「クリエイターになりたい。なりたすぎるよ」
「クリエイターになりたい。なりたすぎるよ」
この言葉にハートを押さざるえなかった。
普通の言葉なのに、不思議な引力を持っていたその人の言葉。
クリエイターになりたい。なりたすぎるよ。
就職活動の時に、私はそう思っていた。
けれども、ある程度の手堅さを求めてしまう性格の私が、
「クリエイター」を目指せるわけもなく。
普通の給料をもらいながら、どこかでクリエイターになれそうな会社に
「クリエイターになりたい」をぼかしてぼかして、履歴書を出した。
ふわふわした私の言葉は、きっと読まれなかったのだろうな。
面接で話し出した志望動機はただの「素敵な夢」と。
「モラトリアムはもう終わりにしなさい。」
そんな心の声が聞こえた気がした。
内定がもらえず、怖くなって
結局のところは二足の草鞋を履くこととした。
クリエイターになりたい。なりたすぎるよ。
その気持ちは、社会人の目の回るような忙しさでしばらく忘れることができた。
毎日10時ごろから仕事をはじめて、22時過ぎまで仕事。
退勤しても明日のことを考えてばかりいた。
自分が持ったことが無い金額を額面だけで動かす。
急にお腹が痛くなったり、休日でも予算のことがチラついて涙が出たり。
明日の人と人との取り持ちを想像して、「仕事だから」やらなければと思ったり。
2年経って、ポジションを変えてもらった。
クリエイターになりたい。なりたすぎるよ。
ポジションを変えてもらってから、またその気持ちを思い出した。
仕事の8割を占めていた人と人の仲裁をやめたことで、
心に余裕ができた反面、その余裕が自分に問うたのだ。
いっそ、この気持ちを忘れられたら幸せだった?
片足脱げかけた草鞋を親指でぎゅっと引き寄せる。
遠くにあって、追いかけて、追いかけられた夢。
クリエイターになりたい?
なりたすぎるよ。
「あなたの言葉が好きだよ」
昔もらった言葉がフラッシュバックした。
ハートを押される言葉が、もっと欲しい。
強欲が疼いた。