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山小屋でご飯を食べて考えたこと

宮之浦岳縦走2日目
高塚小屋に着いたのは午後2時半頃だった
雨で濡れた木のデッキの上に立ち戸を開ける
既に先客5人グループがシュラフを広げ談笑していた
各階定員5名のスペースでマッチ箱のような3階建ての小屋だった
避難小屋なので定員は目安にしか過ぎないのでハイシーズンともなればぎゅうぎゅう詰めになるだろう
濡れた雨具は脱いでから上に上がるようにと促され登山靴を脱いで2階への階段を登る
入り口の三和土は狭く靴を置く場所、雨具を吊るすのにも苦労した
湿度100%なので朝までに乾くことはない
登山靴を斜めに立て掛けて中に溜まった水を
捨てるくらいしかできない
2階も定員5名の広さだ
3階への垂直梯子のすぐ横に陣取ってマットを広げた
この広さなのでもし雨具から水を滴らせながら入ると床は水浸しになり面倒なことになる
私の後から来た登山者は雨具のまま入ってきて失態に気が付き自分の脱いだ靴下で濡れた床を拭いていた
時に靴下も雑巾になる
本人にとっては切実な問題なのだ
広げた寝袋が濡れてしまっては雨の日に乾くことはない
後から続いて登山者が入って来た
この人を含めて6人のグループにガイドが付いた団体だった
ガイドの若者が2階に上がってきて小屋内の寝場所を確認して案内する
慣れた感じだった
挨拶を交わす
私は壁際に荷物を広げてストーブを取り出して先ずはお湯を沸かした
身体が少し冷えて来たので防寒着を着込んで
たっぷり砂糖を入れた紅茶を飲んで一息ついた
多い目にお湯を沸かして保温水筒に入れた
ペットボトルにもお湯を入れてカイロ代わりにしてシュラフの中に入れる
しばらく経って3階に寝床を確保したグループのメンバーも2階に降りて来て車座になり賑やかになった
ガイドが箱の中から次から次へと調理器具や飲み物を取り出した
重いフライパンやホットサンドメーカーが出て来たのには驚いた
山雑誌にガイドが大量の食料を背負って贅沢料理を振る舞う記事を読んだ事があったがまさにその光景が目の前に繰り広げられた
私はあまり見ないようにしていつもの質素な食事を始めた
フリーズドライのご飯とおかずをお湯で戻して食べるだけだ
ホットサンドメーカーでは餃子が焼かれ始めた
冷えたビール、焼酎のお湯割り、ワインなどなど
なかなか豪華なのだ
目に毒だ
現代とはそう言う時代なのだろう
ちょっと複雑な気持ちになったがそんなサービスを必要とする人がいる一方でなるべくお金を掛けることなく山を楽しみたい私のような登山者がいる
良い悪いではなく各々の選択である
お金を基準に世の中を計量化すれば単純な話格差社会である
一方で登山行為はそもそも何の利益も生まないし社会にこれと言って役に立つわけでもないから比較の対象外ではある
しかしひとたび遭難事故が発生すれば救助の際には保険の有無を聞かれるそうだから生きるか死ぬかの瀬戸際でもお金はとても重要なのだ

いつしか宴も終わり外は暗くなってきた
用足しに出ると相変わらず雨は降り続いていた

ガイド氏今夜は縄文杉近くの東屋で寝るとのこと
客をガイドしながら重い荷物を一日背負って歩き小屋に着いたら料理を振る舞い翌日夜明け前にはそこで朝食の準備をして待つ
顧客に登山を楽しんでもらい満足して帰ってもらうために気を使う
印象に残ったのは食事中にあなたも一緒に食べましょうよと周囲から勧められても私の食べる分は用意してあるからと決して箸をつけようとしなかった事
そこに彼なりのプロとしての矜持を感じたと言えば大袈裟だろうか
何事も島で働き生きて行くのは容易なことではないなと感じた夜だった

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