意識を「これからフルマラソン走るぞ」モードにして、11分27分でランパートに入りました。
T2で補給したのはオーエスワンゼリーのみ

7. ランパート振り返り

【公式タイム】4時間16分58秒
最後の種目はご存じ、42.195キロのフルマラソンを走ります。今回の目標は大きく「サブ4達成してやるぞ!」でした。
コースは公園にて導入部(1.6km)+地中海沿岸の1周13.5kmを3周で、立体交差やわずかな傾斜がある坂はあるものの、ほぼフラットなコースでした。
エイドステーションはおおよそ2.5kmごとに設定されていて、補給できるものは、⽔、PRECISION PH 1000電解質飲料(⽔で薄めたカップ⼊り)、Maurten ジェル(カフェインあり・なし)、バナナやオレンジといった果物、塩味のスナックって感じでした。

IRONMAN Calella - Barcelona ランコース

走り始めの足が重たいのはいつものことだし、また誰もが感じる感覚。でも、徐々に脚が「走るモード」に変わってくるので、今回のサブ4が実際に狙えそうか、を「走り始めて4キロ〜5キロの1キロでどれくらいのタイムで走れるか」で計る目算でした。この1キロを「キロ5分前半で走れたらイケる」と思ってました。

そして4キロ通過、「ここから!」というところでしたが、残念ながら馬力でず、結果は1キロ5分40秒、それもあんまり余裕なしで。
『あー、これは厳しそうだな』
という感じでしたが、案の定、9キロくらいからペースダウンで、キロ6分と5分50秒くらいを行ったり来たりする感じのペースでしか走れなくなりました。

ただ、全然落ち込むことではない、というのは分かっていたので、ここでプランB発動。
『とりあえずキロ6分〜6分半くらいで走れればいいや、その代わり絶対に歩かない』
を新しい目標にして、コツコツステップを重ねました。

何度もこの言葉を見て「そうだそうだ」と気持ちを奮い立たせてました

ランコースの沿道は大勢の観客が応援してくれていて、海岸だけではなく街中でもメインどころは応援が途切れないし、トライスーツが派手だったこともあり、観客から物珍しがられて何度も名前を呼んでくれて、応援してくれました😆

途中、何度かペースダウンはありましたが、気持ちが折れていなかったので、大崩れすることなく、なんとか走り切ることができ、無事ゴールラインまで辿り着きました。

そして、約12時間の旅の終わりを迎えるフィニッシュ。「YOU ARE A IRONMAN!」と呼ばれて、無事、2018年以来6年ぶりのIronman完走を果たすことができました🥹

初めて20時台にゴールすることが叶いました!

これまでの完走したIronmanレースはすべてアジアパシフィックで、今回が初めての欧州での大会でした。ケアンズ含めて、やっぱりゴールの時の感激はひとしおでしたが、「世界にはもっとすごい所がある!」ということを、このバルセロナで実感しました。ゴールの盛り上がりハンパないって!!
それに、自分がゴールしたのが20時台ということもあり、まだスタンドも観客多く、ゴールの赤絨毯のバックストレートに入った時の大歓声は本当に鳥肌がたちました。

「YOU ARE A IRONMAN!」の言葉でレースはもちろん、レースのためにコツコツ鍛錬を積み上げてきた長い時間が結果として実り、しんどかった思いが一瞬で吹っ飛ぶ感覚、これがやめられないんだと改めて思いました。

IRONMAN Calella - Barcelona リザルト

合計タイムはうっすらした目標だった12時間切り達成の11時間53分51秒。ただ、これでも今回のレース全体で自分の位置を見ると、なんと半分以下の1,598位という、大会自体のレベルの高さに脱帽しました。

当初、「このレースが終わったら、しばらくはロングはお休みしよう」とも考えていましたが、バイクとランで「もうちょっと工夫できたよね?」という改善点が次々と思い浮かび、「この経験を活かしてまたロングに挑戦したい」という気持ちが芽生えてきました。😆
自分でもどうなるか分かりませんが、チャレンジする姿勢だけは失わないようにしたいと思います。

最後に、今回は初めての欧州でのレースということで、わからないことばっかりで、一緒に行ってくれたメンバーに本当に助けてもらってばっかりでした。ホントに感謝しかありません。周りがあってのこの充実感であることはいつまでも心に留め置きたいと思います。

今回も長文・乱文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。番外編としてレース後や現地での食事なども忘れないようにまとめようかな、と思いますが、とりあえず気が向いた時に書こうと思います😁

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