あたたかくて優しい人

久々に手紙を書く手は震えていた。
手紙を書くのなんて何年振りだろうか。
もう記憶にない。
ファンレターははじめて書く。
自分の書いた文字が、言葉が、好きな人に届くかもしれないと思うと緊張した。
事前にスマホのメモ機能に書いた文章を横目にわたしはペンを走らせた。



弟の命日から半年。
半年ということもあり毎月くる月命日とは比べ物にならないくらい気持ちは沈んでいた。
そんな日に一つ大きなニュースが入ってきた。
「髙地優吾(SixTONES)舞台初単独主演」
嬉しかった。
去年、星降る夜に出掛けようを観劇して以来、髙地優吾の舞台の報せがいつ来るのかと毎日毎日待っていた。
ついにきた舞台出演の報せ、そして初単独主演。
沈んだ気持ちが楽になるくらい嬉しかった。
報せを聞いてから舞台当落日までワクワクした。
もちろん不安な気持ちもあった。
これで当たらなかったら初単独主演を見れないんだと思うと結果が出てないのに落ち込む日もあった。
そして来た舞台当落日。
希望した公演が当たった。
髙地優吾の初単独主演を観れるのかと思うと幸せな気持ちでいっぱいになった。

以前の記事で「ミュージカル自体あまり触れてこなかった」とかいたが、舞台自体は好きだった。
当時好きだった芸人さんが舞台を主催する芸人さんでその芸人さんに憧れ、高校時代には演劇部に所属し、たまに観劇に行ったり、好きな舞台のDVDは買ったりしていた。
しかし推し役者さんはいなかった。
アイドルと兼任であれど髙地優吾ははじめてできた推し役者さんだった。
その髙地優吾の初単独主演舞台が見れるなんてまだ舞台を見ていないのに感動してしまった。



舞台について調べるとお手紙BOXがあることを知った。
迷った。
髙地優吾、SixTONESにどうしても感謝したいことがある。
去年の夏に出会って世界が綺麗だと思わせてくれたこと、そして弟との最期の会話のきっかけになったことへの感謝。
しかし当時の職業柄もあり、手書き文字を書くのが苦手であった。
わたしの文字はお世辞でも上手だとは思えない。
こんな下手な文字の手紙を書いて髙地優吾が読んだ時に果たしてストレスにならないか不安になってしまった。
でもどうしても伝えたい気持ちはあった。
感謝を伝えられるタイミングなんて次いつあるか分からない。
不安な気持ちは消えなかったが、わたしは手紙を書くことに決めた。


いざ手紙を書くと決めたら少しワクワクしてきた。
文房具屋さんなどで便箋や封筒、シールを選ぶ時間は今まで味わったことのない気持ちになった。
髙地優吾が好きだと言っていたモノを考えながら選ぶと少しドキドキした。

家に帰宅し、いざ書こうとペンを握る。
「髙地優吾さんへ」
この文章を書いて手が止まった。
漢字を間違えたら恥ずかしい、そもそも何を書けばいいのか。
その考えが頭の中を巡った。
机に置いてあったスマホが目に入った。
スマホのメモ機能を立ち上げる。
メモ機能に伝えたいことを書き出しそれを文章にした。
再度ペンを走らせる。
手紙を書くなんてもう記憶にないほど昔のことだった。
やはり上手とは言えない自分の文字に苦笑いしてしまった。
伝えたいことを書き終わり、確認のためにもう一度読んだ。
SixTONESに出会って世界が変わったこと、弟との最期の会話、今日までの日々のことを思い出したら目に涙が溜まっていた。
(どうか髙地さんにこの感謝が届きますように。)と願い手紙を封筒にしまい、オムライスのシールで封をした。
絶対忘れないように書き終わった手紙はすぐに鞄の中に入れた。


当落日から観劇をする公演日まで時間はあっという間だった。
会場に入りお手紙BOXを探す。
昔から「ななせは探し物が下手だね」と言われていた。
その言葉の通り会場内を何往復かし、お手紙BOXを見つけた。
こんなにわかりやすいところにあるのに何故見つからなかったのか。本当にわたしは探し物が下手だと笑いそうになった。
鞄の中から手紙を出す。
手紙を持つ手は緊張で震えていた。
手紙を書いた日のように。
そして書き終わった時と同じ願いをし、お手紙BOXに入れた。
(どうか髙地さんにこの感謝が届きますように)と。


そうこうしているうちに舞台が始まった。
舞台の上に立つ髙地優吾はあまりにも綺麗で美しい。
星降る夜に出掛けようを見た時に思った気持ちと同じ。
こんな綺麗な人が同じ人類なんてこの世界はすごいなと思う。
コロコロとキャラが変わるバディ。
物の見事にバディを演じる髙地優吾。
舞台に立っているのは髙地優吾なのにバディそのものに思えた。
もしもバディが実在してる人物だったらこのような青年だったのかなと思う。
素晴らしい舞台だった。
カーテンコール後の髙地優吾の立ち振る舞いも舞台役者そのものだった。
この舞台、そして髙地優吾という役者に出会えて本当に幸せな人生だなと思った。


観劇後、幸せであたたかい気持ちでいっぱいになった。
自分の書いた手紙がどんなに時間が経ってもいつか読まれるといいなと思った。



それから数週間後。
10/21に更新された優吾のあしあとを読んであまりにも温かくて優しくて思わず泣いてしまった。
わたしの書いた手紙が読まれたかは正直分からない。
それでもこんなにあたたかくて優しい人に出会えてわたしは本当に幸せだと思った。
こんなにファンを大切にしてくれて嬉しかった。
不慣れな手書き文字もはじめて書いたファンレターも出して良かった。
不安も後悔も気づいたら消えていた。

こんなにあたたかくて優しい人に出会えてよかった。
髙地優吾さんは誰に話しても恥ずかしくない最高で素敵なアイドルです。

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