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君田温泉でのこと

先日、彼と共に島根県の日御碕灯台までツーリングしてきた。

お天気も良く、中々良いコントラスト!

私のバイクが110ccと排気量が少ないために、下道でのツーリング。グーグルナビに惑わされたりしながらも、中免取得後初めての県外ツーリングは無事に楽しむことができた。

その帰り道、彼の友人がおすすめだという君田温泉に寄った。元々ふたりともお風呂に入るのは好きなのだ。ただ、私よりずっと背の高い彼には自宅の浴槽は少々小さいので、手足を伸ばせる大浴場に入りたいとぼやいていた。それならば温泉に行きたいね、という話はよくふたりの話題に挙がった。以前、別の温泉にも行ったが、あいにく臨時休業だった。それ故に温泉に行きたい欲は増していた。


君田温泉
静かな山の中に佇んでいた

君田温泉は、道の駅と同設されていた。丁度お客さんの往来が途絶えたタイミングだったのか、外に人気がなく、恐る恐る建物に入る。中は明るく広々としていて、お風呂上がりでほかほかとしている人々がちらほらと。うずうずしつつ大人700円でふたり分、入場券を買った。
「17時に広間集合ね」
温泉の受付横に、牛乳や牛乳飲料の自販機。温泉上がりにいちご牛乳を飲もうと心に決め、脱衣所に向かった。

1時間もあれば温泉を堪能して身支度を整えるなんて簡単だと思われるかもしれない。しかし、女湯のドライヤーは中々順番が回ってこないのだ。順番待ちに掛かる時間と、私の動作のゆっくりさを考えると、あまり1つの湯船にかまけてはいられない。こういうところに来ると、全ての湯船に浸かりたくなる性分なのが私だ。

髪を纏めて化粧を落とし、体を洗って、まずはブクブクと泡立つ湯船へ。ツーリングで冷え切った身体、特にガチガチに凝った首筋、肩が緩んでいくのを感じた。思わずため息が漏れる。親切なことに、入浴場の壁に時計が掛けてあった。コンタクトをしてきてよかったなと思いつつ、時計の針がゆっくりと進むのをぼんやり眺めていた。

次は露天風呂へ。一瞬、外の寒さに鳥肌が立つも、湯船に浸かるやいなやすぐに消えた。整えられた植え込みと遠くに見える山を見つめながら、何もしない幸せを噛みしめる。隣の壺湯は他のお客さんで埋まっていて入れなかったが、室内の湯よりも少しぬるめの湯船に肩まで浸してのびのびと過ごした。

室内に戻り、ぶくぶく泡立つ湯船の隣の温泉に入る。流石に暑くなってきたので、少し縁に腰掛けるなどしながら調整した。色んな年代の人がいる。私は比較的若い方だった。出産を経験しているかどうかは何となく身体付きでわかるけれど、どうやら家族で来ているのだろうお客さんが多かった。出産すると、子供にエネルギーを注ぎ込む分、母体にはどうしても体型や体内に変化が生じる。彼と一緒にいる限り妊娠しない私の体には、これからもその変化はないのだろう。けれど何だか、すっかりぬるくなった湯船に心を浸した気分になった。

色々と湯船をまわる間、ずっと目の端にサウナが映る。時間短縮のために私は髪を洗ってないが、もしサウナに入れば汗を流すのに髪を洗わないといけない。また、この後もバイクに乗って冷たく乾燥した外気に触れるので、髪の手入れも多少しっかりしておきたくなる。

悶々としていると、お客さんがひとりサウナから出てきた。結局、私は入れ代わりでサウナに入った。私はもう10年以上サウナに入っていなかった。
中は少し刺激的な木の香りがして、修行しているかのようにどっしり座る短髪の女性と、もうひとり女性がいた。そんなに長くいるつもりはないので、1番手前に座る。少し息のしづらい空間だが、慣れてくると何だか心地良くなった。いつの間に汗が吹き出してくる。昨今ブーム渦中のサウナとはいかがなものかと思っていたが、案外はまりそうだった。
サウナから出て、身体を流し水風呂へ。彼はたまにサウナを利用するようだったが、いわゆる「整う」入り方を先に教えてもらえば良かったなと少し後悔した。

急いで髪を洗い、脱衣所に戻る。案の定ドライヤーは3台とも使用中、うち1台は髪が腰まである女の子がチャラチャラと気取った風にゆーっくり使っている。これは間に合うんだろうかと思いながら、ボディークリームを塗り、服を着る。少し待つと1台のドライヤーが空いたので、ヘアオイルを塗った髪を乾かす。次からはドライヤーを持参しよう。

集合時間まであと10分、いちご牛乳をゲットし広間へもどると、ちょうどマッサージ機から立ち上がった彼と目があった。300円16分のマッサージ機はかなり気持ちよかったらしく、帰宅後も珍しく彼の方が元気だった。

サウナ後の体に冷たさと甘さが染み渡る…!!

いちご牛乳を楽しんだ後、バイクに跨り帰途につく。温泉の話を彼とする。
「温泉が良いものだってもう知ってるのに、なんで7ちゃんがそんなに興奮してるのかって思ってたけど、7ちゃんは初めて自分のお金で温泉に入ったんだね。だから改めてしみじみ良さを感じたのかも」

確かに今まで温泉には家族で行っていた。私はそれで何となく、温泉とは良いものだと認識していたに過ぎなかったのだろう。だから、彼の言葉にはとても納得した。
「Sさん、サウナ入った?」
「人がいっぱいで入れなかったよ…」
「そっか、じゃあまた一緒に行こうね」

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