理系にオススメなファイナンス関連科目
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理系の実務家が事業を考える際およびその事業への投資を社内外に呼びかける際には、投資家の方法論を知っておくことが極めて有効であると考える。さもなくば、自身がせっかく巧緻な事業計画を作成しても方法論的に不十分であったり、瑣末な指摘(使う言葉など)で苦労する可能性があるからである。それでは、どのような科目を履修すべきか?大きくは、コーポレートファイナンス系と計量系に分かれるが、ここではその境を気にせず、実務家の視点で推奨科目を書き出したいと思う。(通学の暇などない、という場合は科目に相当する専門書を読まれれば良いと考える。)
・ファイナンス理論:これはファイナンスの全ての基礎となっているため、必須であると考える。内容的には、便益と費用の捉え方、リスクーリターンの考え方と統計量との関係、分散投資に関する考え方と理論的な発展が主な部分である。まず、ここまで抑えられれば良いと考える。
・コーポレートファイナンス:ファイナンス理論に基ついて、事業への投資とリターンに関する考え方、企業価値の算出方法、資金調達(負債か資本か?およびその特徴)とWC(working cash)の算出方法あたりが実戦ですぐに使えるとこかと考える。加えて、投資家と企業経営者の志向が異なることによる各種問題などについては、普段の事業への向かい方について考えさせられる理論として面白い。
・アカウンティング(会計):企業活動がどのように財務3表に表されるかについて知ることができる。もし、簿記を理解している場合、上の2つより優先順位は低
・アントレプレナーファイナンス:新規事業や起業時の資金準備の考え方や増資のタイミングによる企業価値の変化、契約と行動が経営に及ぼす影響などの知見をコーポレートファイナンスの知識ベースで展開される。もし、事業を立上げるためにMBAコース入学を考える場合にはこの講義がある場合は強く推奨する。
ここまで学び、実際に使えるところまでくれば、MBA通学の価値はすでにあったと考えられる。自身の研究開発成果を社会実装する事業計画を作り、実戦に応用し、さらに知見を深めることを強く推奨する。(実務家として、これらの知見をすぐに実戦で使わなければ、投入した努力は価値にならない。)
加えて、下記二つもとても有用である。特に、大量のデータが扱えるようになると、データをとってきて、簡単な分析をすることで、新たな視点で社会を眺めれるようになる。
・金融データ分析:統計を用いた、大量の金融データを処理し、有意な情報を引き出すことを学ぶ。古くから使われている最小二乗法から機械学習につながる一連の講義は、金融のみならず、いろいろな方面に応用可能である。また、世の中の統計解析がいかに不十分でミスリーディングかを見極める目を持つ事ができる。私は、電力関係の仕事をしていたため、実務ですぐに利用することが出来た。
・派生証券理論:数学を用いた(特に二次偏微分方程式)、各種派生証券(先物商品など)の値付け行う。意思決定の理論にリアルオプションという考え方があるが、それを行う基礎となる理論。リアルオプションを将来、自分の事業で使用したいと考えている方は必須と考える。
※講義の成績を気にする必要がない社会人(企業派遣ではないなど)の場合、できるだけたくさんの講義を取る方が知見が深まると考える。