ままならない家族
実家に帰っていた。帰省というほどのものではなくて、電車とバスそれぞれ20分くらい、合計40分くらいの距離に住んでいる。家族仲は外から見ればそれなりによく見えるだろうけど、内実はそうでもない。父と母の間にはたびたび、というか大体いつも冷たい空気が張り詰めているし、姉は父と口を聞かない。父は孤立している。私はそれをなんとかしようと道化を演じてしまう子供で、今もそのままである。
昔からいい子、育てやすい子だと言われてきた。親に怒られるのが1番怖かった。今も、親に怒られるかどうかを判断基準にしてしまう時がある。(そのくせ絶対怒られるとわかっていてタトゥーを入れるような神経の太さも持ち合わせている)
私の怒られるかも基準はむしろ些細な点にあって、無断でお風呂に携帯を持ち込む際のジップロックを使ってしまって良いか、とか本当にどうでもいいし、絶対怒られないようなことばかりだ。最近になってやっと、「いやこんなことで怒られるわけないだろ」、と自分でツッコミを入れられるようになった。あまりにも遅い。
私は平和主義の人間だし基本ぼーっとしているので、家族には仲良くあって欲しいが、父に原因があるのは明白で、それを望むのは母と姉に我慢を強いることでしかなく、何も言えないのであった。
父はアルコールが好きで、平日の晩酌に加え、休みの日は下手すると朝から飲み続けている。正月など地獄である。飲むだけ飲んで1人で何かにキレて、不貞腐れて寝てしまい、起きてきた時にはキレていたことすら忘れているような人だ。テレビにもよくキレている。消せよ、と思う。
はっきり言って、迷惑である。こちらには理不尽に大きな声を出されて嫌な思いをした記憶が残っているのに、あちらにはその気はなく、関心を惹くためか体のあちこちが痛いだのなんだの言いながらまた酒を煽る。そんなに体調がすぐれないなら酒をやめろ。病院に行けと言いたくなるが、多分それは彼の求めている答えではなくて、「大丈夫?」と心配して欲しいだけなのだろう。子供がアダルトチルドレンなら親もアダルトチルドレンである。
いわゆる昭和の家庭で、父は自分の使った食器すら台所に下げることはしないし、食事中に立ち上がることなどなく、何もかもを母か娘にさせる人だった。幼い頃はお手伝い、と思っていたが、大人になるにつれ自分の酒を飲むための氷くらい自分で入れたらどうかと思うようになった。最近は氷は自分で入れているようだが、それは母も姉も構ってくれないからだろう。
しかし私はそれでも母と父には仲良くして欲しいと思ってしまうのである。それが母に我慢を強いることであると知りながら、家庭の平和を望んでしまうのである。
一度、帰省中に父と母の口論に遭遇した。身体が固まってしまって動けないし、一気に気分が落ち込んで抑鬱状態になってしまい、しばらく実家に帰れなくなった。それくらい、両親が不仲というのは、個人的にはしんどい。母はそれを心配して、以降口論はせず無視することにしているらしい。それもそれで解決になっている気がしない。きちんと話し合いをして欲しいのだが、相手はアルコールが入っていて話にならない。本当に厄介だ。
実家は好きだけれど、私は実家では道化を演じなければならず、まあまあしんどいのだなあと1人の家に帰ってきて思った。