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理系の事業家、はじめての融資|実際のところが知りたい

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理系の事業家が悩む資金調達にまつわるファイナンスの中で、他人から調達する事業用の資金として資本と負債について基礎的なことを示してきた。その中でも、あまり耳にすることがないと考えられる負債について数回にわたって記述してきた。今回はその最後として、融資や銀行の種類について、私の経験も踏まえて下記に示す。ここでの融資はスタートアップ向けを想定している。

融資の種類

融資には、事業の運営と投資に必要な資金を調達するものがある。前者は運転資金、後者は事業資金と言われる。運転資金は現在展開中の事業の運営に必要な資金のことを指し、具体的には在庫や売掛金などがそれにあたる。一方、事業資金は研究開発投資、設備投資や最近のプラットフォーム型事業では広告宣伝費も広くはこれにあたる。前回と関連して、事業が実際に展開している中で必要となる資金である運転資金は比較的融資を受けられやすい。一方、事業融資は資金を受けて新しい事を始めるため、その蓋然性の判断が銀行で難しく、他の事業で当該融資の返済ができそうなどが条件になることが多い。

銀行の種類

銀行には色々な区分方法があるが事業者の観点から3つに分けられる。大手銀行、地方銀行と政府系銀行である。
大手銀行:メガバンクを含む都市銀行が中心、各種信用補完がないと新規事業への融資は受けにくい。リスクが高い資金需要は子会社のVCが担っている。
地方銀行:いわゆる地元の銀行、最近再編が進み大規模化が進んでいる。特色がある銀行もあり、例えば京都銀行は戦後急成長した京都のスタートアップ企業群を資金面で支えた。地方創生の流れから、特色のある積極的な融資商品があることも。
政府系銀行:金融公庫などの政府系機関、政府の中小企業支援や企業支援の施策と相まって、資本性ローンなど、色々な金融商品が準備されている。
 この中で、理系の研究開発型事業で設備投資などの先行投資が必要な場合、資本と負債によるの資金調達に迷うような事象の場合、政府系銀行が一番可能性が高いと考える。リスクが高い状態では、大手銀行は自行関連VCとの役割分担のためこのステージでは融資が受けられず、地方銀行では事業を判断できないとの理由で融資に話に行きつかない。ただし、融資を受ける際には前回に書いたような事を準備する必要がある。補足的な情報ではあるが、地方銀行の場合、地域活性化の名目で特別な融資枠があったりするため、ダメ元(失礼)で聞いてみても良いと考える。

まとめ

今回はこれまでの内容をふまえて、実際の融資や銀行の種類を提示し、どこに案件を持っていけば良いかについて記載した。結論としては、政府系の銀行が良いという平凡な結論ではあるが、背景を知っておくと、自社の状況において資金調達を考える参考になるのではと考える。

 数回にわたって負債の特徴、プロコンと実務にわたる点を書いてきた。目的はあくまで資金調達オプションとしての負債を知り、理系の事業家がファイナンスの専門家(銀行出身者や経理業務のプロが必ずしもこの専門家には当たらない)を雇用する前に大きく株式持分を減らし、自社のコントロールを失う事を防ぐ一助となれば幸いである。企業内起業家にとっても、このようなことを知っていると、自身の事業計画の際に自社資本ではなく、他人から調達した場合のケースがあると事業計画の説得力が増し、将来のスピンオフを見据えることも可能ではと考える。最後に、借りすぎにはご注意を。

記事を書くときの素材購入の費用などにさせてもらえればと思います。