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和やかに暮らす家

個室ではなくゾーンという選択
 
 子育てを卒業したある女性が子供の宿題は夕食準備の時にキッチンでやらせいたと、言っていました。子供が自分の部屋でやっていたら、見てあげるため別に時間を取らなくてはならない。判らないところを見てあげればいいだけなので、食事の用意の合間で十分なわけで合理といえる。また、子供は母親の料理のやり方を見て覚える事もできそうだ。

 子育て世代の家の間取りはどうあるべきか。この例が示すように、子供の生活(宿題をしたり稽古ごとの練習や遊びなど)を子供部屋に追いやるのではなく、親の目が届く場所で行い、子供と対等に接し、教え導くことが重要ではないかと思います。

神奈川の家
 17~8年前に小学校低学年の二人の姉妹のある夫婦の家を設計させてもらいました。夫婦は共働きで子供のことを第一に考えていました。家は3階建てで中央に3階まで登る階段を設け、どこからでも人の上り下りが判るようになっています。生活の中心は2階でリビング、食堂、台所があります。3階は姉妹のスペースで、それは個室ではなく階段の延長の手摺だけがあり、リビングの上部は3階まで吹き抜けになっていて下を見下ろすことができます。実際にはリビングに親子4人の机を並べて生活していたようで、親子の結びつきは個室で分断された関係とは異なり強固なようです。両親が共働きではありましたが姉妹ともしっかりとした成人に育ち、現在、それぞれの道で元気に活躍しています。
 
 最近新聞やミニコミ誌の広告を見ると平屋の住宅が好まれているようです。子供部屋を居間の近くに配し家族の一体化を望む、住宅の平面計画の過渡期にあると思われます。

 小津安二郎監督の映画、例えば「麦秋」などを観ると、障子や襖の開け放たれた古典的日本家屋で家人の交わりが描かれている。西洋と違って一人が孤立している場はなく、ある居場所があり、家族を常に感じながら生活している。それによって培われた暗黙の了解というか、独特な日本的作法があり、それが習いになっているようです。

 用途による部屋としての明確な区分ではなく、ゾーンによる仕切のないスペースの組み合わせによる計画、あるいは一つのスペースの多目的利用など融通性のある、その家族に合わせたオーダーメイドの計画が重要になると思われます。

 昔とは違う、新しい「日本人の家」が求められているようです。

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