見出し画像

「頭がいい」とはなにかを考える

 今回は「頭がいい」, 「地頭がいい」, 「思考力が高い」について私なりの考え, 考えたことを記事に書きたいと思う.


1. 「頭が良い」と呼ばれる人々はどんな人か

 まず, 「この人は頭がいい」, 「〇〇という人は頭がいい」という言葉を使うとき, もしくは他者が使うとき, どのような人に対して使うかについて考えてみたいと思う. 私が思い浮かんだのは次の3タイプだ.

① ひろゆきさんタイプ
② 中田敦彦さんタイプ
③ 岡田斗司夫さんタイプ

 ①の「ひろゆきさんタイプ」の方は, とにかく「思考の速さ」や「 アウトプットの早さ」に注目されることが多い. 1つの問いに対して, 自身の引き出しから素早く解を取り出す. 解を構築するスピードが速いと言い換えてもいいかもしれない. そのような特徴がある. 論破型の思考傾向の方に多い.
 ②の「中田敦彦さんタイプ」の方は「思考の幅」や「引き出しの多さ」に注目されることが多い. 幅広い範囲の知識を有し, あらゆる問いや疑問に対して, 答えることができる. お笑い芸人さんで言えば, 多くの異なるツッコミができる方がそれにあたるかと思われる. (芸人さんはそれを瞬時におこなうのだから早さも十分あるが, 一旦それは置いておく.)
 ③の「岡田斗司夫さんタイプ」の方は, 「思考の深さ」や「深く理解していること」といったものに注目されることが多い. 1つの疑問に対し, 深く考え, 様々な側面から吟味した答えを出すことが多い. 「熟考型」というと連想しやすいかもしれない. 私の主観, 経験則でしかないが, オタク型の人, 特に1つのものを深く追求する人に多いように感じる.

 もちろん上記の3つ以外のタイプを連想する人もいるだろう. そもそも「頭の良さ」という定義するのは難しいことなので, ハッキリと分けることが難しいうえに, 実際はグラデーションになっていて境界というのは曖昧だ. しかし, この3タイプに分けることで浮かび上がるものがある. それは「"頭の良さ"という曖昧な概念というものが, さらに狭い範囲の概念から構成される」というものだ.


2. 「知性の構成要素」に対する私の仮説

頭の良さを構成する要素

 「"頭の良さ"という曖昧な概念というものが, さらに狭い範囲の概念から構成される」というのは, 一体どういうことか. 具体的にいえば, 「とある3つの要素から構成される, バランスの良さや組み合わせで定義されるではないか」ということである. あくまで私の仮説でしかないが, 「とある3つの構成要素」とは
 ① 思考の速さ(速度)
 ② 思考の幅(引き出しの多さ)
 ③ 思考の深さ

のである.

 ①が長けていれば素早く解答を出すことができ, ②が長けていればあらゆる問題に対して応えられる. ③が長けていると1つ問題に対して, より突っ込んで応えることが可能だ.

全ての要素が人それぞれ異なる. 最初に提示した「3タイプの頭が良い人」はレーダーチャートで表すと形が異なる. あえて, 数式的に表すならば

$$
思考力 = (思考の速さ) \times (思考の幅) \times (思考の深さ)
$$

で表すことができるかもしれない. これが現時点での私の仮説だ.


少し数学的な観点での深めの議論

 ちょっと脇道にそれて, 少しだけ細かい議論を考える. 「頭の良さを評価する者」が「頭の良さ」の要素のどれを重要視するかによって,  構成要素の数式は形は変化する可能性がある. (数学的な表現で考えてみる試みなので, 苦手であったり, 興味がないという方は次の見出しまで読み飛ばしていただいて構わない) 具体的には, 以下のような表現ができる可能性がある.

$$
思考力 = (思考の速さ)^a \times (思考の幅)^b \times (思考の深さ)^c
$$

重視する要素ほど, 指数の数が大きくなる. 例えば, 思考の速さや幅を重視するが, 深さを重視しないタイプの人であれば, 次のような表現になる可能性がある.

$$
思考力 = (思考の速さ)^5 \times (思考の幅)^5 \times (思考の深さ)^2
$$

更に細かく考えていくと, 各要素が指数関数で表されるとは限らない. 関数の形がわからない場合は次に表現できたりもする.

$$
思考力 = \operatorname{f(思考の速さ)} \times  g(思考の幅)\times h(思考の深さ)
$$

思考力というものを定式化する場合には関数の形を求めることを実践していいけばよい(かもしれない).

※ 全くの余談ではあるが, 現在のいわゆるAIと呼ばれるものは機械学習という手法のアプローチ方法が多い. 機械学習では「入力と出力の関係を表す関数を仮定し, 膨大なデータを用いることでより最適な関数を見つけ出していく」のようなことが行われていることも多い. ニューラルネットワーク(人間の脳にあるニューロンをモデルにした学習ネットワークモデルの1つ)などはそれが顕著だ.
 よく勘違いされるが, ニューラルネットワーク(NN)というのはあくまで人間の神経伝達, 特に脳の神経伝達を模倣し簡略化したモデルを応用しているのであり, 脳の仕組みを完全再現したものなどではない.
 それから派生して「人間の賢さをAIが超える」ということがもてはやされるが, そもそもこの二者はネットワークの仕組みが異なるので単純な比較ができない. しかし, ネットワークが際限なく最適化され, 計算速度や量が膨大になる (≒ 処理能力が非常に高くなる)ほどAIの方が優れる分野は増えてくるだろう. だからといって「AIに人間が取って代わられる」というのは安直な考えだ. 人間の思考そのもの, 人間を知ることで棲み分けを行うことやAIを活用して新たな「創造」に繋がることができると私は考えている. 

 脱線部分がかなり長くなってしまったが, 今度は「職業ごとに求められる頭の良さ」について私なりの考えを述べていきたいと思う.


3. 職業ごとに求められる頭の良さ

 2.で私が提唱した仮説もしくは定義で「頭の良さ」を考えると, 「普遍的に頭が良い」というのは定義が難しい. (というより, 定義できないだろう.)
しかし, 「職業や場面ごとに求められる知性」というのは考えることはできそうだ. 事例を用いて考えていきたいと思う.

 極端な例ではあるが, ホストでの接客で求められる頭の良さと研究者に求められる頭の良さは当然異なる.
 前者の場合, 様々なタイプなホストの方がいるが, 一般的にはお客様に合わせた臨機応変な会話力が求められるだろう. 幅広い知識とそれをお客様との会話の中で素早く適切に取り出す. 「頭の良さ構成要素」の中では, 「素早さ」と「幅広さ」が特に求めれられるだろう. 深い話を好む方には, 十分な「深さ」も求められるだろう. (少し逸れるが「傾聴力」はどのようなお客様でも求められるとは思う. キャストの演説や持論を聞きに来ている客はそう多くないだろう.)
 後者の場合, 研究する分野に対する深い理解を持った上で新たな価値を世に生み出すことが求められる. 自身がメインに研究する分野はもちろん, 他の分野での研究成果を踏まえた上で研究を行うこと, いわゆる学際的研究が推奨される中, 他分野に対する知識や理解が求められる. 以上のことを踏まえると, 研究者では「幅広さ」と「深さ」が重視されると考えられる.

 ここでは極端な2つの例を考えてみたが, その他の職業で考えてみると更に面白いので是非考えてみてほしい. また, 職業だけではなくシチュエーションによっても求められる知性は異なるので, その観点から考えることもおすすめだ.

さいごに

 ここまで私が考える「頭の良さ」の定義や構成要素に対する仮説について述べてきた. あくまで単純化されたモデルなので, これによって全てが説明できるとは考えていない. 加えて, 今回は「頭の良さ」についてにのみ着目して話を進めたが, 人の能力や価値というのはより複雑で, 「頭の良さ」以上に測定が難しい. 例えば, 非認知能力は経済的成功や非経済的な幸せにも関わっているとされているが, 今回私が着目した「頭の良さ」とは違った観点の能力である. 「どのような能力が重要でどのように評価し, 伸ばすのか」という議論までしてしまうと, それこそ一つの本や論文になりそうなので一つ絞って話をさせてもらった.

 長々と文章を書いたが, この記事を通して「『頭の良さ』とは何か」と考えるきっかけや「人してより良く生きるためには何が必要か」, 「1つの指標のみで能力や人の価値を考えることの危うさ」などを考えるヒントになれば嬉しい. 私の中でも考えは変化していくと思うので, その都度記事として発信したいと考えている.

 最後まで読んでいただきありがとうございます. またいつか. またどこかで.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?