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同級生М

同級生Мと連絡が取れなくなってから、気付けばもう4年の月日が流れていた。
ある時、幼かった私は彼女の気持ちや感性を傷付けてしまった。それは連絡を絶たれても仕方がないし、そのことはずっと後悔していた。高校の思い出の多くを占める3人組、その内のひとりである彼女。


初めての同窓会を前に、3人組の残りひとりのHから、Мが同窓会の2次会に私を呼ぼうとしていることを知った。私はМを恐れる気持ちもあったが、もう一度Мと関わりを持てること、3人が揃うことが嬉しくて、すぐに2次会参加の連絡を返した。

とはいえ、私はMと何を話して良いのかわからなかった。あまりにも空白の期間が長すぎた。同窓会が進む中、なんとなく私はМを避けた。3人の内のひとり、Hが私をМのところまで引きずっていくまでは。
私たちは並んで円卓についた。
「もうこの3人が揃うことはないと思ってた」
Мはそう言って、呆れたように、でもなんだか楽しそうに笑った。


縁もたけなわに会が緩んでいく中、するりと会場を後にした私たちは当時つるんでいた仲間と共に2次会の舞台であるМの実家の離れに向かった。
そこでは、あの頃と同じ空気が流れた。
私は初めて麻雀に挑戦した。彼らに教えてもらいつつ牌を見て一喜一憂するのは、純粋に楽しかった。
慣れない仕事について行けないし、人間関係もうまくいかないしで乾いていた心に、本当に久々に楽しいという感情が芽吹いた。
麻雀をして、雑魚寝して、身体の節々が痛いとゴネながら朝起きてまた麻雀をする。なんてくだらなくて、素晴らしい時間だったろうか。

その中で、私は今の状況を彼らに話した。

「昔から、お前の大丈夫は大丈夫じゃないんだよ」

そう、Мは声を荒げた。私も転職したし、合わないところなんてさっさと辞めちまえと、会っていなかった期間の様子を彼女は話してくれた。どうせ前にHにも詰められてんだろ?と言う彼女の言う通りで、以前私のところに遊びに来たHにも同じように叱られていた。Мにはお見通しだったようだ。
叱られる一方、私の行いを許し、そこに空白の4年間なんてなかったように接してくれることが嬉しくてありがたくて、今の問題だったりを洗いざらい話した。やっぱり叱られた。


本当に大事なものは失ってから気づくというが、私はそういう失敗が多い。自分のことでいっぱいいっぱいで周りの誰かを大切にできない、という状況に陥ってしまう。そんな中、こうして一度切れた縁がもう一度繋がることは、本当に奇跡だ。

私が離れを後にする頃、もう日が高く昇って青空が広がっていた。振り返ると、Мは手を振っていた。今度こそは、私たち3人の縁をしっかり握っていたい。そのためにも、私自身が私を大切にできるように変わっていかないといけないのだろう。

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