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信仰の聖地ムクチナート
トロンラパスからどんどんジグザグ道を下る
前方眼下に緑が見えてきた
ムクチナートだ
今までのモノトーンの世界から人の住む里が手の届くところに見える
山羊が草を食んでいる
タルチョたなびく寺院も近い
一気に標高差1600m余りを下ってしまった
町の手前に大きな寺院が見えた
前を歩いていたポーター達も荷物を傍らに置いて参拝に行ってしまった
私も後に続いた
何やらありがたそうな予感がしたからである
長い石段は荷を背負った身にはちょっと脚に応えたがどんどん登っていった
一番上の境内は大勢の参拝者で賑わっていた
身支度から見るとこの人達はどうもインド人のように見える
盛んに小さな四角いプールで沐浴もしておられる
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どうしてこんなところにインド人が?
と不思議に思ったらこの寺院はヒンズー教の聖地でもあり仏教の聖地でもあるらしいのだ
108個の蛇口から聖水が流れ出てそれがカリガンダキ川に注がれインドに入っていつしかガンジス川に姿を変える
壮大な話ではないか
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この聖水を頭からかぶっておけは良かった
さすればボケ始めた頭脳も少しはシャッキリしたかも
知らぬは後の祭りである
参拝を終えて階段を下っていくと左側にはサドゥーであろうか
長い髭を伸ばした人達がズラリと下の方まで並んでおられた
中には寝転んで手だけ出している横着そうな人もいれば岩の上に座って微動だにしない人もいる
私の前を歩いていた参拝者は律儀に一人一人の壺に紙幣をねじ込んで下っていった
この人達はどういう存在なのだろうか
ちょっと私には理解に苦しむのだが
この広い世界
ちゃんと理由があるから存在するのだろう
両側にホテルや土産物屋、レストランの並ぶ土埃の舞う通りを抜けて一番外れのホテルに荷を置いた
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いつもの儀式、マサラティーを頂きそして久しぶりの熱いシャワーを浴びた
今まで意識してはいなかったが緊張が少し緩んだかな
その日はそんな気がしたのだった
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