雨と日本の家
雨の多い日本の住宅の形
(2022.06.16 加筆、訂正)
新築住宅の内覧会で工務店のヒトが『窓に庇を付けると建築費が高くなるので他社に競争で負けてしまう。』と、話していました。
最近の新築住宅は窓が小さく庇のない家がほとんどです。サッシや空調の性能向上により、雨の日は窓を開ける必要はなくなったのでしょうか?
屋根の形はその土地の気候風土によります。法隆寺五重塔の屋根の軒の出は大変大きく、最上階の四方には龍の巻き付いた外部の柱がその軒を支えています。 それに比べ中国の塔は軒の出がないか、あっても小さなものです。
また、フィレンツェの街のパラッツォの屋根の軒の出はローマの街よりはるかに大きくなっています。
雨の多い地域では軒の出が深い大屋根の家がほとんどです。
雨が降っても庇があれば窓を開けて風を招き入れることができます。以前の木製の引違い戸(窓)には庇は必須でありました。
その上、木製窓の防水能力は低く、庇があっても風が強ければ窓を閉めても水は家の中に侵入してきます。したがって窓に雨戸が必須でした。
現在はアルミ・サッシュになり水密性は格段に向上し、窓に雨戸のない家ばかりです。また、アルミ・サッシュの開き方も辷(スベ)り出し窓のように雨が吹き込みにくいものも現れ、増々、窓の庇は少なくなっています。
建築の耐久性の評価は建築してから20~30年後のこととなります。したがって部分の性能は向上しても建物に雨水が掛からないように設計するに越したことはありません。(二重、三重の守り。)古くより守ってきたルールは設計する上で大切なことです。
庇を深くすると、雨水を建物本体よりより遠ざけます。しかしながら風により防ぎきれない、雨がかかる部分の腐食は長い年月の間には避けることはできません。古くは壁を薄い板張りにして、腐食した部分を取り換える工夫を施した家もありました。
雨は耐久性の問題だけでなく、打ち放しコンクリートの壁の汚れ、ビルの窓の下枠隅から壁に伝わる汚垂れなどの原因になります。
また、大雨による洪水やがけ崩れなどその家の立地にかかわる問題もあります。
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