小原なな
中村さんが運転するタクシーの話
ちょっと不思議ちゃんなアズサとのお話
自己紹介的な、自分のことについて書いた文章をまとめた、 「小原ななってどんな?」と思ってくれた稀有なひとに、見てほしいマガジンです。
三部作「星クズたちのバレンタイン」をまとめました
たくさんお笑いを見ているので、 簡単なストーリーとおすすめの見るシチュエーションをまとめてみることにしました。 形式、時間、こんなひとにオススメ、ストーリー、感想を書いています。 安定してサンドイッチマン、東京03あたりが好きですが、 ナイツ・中川家・バカリズムも好き。 メイプル超合金や和牛も好きだった。 最近は四千頭身・ジャングルポケットなどのトリオも気になっています。 でも結局NON STYLEがいつになってもいつでも好き。 オードリーにもっとネタをやってほしい。 マガジンの画像はハナコント(ハナコ公式YouTubeチャンネル「ハナチャン」のコント)のオープニングのお洒落さに憧れて意識しました(似てはないけど)。
飯島源一の趣味は、動物園を巡回することだ。みなさんは動物園に行かれたことはあるだろうか。そして、飼育員よろしく「おや、今日はご機嫌ナナメだねぇ」「メイちゃん、五月にこっちの園に来てからもう半年だねぇ」などと動物たちに声をかける一般客を見たことはあるだろうか。飯島もそのように動物園をまわる類である。 「アンリちゃん、ちょっとこっちを向いてくれないかい。いいねえ、その感じ。」 ペンギンにカメラを向けながら飯島は語りかける。ペンギンが反応しているように見えるのが不思議だ。 「
僕はその日、暗闇をひとり車で進んでいた。何故なのか、何処なのか、そんなことはどうだっていい。 どこに向かっていたのか?そんなのはどうだっていいと言っただろう。僕自身わからなかったと言えば納得してくれるか? それでもとにかく進むしかなかったんだ。 だってそんな場所じゃあ立ち止まってじっと待ってたって何も変わらない。 他人に助けを求めようにも、自分の居場所も目的地もわからないようじゃ誰も助けに来れない。 後進したって結局いつかこの道を前進することになる、一本道だからね。 見
見つけられるのは火曜日だけ。捕まえやすいのは青葉台三丁目のバス停付近。乗り場の目印は「婦人服いとうや」。時間は午前五時からしばらくの間。かえで通りを北上する水色のタクシー。運転手の名前は「中村」。 みゆきが思い出タクシーの見つけ方について持ち合わせている情報はそれだけだった。 あとわかっているのは、「思い出タクシーに乗れば、自分の好きな思い出に会いに行ける」ということ…。 行き先を聞かれたら、「過去があるのは北ですか?」と返すのが合言葉。 そうすれば「中村」さんが思い出ま
あれは、 底なしの海のような、深く、暗く、溺れてしまいそうな愛だった 繊細なガラス細工のような、美しく、尖った、いまにも壊れそうな愛だった 砕け散る荒波のような、強く、激しく、圧倒されるほどの愛だった 棘をもつ薔薇のような、痛く、凛々しく、寂しげな愛だった どれもすべて愛しかったけれど、 それらは時に私の心を音もなく、刺して、刺して、刺していき、 そこから安らぎが漏れでるたびに、 虚無と孤独が訪れた ほんとうは、すみわたる青空のような、こうばしい太陽のような、やさ
「はい、できたよ!」 土曜日のお昼。今日はアズサがつくりたい料理があるというので一緒に家でご飯を食べることになっている。 「おいしそう!はじめてつくるパスタだね?」 「そう、ベーコンとキャベツのオイルパスタ!ミニサラダつきでーす」 ニコニコしながらアズサが料理を並べてくれる。 「欲張って具を大きめにしたら見た目が焼きそばみたいになっちゃった!」 アズサの明るい笑い声と美味しそうな料理。だれかと食卓を囲むとき特有の胸の高鳴りがある。 「じゃあ、いただきまーす!」 ふたりで
noteの記事は読むのに夢中になってその勢いでコメントを書いていると、 気づいたらスキをし忘れていることがありますね…
「ただいま~」 「なにかあったの?」 わたしがいつもより疲れていることを即座に察してくれたのであろう。見ていた映画を一時停止してアズサが心配そうに声をかけてくれる。 「いや、なんでもないよ。今日はちょっといつもより忙しかったんだ」 「ふーん、そっか」 わたしがそれ以上話すつもりがないとわかるとアズサはまた映画を見始めた。 部屋着に着替えたわたしはソファにいるアズサの隣に座る。 私たちはしばらく無言で映画をみていた。ご飯を食べているシーンでアズサがふと映画を一時停止して
前編から読む その翌日、2月15日。 「なっちゃん、おはよ!」 職場につくとマリコがさっそく声をかけてくる。 「おはよ~」 「じゃなくって!」 「なによぅ」 マリコが好奇心を全く隠さないのでナツキは思わず笑ってしまう。 「ふふふ、じゃなくて!昨日、おやすみだったでしょ!デートでもしたんじゃないの?」 「まあ、ね。デートではあったね」 「やっぱりー!どうだったのよ」 それには答えず、ナツキはあのチョコレートを机上に置く。 「えっ、てことは…」 「残念。フられました」 「
←前編から読む 目的地に着くとナツキは受付に向かった。 「あの、永谷香介の面会にきました」 「身分証をおねがいします。…ご家族の方?」 「いえ、友人です」 「あら、そう…」 驚くのも無理はない。 元交際相手3人連続殺人容疑の男に、「友人の女」が会いに来たのだから。なんのかんのと説明し面会許可を得る。 「面会には刑務官が立ち会います。携帯電話、スマートフォン等の音が出たり録音ができる機器類は持ち込み不可です」 そのほかいくつかの注意事項の説明を受けてしばらく待った後、ついに
永谷香介。 その名前を職場のテレビで偶然見かけたナツキは一瞬かたまってしまった。 「こーちゃん…?」 年は33歳だという。あのひとで間違いないだろう。 おもわず出てしまったつぶやきを同僚の平野マリコに拾われてしまった。 「えっ、なっちゃんの知り合いなの⁉」 ギョッとするのも無理はない。 「学生時代の友だちに名前が似ていて!びっくりしたけどよく見たらさすがに違った」 「そりゃそうだよね~。 そういえば、課長がなっちゃんのこと呼んでたよ、休み終わってからでいいって!」 「り
「玉子ってすごいよね」 アズサがそう話しかけてきたのは、ポストにたまったチラシをわたしが処分していたときだ。 「ん?」 手を止めて彼女の顔を見る。 アズサはわたしが捨てようとした出前寿司のチラシを手に取っていた。 チラシには「予約受付中!」という文字とすし詰めになったにぎり寿司の写真が掲載されている。 寿司か…。そういえばこの間ボーナスが入ったし、久しぶりに寿司をとってみるのもいいかもしれない。 「すごいって、なにが」 「いや、だってさ」 アズサがわたしの目をじっと見つ
顔が見えない、から丁寧に伝える。 顔が見えない、から傷つけたって構わない。 顔が見えない、から会ってみたくなる。 顔が見えない、から相手の画面の向こう側には興味が無い。 たぶんそれって、顔が見えないかどうかなんて関係ない。 あなたの心がそう思うだけ。あなたとそのひとがそこにいるだけ。 次またどんな風にあなたと出会っても、 きっとわたしは同じことを思うよ。 「あなたに会えてよかった」
日あたりのよい部屋。白い壁、白い天井。 窓ぎわのベッドで横になって目をとじる。 おおきな窓から差し込む日光がヴェールのようにベッドを包み込むのを感じる。 それはまるで天蓋のなかにいるかのような安心感。 太陽が高くのぼってわずか二時間程度、ぬけるような青空の日だけの、 特別な時間。 透明な空気を胸いっぱいにすいこめば、やわらかなあたたかさに体がみたされる。 ちいさな悩みや孤独が雪どけのように小さくなっていくのを感じるその時間に、やっと自分の居場所をみつけたような気持ちに
年末年始はPCから離れて過ごしており、新年っぽいものを先ほどアップしました。 今年はもっと時間をかけた質の良いものを投稿したいという理想がありつつ、「なんでもいいから書き続ける」ぐらいの目標のほうが自分にはちょうどいい気がしています。 本年もよろしくお願いします^^
「もう今年は大変な一年でした…」 ネズミがうつむきながらつぶやいた。 「ネズミさんまじで気の毒っす。しゃあないっす。」 サルがビール片手にネズミをねぎらう。 「今年は十二支新年会が中止になったぐらいだからね。 こんなことは僕が参加するようになって以来はじめてだよ」 タツが同調する。タツは今日集まった三人の中では最年長だ。 「まじっすか!それはやばいっすね」 どうせ自分の番がくるのは七年後。サルはそこまでの危機感がないようだ。 「サル、あんまり飲みすぎるんじゃないよ」
「今日は楽しかったよ」 一緒に遊んだ日の別れ際、彼が笑いかけてくれた。 私も楽しかったよ。 あなたの言葉が本当なら、すごく嬉しいな。 もう少し一緒にいたいって、伝えてもいいのかな。 困らせちゃうかな。 ディナーのお店に着いた時、一瞬黙っちゃってごめんね。 あまりに素敵なお店を用意してくれていて驚いただけなのって、 伝えた方がいいかしら。 わたしが似合うよって言ったあのセーター、 嬉しそうに買っていたけど本当にあなたの好みだった? 次はいつ会えるのかな?一日でも早く