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淋しさの理由の答え



※この記事は映画「1ST KISS」の感想記事と自分語りです。映画内容、パンフレットのネタバレをしますのでご注意ください。


「1ST KISS」の情報が出た時、正直見に行こうか迷った。
身内の死を取り扱った映画。
一周忌を終えたが未だに弟の死から立ちなおれてはいないので、この映画を見て取り返しのつかないほど落ち込んでしまったらどうしようと思った。
そんなことを考えるうちに公開日は近づく。
公開日1週間前に映画好きの知り合いから「あと1週間で1ST KISS公開だけど、SixTONES好きなら見に行くよね!?」と言われ(その考えはいかがなものか…)と思いながら「行くと思います。」と答えをうやむやにし、見に行くことを渋っていた。
公開日になるとTLが、1ST KISSそして松村北斗の演技を賞賛するポストで埋まってきた。
1ST KISSを見に行きたくなってきた。
平日は求職でいつ暇になるかわからない。
2月9日に時間を作って見に行くことにした。



松村北斗という役者は、なんと素晴らしい役者なのだろうか。
15年前の彼はちゃんと29歳で、現在の彼はちゃんと44歳。
顔に関してはおそらくメイクもあるのでそう見えるのもわかるが、わたしが感動したのは声色。
中年男性特有の声の低さや掠れをまだ29歳の松村北斗があんなに忠実に出せるのかと驚いた。
また映画序盤の全く会話のない朝食の準備。
相手のことに無関心なのがヒシヒシと伝わって非常に胸が痛くなった。
しかし終盤ではうってかわって最期の朝、カンナと同じベッドで起床し、愛おしそうにカンナを抱きしめる駈。
あのシーンだけで彼の15年の結婚生活は、愛おしく幸せなものだったと伝わった。


1ST KISSの感想だが、カンナの人生とわたしの人生が重なった。
何度もこのnoteに書いているがわたしは去年の1月に弟を亡くした。急死だった。
弟が亡くなる少し前まで喧嘩をしていて、口も聞かなければ連絡も取っていなかった。
仲直りから一ヶ月もしないうちに弟は天国へと旅立ってしまった。
ふと思い返すことがある。
もしもあの時、弟と喧嘩したまま仲直りをせずに永遠に別れたら弟を永遠に恨んだままになるかもしれない。
そうしたらいなくなってしまった後の愛おしい気持ちも寂しい気持ちも感じることはなかった。
そちらの方が幸せだったのかもしれない。と
しかしきっと仲直りしないことを選んでいたら序盤のカンナのようになっていたのだろう。
ずっと一緒だった弟に何も感じない日々。
苛立ちだけがわたしを埋め尽くすのだろう。
幸せになんかなれないんだなと思った。


1ST KISSを見て、一昨年の弟の誕生日に勇気を出して謝ってよかったと思った。
仲直りをして永遠に別れてよかったと。
きっと弟もそう思ってるのだろう。
駈を見るとそう思う。
個人に関わることなので詳しくは書けないが、弟が亡くなる前日、駈のような手紙ではないがわたしへの愛情を感じる行動をとった弟が確認できた。
駈の最後の手紙は、なんだか弟と重なって嗚咽が出そうになるのを必死にハンカチで抑えて泣いた。


映画が終わり席を立つ。
鑑賞前に心配していた「取り返しのない落ち込み」は全くなかった。
むしろ心は晴れやかであった。
見に行ってよかったと幸福感でいっぱいになった。
「喧嘩したまま永遠に別れた方が幸せだったのか。
仲直りして永遠に別れた方が幸せだったのか。」
幸せを求めこの問いの答えに酷く悩まされる時期もあった。
しかしこの問いの答えはパラレルワールドのわたしが知ってることであり、この世界のわたしが知ることは永遠にないだろう。
でも1ST KISSを見てこの問いの答えに近いものには気づいた気がする。


劇場を出ると横目に入ったのはグッズ売り場。
1ST KISSのクリアファイルがラスト一個だった。
普段グッズは置き場所に困るから買わない主義だ。
しかしラスト一個と聞くと話が変わってくる。
クリアファイルを手にレジへ向かうとカウンターには上映作品のパンフレットが並んでいた。
せっかくだしと思い、クリアファイルとパンフレットを購入して帰宅した。

現在わたしは母と弟が暮らしていたアパートに一時的にお世話になっている。
弟が使用していた部屋は、わたしが使用している。
帰宅をして弟が使用していた部屋で、パンフレットを読んだ。
1ST KISSのパンフレットの出来はすごく、作品で使用された小道具のレプリカなどが入っており、感動した。
インタビューを読みながらページを捲る。
最後のページは、駈の書いたカンナへの手紙だった。
駈の手紙を手元に欲しかったのでものすごく嬉しかった。
改めて手紙を読む。
手紙を読み終わり視線を上げると、一緒に暮らしてた時、弟と並んでゲームをしたソファが視界に入った。
頬に伝う涙が駈の手紙を汚さないように、そっとパンフレットを閉じた。

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