【新しい環境が憂鬱な人へ】自分を諦める努力をする新社会人の話。
フレンドリーな体質ではないのだ。
はじめての環境に飛び込んで、はじめからうまく人間関係を築けた試しなどない。
その自覚だけで毎朝憂鬱になる新社会人になるのだろうと思っていた。
今そうである、ことも否定できないけれど。
四月一日の朝、慣れない電車に乗りこんだ時。
そこに「新」大学生だろうか、高いヒールを履いた「女性」とも「女の子」とも言い難い「若い女」がいたのである。
濃すぎるくらいのチークに、つけまつげ。
化粧がうまいとは言い難かったが、
生命力に似た何か、自信のようなものがほとばしっていた。
「今日から女子大生なの。いいでしょう」
そう聞こえた気がした。
彼女のまつげが言っていた。
つけまつげこそしなかったけれど、わたしも大学生になった時、俗にいう「大学デビュー」を目論んでいた。
この暗くて扱いづらい本性を隠して、社交的で優しく、人に好かれる人に。
ちょっと元気そうに喋ってみたり、面白くないことにも笑ってみたりして健気に努力したが、結果としてわたしは変われなかった。
デビュー失敗。
自分の根暗さは、知ってるつもりだった。
けれどその時まで、自分は努力しだいで変われる。
そう信じていた。
だから、変われない自分を目の当たりにしては、
努力が足りないと、自分の怠惰に傷つき、呪った。
ただ、大学デビュー失敗。
それを受け入れた時、この根暗はもはや不変と知ったのだ。
明るく、人当たりの良い、「理想」を諦める努力をはじめた。
自分は暗い。
自分は人付き合いが苦手だ。
自分は人から好かれない。
だけど、人の中で生きている。生きていくのだと腹をくくった。
こんな自分を認めるのが辛くて泣いた。
新社会人になったわたしは、過剰に自分に期待しない。
自分を諦めている。
「たぶん、最初から仲良くなるのは無理。時間が必要。」
諦めるなんて悔しいけれど、すこし生きることが楽になった。
「わたしはわたしにしかなれないから、しょうがない。」
潔く、諦めた、つもり。
実際は、理想の自分を捨てきれないでいる。
ちょっとだけ同期に話しかけてみたり、名前を覚えようとしてみたり。
上手くいかなくても、やはり理想を叶えるために頑張ることをやめられないらしい。馬鹿だなあ。
けれど、それもまた、わたし。
あの女子大生は、キラキラしていて、自信ありげに見えた。もしかするとなにもかもが「バッチリ」な人かもしれない。
たまに嫌なことがあっても愚痴を言える友達がすぐにできる、魅力あふれる人。
そうだとしたら、ちょっと、いやかなりうらやましい。人から好かれる才能。
自分はそうではない。第一印象はよくない。いつもよくない。
でも、すこしでいい。私を好きになってほしい。
時間はかかっても、素の私を。
ズボラな性格と相まって、今日もナチュラルメイクで電車に飛び乗る。
今日も発揮してしまうであろう「根暗」。やはり、ちょっと憂鬱だ。わたしは、フレンドリーな体質ではないのだ。