80歳のセンパイと暮らす。(27)
朝、起きたらセンパイがいない。
まだ8時前。出かける話も昨日はしていなかった。
雨戸は開いている。玄関にサンダルがあるから、家のまわりの掃除でもない。外に出て、門まで行くと、隣家に住むセンパイの息子の奥さんの自転車がある。この時間はいつも自転車で出勤しているはずなのに、もうかなり危ないと言われていた奥さんのお父さんに何かあったのか。センパイはそれについて行ったか。いや、それはないな。
とりあえず、携帯に電話をしてみることに。
つながった。
「今、コンビニ行って帰るとこ」
「コンビニ?」
(うちの近くにコンビニはなく、センパイの足で歩いて10分以上はかかる)
「コピーしに行ったの」
(昨日、うちのプリンターが壊れてたからか)
間もなくして、センパイ帰宅。
「あら、びっくりさせちゃった?コンビニって色々あるのねー。揚げ揚げのコロッケも一緒に買ってきちゃった。食べる?」
いやいや、センパイ、さすがに朝から揚げ物はムリよ。
涼しい顔のセンパイを見ながら、結構心配してたんですけど、、、との想いは伝わらないなぁと。私が朝、センパイの部屋から物音がしない時に、ザワッとした気持ちになってることなんて、思いもしないんだろうなぁと。ま、いいのか、それで。それはコウハイというより、娘としての勝手な想いなだけだしね。
しばらくして、センパイの息子の奥さんのお父さんが亡くなった知らせが届く。今年の年末年始はお元気だったのに。
箱根駅伝も一緒に見に行ったのに。
また見に行きましょうね!って最後にギュッと手を繋いだのに。
いつかセンパイと私にもこんな日が訪れるんだよなぁ。毎日想像しているようで、想像できない別れが。
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