たびのはなし③
インドネシア、ソロという街に行った時のこと。
インドネシアの伝統的な布である、バティックに魅せられて、インドネシアへ飛んだ。
私が10日間滞在していた街、ジョグジャカルタから電車で約1時間のところにソロはある。
ソロの中にも、バティック工房が密集する地域が2つある。午前中、1つ目の地域にいき、その後昼食を挟み、2つ目の地域に行こうとしたのだけれど、どうしても道が見つからない。
観光案内所が通り道にあったので寄り、場所を聞く。にこやかに、わずかに知っている日本語で話しかけてくれたおじさん。道を教えてくれた。
お礼を言って観光案内所を後にする。ひたすら歩く。でも見つからない目的地。
段々雲行きが怪しくなってきた。東南アジアでよくあるスコールの気配を感じさせる雨の匂いも強まってきた。
途中、ベチャ、という自転車タクシーのおじちゃんにも、もうすぐ雨が降るよ、と雲を指差される。
分かってる、分かってる。こんな見ず知らずの地で迷ってるだけでも心細いのに、朝から歩き続けてクタクタだし、雨も降るだなんて最悪だ。
貧乏旅の私は、この手の乗り物にはいつも乗らずに歩いてしまう。今回ももれなく、甘えたい気持ちをグッとこらえてまた歩き始めた。
数分もしないうちに土砂降りの雨。バケツをひっくり返した、どころじゃない。大きな家のガレージのちょっとだけ高くなってるところで雨が弱まるのを待とう、と思った。
でも見る見る間に道路は水浸し。雨は止む気配もない。日本から持ってきたコンビニの折り畳み傘では到底太刀打ちできない豪雨だった。
仕方なく、泣きそうになりながら、冠水した道をビシャビシャと歩き、やっとの思いで近くのレストランに駆け込んだ。
雨宿りのために入ったけど、何も頼まないわけにもいかないので、コーヒーだけ頼んだ。
隣で食べてた、ちびっ子連れのママたちが、雨大変ね、みたいな目配せをしてきた。
本当に参っちゃいます、って、私も目配せをした。伝わったかな。
すごーく時間がかかって、1杯のコーヒーが出てきた。多分そのレストランでコーヒー1杯だけを頼むなんて、お店からしたら最悪な客だったはず。
運んできてくれた、私と同い年くらいの女の子に、目的地までの行き方を尋ねると、ここから歩くの??ここから歩くのは遠すぎるからタクシーを呼ぼうか?と、片言の英語で言ってくれる。
帰りの電車の時間も迫っていたし、雨も相変わらず降り止まないし、タクシーはお金がかかるから、結局諦めることにした。
そして、駅の方向を聞いた。近くはないけど歩けなくはないという。
この雨の中また歩くのは骨が折れるけれど、仕方ない。コーヒーありがとう、と言って勘定をお願いすると、
駅までなら私の友達がバイクで送るよ、って。
勘定もせずに、女の子は店の奥に行ってしまった。そうしたら今度は男の子を連れてきてくれた。多分そのレストランで働いている男の子。
彼のバイクに乗って!
そう言われ、感謝感激、、、
たった150円くらいのコーヒー代を払い(バタバタして余裕がなかったけど、チップとしてもっと多めに払うべきだったと後悔している)
初めましての男の子の後ろに乗せてもらう。
雨の中、濡れながら、初対面の私を駅まで連れて行ってくれた、、、
駅に着いて、本当にありがとう、と伝えると、OK.OKとだけ言って、すぐに引き返して行った。
インドネシアではたくさんの優しさに触れた。この出会いも本当に心に残っている。
日本にいると、基本的に時間に追われてたり、予定があったりして、見ず知らずの人を時間をかけて助けてあげることなんてなかなかない。
困ってる人に出会うことも少ないけれど、もし出会っても、次に時間が迫っていたら、そんなに時間をかけて助けてあげることはできない気がする。
人のために時間を使うことができる人は、本当に豊かだな、って思わされた。
インドネシアのゆるーい働き方が、人の優しさに反映されているのかな。
名前も知らない、顔ももう思い出さないけれど、本当にありがとう。助かりました。
異国の地で、ひとりでいるときに助けられると、本当に涙がでそうになる。
私も、時間に余裕を持った、豊かな人になりたい。そう思います。
眠れぬ夜にふと思い出したので書いてみました。おやすみなさい。