
3日目 佐多岬で考えた
一晩中降り続いた雨も上がり一路佐多岬に向かった
岬への道はアップダウンの連続でこの道を後からまた戻るのかと思うとちょっと気が重くなった
お約束の本土最南端モニュメントの前で記念撮影する
本当の岬の南端はさらにその先の駐車場からトンネルを潜って階段を降りて登った先にあった
自転車を売店の裏側に停めて歩き出したらバスの団体客から逸れてしまった人が私に声をかけてきた
『俺はどこに行ったらいいんだ?』
『?』
『さあ、私に聞かれても、、』
『展望台は?』
『そこのトンネルの先らしいけど』
だいたい初めてここに来た私に聞いてもわかるわけがないでしょと言いたいところだが
聞いてくる人の気持ちもわからないではないので受け流す
とにかくサッサとこの岬は片付けようと小走りに展望台を目指した
舗装された綺麗な歩道と階段
この道のりが意外と長い
展望台に到着して建物の中に入ってみる
誰もいない


最近出来たばかりのようで真新しい
三方ガラス張りで明るい日差しが室内に入る設計だ
海がよく見える
外に出てみる
曇天である
眼下に波が打ち寄せ風が吹いている

ここまで足を運ぶ人は少ないようだ
来る前には草の生い茂る小道を進み
ちょっとうらぶれた昭和感の漂う場所を想像していたのだが軽く裏切られてしまった
本土最南端は達成したので帰り道を急ぐ
例のおじさんは無事お仲間と合流したようで会うことはなかった
「爺さん行方不明にならなくてよかったね」
心の中でつぶやいた
売店まで戻りサイダーと最南端到達証明書を買い求める
小型の手帳サイズだ
2日前に泊まり合わせたライダーに見せてもらった証明書と大きさが違う
店員さんに聞くともう一種類無料の証明書があると言う
謝りながら返品して背後のテーブルの上にある証明書を頂戴する
まさか2種類の証明書が存在したとは
しかも一方は無料だ
返品したお陰で彼女は気を悪くしてしまった
愚かな私は最南端で不機嫌嬢を作ってしまった
それは苦い思い出となった
そもそも最南端と言っても
本州最南端
本土最南端
日本最南端といろいろ存在する
あの世に持っていけるのは思い出だけなのだ
今後は旅先でつまらぬ証明書など買うのはやめよう
しかし人が持っているとつい欲しくなる悲しき習性
これは治らないかな
#佐多岬 #自転車旅 #苦い思い出 #最南端
#証明書