【共創Interview #1】80&Daimaru Matsuzakaya
株式会社大丸松坂屋百貨店が、百貨店業界初の高級アパレルファッションレンタルサービスとして2021年3月にスタートした「AnotherADdress(アナザーアドレス)」。世界的なデザイナーズブランドを多く取り扱い沢山のユーザーから支持を集めていますが、実はそのECサイトの開発を80&Companyが担当しています。協業のきっかけは、CTO大川の「逃げない」姿勢にあったということで、その詳細や今後についてお話を伺いました。
ーー対談した4人のプロフィール
どんなきっかけでプロジェクトが始まりましたか?
矢野さん:最初のきっかけは、田端さんと僕の繋がりですよね。僕がCEOを務めているGWG株式会社は⽶シリコンバレーに拠点を置いて、スタートアップ企業への投資や新規事業開発⽀援を⾏っています。J.フロント リテイリングさんからもベンチャーキャピタルに出資していただいていて、その兼ね合いで田端さんを受け入れていた時期があったんです。
田端さん:当社がアメリカのスタートアップに出資を検討するという流れの中で、私はしばらくサンフランシスコに滞在していたんですよね。サンフランシスコから戻ってきてAnotherADdressを立ち上げようとなった時に、ITのトップとして支えてくれる人が欲しいという話になり、矢野さんに「手伝ってほしい、良い開発会社を紹介してほしい」という話をしたんです。そして、80&Companyの大川さんを紹介してもらったという流れです。
大川:私と矢野さんは、AnotherADdressが始まる前に一緒に仕事をしていたんです。それがきっかけで紹介をいただきました。
開発パートナーを社外で探した背景は?
田端さん:僕は10年以上事業開発部に所属していて、オムニチャネルの店舗連動型のECやアプリの立ち上げなどを担当してきました。その経験の中で感じていたのは「社内のレガシーなシステムに組み込んだり情報システム部門を通すことでかかる時間がネックになっている」ということです。
そこで、AnotherADdressは黎明期で0から1を作り上げるからこそ、社内の既存システムとは完全に分け、スピード感をもって開発ができる人を探すことにしました。
またウォーターフォール(※1)での開発手法には限界を感じていました。僕自身に開発経験は無いので、構想だけがある状態。そこをアジャイル(※2)で実現していってくれるパートナーが必要だったんです。
※1ウォーターフォール:プロジェクト要件に変更がないものと想定し、事前の計画通りに進める開発手法。
※2アジャイル:プロジェクト要件に変更があるものと想定し、事実を把握しながらプロジェクトを進行させる開発手法。
80&Companyをパートナーに選んだ理由は?
矢野さん:まず私が大丸松坂屋さんに大川さんを紹介した理由から話すと、過去一緒に取り組んだプロジェクトが結構大変だったんですが、その時に大川さんは逃げなかったんです。逃げない人をとりあえず探しておこうという思いですね(笑)。
スタートアップへ投資する時も一緒で「ファウンダーが逃げないかどうか?」と言う点が一番大事なんです。いなくなることもありますから。あとは何とかするという気概さえあればね。
田端さん:他社の選択肢もありました。ただウォーターフォール的な開発は絶対に上手くいかないことは分かっていて、途中で要件が変わることはざらで、むしろ要件はどんどん追加される。パートナーも同じ思想を持っていることが第一に重要だと考えていました。その思想が一番強かったのが80&Companyでしたね。
80&Companyと一緒に仕事をしてみて良いと感じる点は?
窪川さん:私をはじめ開発の知見があるメンバーは社内に少ない中「こういう機能を入れたい」と考えても裏側の設計まで詰め切れていないことがよくあります。
80&Companyさんはその要望に対しシステム側で解釈し直して、分かりやすく「こういうことですよね?」と返してくれます。コミュニケーションを我々に合わせてとってくれている印象があって、その点が助かっています。
あとはお客様第一という点を開発陣も考えてくれていると感じることが多いですね。ユーザー視点でのフィードバックをもらうことが結構あります。
田端さん:開発陣全員とコミュニケーションとれますよね。
大川:一般的なのは「開発のPMがクライアントの窓口となってやり取りし、結論をPMからエンジニアメンバーに伝える」というコミュニケーションパターンですよね。我々のチームは逆で、私を通さずメンバーがやり取りをして詳細をつめていくようにしています。それが2週間タームでアジャイル開発を回せている理由の1つかな、と思っています。
矢野さん:それって大事ですよね。意識的に大川さんがやっていることだと思うんですが、メンバーから直接やり取りしてもらった方が早いし、間に人が入った方がボトルネックになり得る。
大川:その方がユーザーに近くなるから開発メンバーの意識も上がると考えています。
斬新なプロジェクト体制だと思いますが、背景は?
田端さん:AnotherADdressは社内でもかなり実験的な取組みです。社内ベンチャー型で口座も別、意思決定も基本的に自分という、既存のやり方とは全く異なる方法です。
これまでずっと事業開発畑で新規事業に関わってきましたが、プロジェクトチームの体制には大きな課題感がありました。例えば各部署からメンバーを寄せ集めますが、本業と兼務で上長はバラバラという構造。
もちろん百貨店の店舗を動かす上で仕方の無いところもあるのですが、今回は0→1で顧客資産も店舗も使わない、だからこそこの形でGOが出たと思います。
窪川さん:サイトの開発は2週間タームでスプリントを決めているんですが、このやり方も他の部署の方に話すと驚かれます。
矢野さん:事業開発と一体になってアジャイル開発を回すというのは、特に事業側が大変なんですよね。事業側がまず案件を作って、開発側がそれに頑張ってついてきてくれるようにしないといけない。
窪川さん:それは80&Companyチームがあってこそ成り立っていると感じています。アウトソースではあるけどインハウスに近いような感覚で、何かを相談するにしてもすぐにSlackやZoomで会話ができる。ライトにスピーディーにコミュニケーションがとれる点が助かっていますね。
今後AnotherADdressをどのようなサービスに成長させていきたいですか?
田端さん:チームには「富士山を登ろうね」と言っています。まずはファッションサブスク領域のNo1.企業になるために、5年間の中期経営計画をしっかり達成する。その先はモノのサブスクのプラットフォーマーになることを目指しています。
情報のサブスクリプションが成立した中で「モノってどのようにサブスクライブするのが正解になるんだっけ?」という疑問に対する回答はまだ無いと思っていて。サブスクが世の中にもっと浸透することで体験や人の生活は絶対に良くなるので、あとはビジネス上どう成立させるか?が課題です。
モノを動かすとお金がかかるし劣化もするので、情報に比べたらハードルが高い。そこの最適解を見つけられる企業になれたら良いな、というのが中長期的に思っている事です。
窪川さん:AnotherADdressには「Fashion New Life」という事業理念があります。「ファッションの新しい消費スタイルを創っていきたい」という意思のもと動いている中で、今後は「日本のファッションサブスクと言えばAnotherADdressだよね」とマーケットに認知してもらえるようなレベルになることが必要です。
そうなると今のユーザー数や取り扱っているアイテム数の規模感が変わってくるので、そこの部分も80&Companyチームに並走していただいて、一緒に事業を大きくしていきたいと思っています。
大川:このプロジェクトと共に、80&Companyも成長させてもらいました。
会社の規模・業績もそうですが、経験値としてもそう。AnotherADdressのメンバーが他のプロジェクトでも主力メンバーとして活躍し、会社全体のEC事業を牽引していってくれています。
「お客様と共に成長する」とよく言いますが、それを正に体現しているプロジェクトだと感じています。これからもよろしくお願いいたします!
▼AnotherADdress公式サイト