理系の事業家がはじめての融資に向けて役立つ知識
前回はこちら
資金調達の視点で負債という選択肢があり、それがどういうものかということを示してきた。それでは、実際、負債調達(融資)の現場はどうなのかという点について、アーリーステージにいる理系の事業家が知っておいたら良いと考えることを経験を踏まえて提示する。
金融機関の視点
事業でも同様であるが、まず、相手の視点を考える必要がある。事業の場合は顧客であるが、この場合は金融機関となる。金融機関は、当然ではあるが貸したお金が返済されることが重要なため、事業として成立するかを見極めたいと考えている。アーリーステージにある事業家としては、事業への思いや成長のストーリーを語りたくなるところではあるだろうが、金融機関の審査の視点ではそれよりも確実な収益(またはそれを生む事業実績)を確認したいという点である。
成長<安全
具体的な視点としては、複数の有望な開発中の事業があるよりも、1つでも良いので黒字化している事業がある、または、黒字化していなくても、事業がまわっており、黒字化の見通しがあることがポイントになってくる。例えば、3つのコア技術の商品応用を事業として考えているとしよう。その場合、開発中の技術が3つあり、開発完了が間近で、技術的な優位があり、市場性も十分というよりは、1つの技術開発が完了、商品化して市場に投入済みのものがあり、それ以外に開発中のものが2つあるというほうが良い。逆に言うと、開発した商品・サービス(技術そのものが商品の場合もあるだろう)を用いた事業がない状況では融資を受けることは難しいであろう。
継続したコンタクト
とはいえ、審査する側も人間である。よって、事業家自身や運営する事業を気に入ってもらえれば、審査に影響することは少なからずあるであろう。加えて、先述の安定性にも関わるが、折に触れて(リスクが低減するイベント発生時)事業状況をシェアすることで、事業家自身の信用(少なくともコンタクトを取っている融資担当者の信用)が上がり、ひいては、融資が受けやすい状況になる可能性が高まることを追記しておきたい。継続して実施することは信用の醸成に資するということである。
最後に
ご自身の事業運営の状況を見据えて、まずは負債調達(融資)を受けられる可能性を考えて見られて、もし、可能性がありそうであれば、出資と融資のどちらで資金調達をするかについて考えて見られてはと考える。負債調達を考える際の一助となれば幸いである。