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脳にキマるシーン10選~ノクターンブギ編~
上質な脚本や演出や演技を見ると、そのキャラクターの心情や状況、過去や未来に思いを馳せ、脳がじわっと痺れてものすごい多幸感に襲われる。これを作品が脳にキマると言う――。
Webショートアニメ「ノクターンブギ」は、更新日に森田と純平監督のアカウントでTwitterスペースが開かれており、視聴者からの質問に回答したりフランクにおしゃべりしたりが繰り広げられている。
先日スペースにお邪魔して、僭越ながら監督に直接「キマるシーン10選」をお伝えさせていただいたので、そのときピックアップしたシーンをせっかくだからここに残しておく。スペースで監督から伺った裏話も覚えている範囲で記そうと思う。
※スペース用に用意したため時間があまり長くなりすぎてもいけないし、選といえば10がおさまりが良いということで、泣く泣く10に絞った。。。
※ノクターンブギはスクショと拡散OKを出していただいているので、YouTubeのスクショを差し込んでいく
①7話:霧矢のモノローグと思ったら長文の独り言だったシーン
最新38話と比べるとまたそんなにアニメーションがなく、止め絵のような表現が多かった初期、それを逆手に取った演出に度肝を抜かれた。
口元動いた? あ、全部しゃべってたの!? すごい長文だね!? となるシーン。
②12話:ゲームいつでも交代しますよと言われたたま子「うらめしや♡」からの流れ
たま子「うらめしや♡」
霧矢「えっ」
たま子「えっ」
霧矢「えっ」
たま子「えっ」
たま子「えっ」 ←追い越しちゃうとこ好き
霧矢(どういう意味だろう……)
脚本段階では「えっ」はこんなに多くなかったのだが、本読みの段階でもっと増やしちゃおうとなりできたくだりだそう。
マイペースでふざけたがりなたま子にまだ真正面からツッコめない距離感がかわいい。
③18話:男子会で清の気になる女子の名前を聞いた霧矢とシャンパンのカット
霧矢の切ない表情、失恋に近い心情を想像して胸がヒリヒリするシーンでシャンパンの泡がシュワシュワ……。泡が絶えず立ち上り続けることから「幸せが湧き続ける」と表現されるおめでたいシャンパンの炭酸が、鼻にツンとくる感覚とアルコールの苦みが泣きそうになっているかもしれない霧矢に重なる。
シャンパンというと男子会よりは女子会なキャピっとしたイメージだが、女子はしっとりと赤ワインで、男子会にシャンパンを持ってくるとは……!
机にはウイスキーなどの別のお酒もあり、1杯目の後は好き好きのお酒を飲んでいくそう(スペース裏話にて)。
この後女子みんな好きと言いつつ、たま子が気になってると思い込んでいる霧矢に助け舟を出す清の博愛も罪深い。
④19話:ポストのように赤くなった魔理が切手欲しくなっちゃうシーン
「切手欲しくなっちゃうシーン」って?
残念ながらこの通りでしかないのでこれ以上説明しようがない天才的面白さのシーン。
かわいいと言われなれておらず真っ赤になって切手欲しくなっちゃう魔理に霧矢が「ポストなの!?」とツッコむも、すかさず「違いますハガキです」と切り返されてしまう。
いや確かにそうなんだけど!? ペースのすり替えがおそろしいよ! テキトーにツッコんだら痛い目見るわ……。
⑤22話:いつもの軽いノリで絡む清をしゅんとした瑠衣がいなすシーン
第一印象ではチャラく見えた清と瑠衣。ちょっと落ち込みモードになった瑠衣が、変わらずチャラテンションな清にそういう気分じゃない、と優しく諭す。いつもの明るいテンションとのギャップに完全にやられてしまう……!
絶妙な「おやすみ」でトドメを刺されてしまうのだが、この返事がしやすい挨拶で〆る瑠衣の優しさが際立つ。逆に、挨拶は相当な意思がないと定型を破って「待ってよ!」としづらくもあるので、あっけにとられた清は「おやすみ」と言わされ会話を中断されてしまうのである。
そしてこのチャラさへ疑問符を投げかけて清がうろたえる役回りを、おなじくチャラい瑠衣が担うんだ!という驚きもあった。
⑥25話:『魔界の雷禍(デモンズ・レオボルト)』
LOST SONGネタきたああああああああああ
クロスオーバー大好き人間なので脳みそからよだれが止まらなかった!!
なぜクロスオーバーが好きかって、別作品との繋がりを匂わせることで世界観に情報量が増え、物語の可能性がドッと増えるのだ。
統一感がなくなって好ましく思わない人もいるだろうが、全何話かも決まっていないノクターンブギのストーリーがどう展開していくか?の方向性がさらに広がってすごく良かった。
もともとレオボルト家の「決して錆びない、折れない」要素は入れ込む想定はあったそうだが、技名となったのはストーリーを作っていくうちに生まれたのだそうだ。
本編でもYouTubeコメントでもさんざんクソダサ技名をいじられていた霧矢がカッコいい技名を叫んだことで、自分の中の観客たちも大盛り上がりだった。
⑦28話:最後にあなたの血をください、決死の『闇夜への誘い(テンプテーション・ミスト)』
こちらはクソダサ技名が切ないエモシーンに挿入されていて笑かされるのかと思ったら、まんまと感動してしまうシーン。
クソダサ技名に泣かされる日が来るなんてな……。
そこからさらに「カレーの臭い」でやっぱりクソダサなんかい!と天丼していく裏切りもすごい。(天丼で裏切るって真逆の概念が両立してる。やば。)
このように笑いと切なさの別ベクトルの感情を裏切り(驚き)も足して描き、感情の絶対値を増やしていく手法が森田と監督は非常に上手い。5分尺でしっかり満足感がある理由の一つでもあると思う。
監督も話していたが、この手法は展開的に逆転が起きて見ている人にどういう感情になって欲しいのかわかりづらくなるため非常に扱いづらい。それでも成立させている監督の手腕が光る。
この展開は監督も好きということで、自分もめちゃくちゃ好きなのでどんどん攻めていって欲しい!
⑧36話:モノマネを振られて仕方ないな感を出しつつもステージ・客席になるように移動する霧矢
10個選ぼうとするとどうしても最近の回がインパクトあって残り3つは最新3回になっている。
このシーンはいつものシェアハウスがステージと客席に早変わりしたことに感動した。
2Dアニメや漫画だとそこにはないステージをイメージとして描いちゃうのも一つの手法だと思うが、立ち位置とふるまいが変わるだけで空間の意味合いが変わる演劇的な演出が日常感があって好きだ。
モノマネを見ての魔理のリアクション「私にお姉さんはいませぇん」の言い方がこんなんある!?というものなのだが、これは魔理役の瀬戸さんのアドリブだそうで驚いた。セリフ自体は小さな子がおちゃらけてイジワルするときに言いそうだが、それとは全然違う独特な言い回しなのだ。やべえ。
⑨37話:雲(蜘蛛)を「ちぎっては食べ、ちぎっては食べ……」
クラウドファンディングのシチュエーション枠で「すれ違いコントが見たいです」のお題を受けて監督が書き下ろしたコント回。
真新しくはない「雲」と「蜘蛛」の取り違えが起きるのだが、普段ホラーでスプラッタな発想だったり語彙を持っているたま子と、世間知らずで怖がりな魔理で繰り広げるのが題材にぴったりでうまいなあと思った。
たま子役の早見さんの「雲(蜘蛛)に飛び乗って、ちぎっては食べ、ちぎっては食べ……」の言い方もファンシーでありつつグロくもあって絶妙だ。想像するとえげつない。笑いが止まらない。
⑩38話:本編終盤から既存EDの顔して流れる「今宵はブギーラップ」
GYAO!での配信ラスト回でもあり番外編配信期間前ラストにもなったこの回は第一部最終回とも言える位置づけにもなっていて、いつもより終わり方がこだわられていた。ベタだけど外せない!
ふいにBGMで流れ出したいつもの劇伴じゃないけど確かに聞き覚えのあるメロディー。クラウドファンディングで製作され、霧矢役の山下さん作詞歌唱のみんな大好き「今宵はブギーラップ」のインストで〆られた。
遠景になっていつもよりゆっくりのナレーションが流れ、気持ちいいところでエンドクレジットまで食い込んで動画のすべてが終わる。
インストもそのままでなく盛り上がるように流す箇所がピックアップされていて、映像やナレーションも細かな調整の末に完成されたものなのだそう。音まで総合的に操れる幅広い監督のこだわりの結晶だ。
以上が38話時点での脳みそビシャビシャ10選だ。
YouTubeで1話5分程度なので、まだ見たことない人はサクッと見てみて欲しい。見たことある人も見返してみてはいかがだろうか。
みなさんの脳にキマったシーンも是非知りたいので、もし良ければ何らかの形で教えていただけると幸いです。
それではぐっばいらぶぎー!