80代のセンパイと暮らす。(39)
今週からセンパイは社会復帰した。
もちろんその前から、買い物にいったり、弔問に来た人を迎えたりはしていたが、定期的な会合や書道の稽古にはずっと行ってなかった。
「話さなきゃいけないのがヤだから、休むわ」
初めは今月からの復帰に乗り気じゃなかった。そこを絶対行った方がいい!と言って、復帰させたのは私だ。
もちろんセンパイが辛いのは分かっている。行きたくない、会いたくない気持ちもわかる。「けど、今、行かないとどんどん行きづらくなるよ。みんなが心配するよ」とセンパイを追い込んだ。すぐに同意はしなかったが、それでも納得したようで、前日に美容院に行くとか、黒のニットのTシャツを貸して、などと言って、覚悟を決めたようだった。
センパイが復帰すると、色んな人が色んな方法でセンパイを気遣い、労ってくれたそうだ。40歳で結婚した娘が43歳で亡くなったという人、「これからどこにだって私が連れて行くからね!」と言った人、そっとランチをご馳走してくれた人、、、みんなに会って、話して、聞いて、美味しいものを食べて、センパイは少しずつ元気になっていくだろう。センパイの日常はいつもそうだから。それを取り戻せるようになるには、時間と少しの勇気が必要に違いない。センパイはやはり勇気のある人だった。
長崎の友人は横浜の娘の家に来たときに、センパイにも会いに来た。手紙で告げたセンパイに長い長い手紙を返してきたという友人が、センパイはなぜか会いに来るような気がしていたらしい。その後も、聞きつけた友人たちが何組か弔問に来た。センパイはそのせいで美容院にも行けなかった。
親友のケロは「神様のお導きだから、あなたは大丈夫」とケロらしい言葉で気遣った。ケロとはまだ会う約束はしてないようだが、とみとは会おうとしているようだ。ようやく、そんな気持ちにもなってきだみたいで、ホッとする。
センパイのそんな姿を確認してから、私も親友たちと会ったり、サウナ行ったり、きっと出来るようになるだろう。
私たちはやはり周りの人たちに助けられて生きてるんだもんね、センパイ。