株式による資金調達の考え方(理系初学者向け)
前回はこちら:
最近、スタートアップの資金調達が話題になる。そこで、そもそも資金調達(~株式と交換)とはどういう行為か、良い点と悪い点は何かの基本的なことを理解することは事業運営に必要であると考える。
第3者からの資金調達は負債と資本の二種類がある。ここでの資金調達は株式会社の資本に対するものを取り扱う。株式会社の所有権は発行済み株式で分割されている。例えば、創業社長が自己資金100万円で会社を始め、1株を1円で発行したとしよう。その場合、創業社長は投資家としてこの会社を100%保有しており、経営者としてこの会社を経営していることになる。この企業が順調に業容を拡大し、企業価値が1100万円になったとしよう。そのタイミングで資金が必要となったため、10%の増資した株式を外部の投資家に売却したとする。この場合、創業社長は投資家としてこの会社の株式の保有比率 は90.9%に下がる。よって、資本への資金調達はこの増資を繰り返すことであり、創業社長の株式会社の所有する権利を減少させている。
良い点としては、負債と違い、調達した資金を返済する必要がない。よって、負債を異なる期間でいくつも借りている企業のように、返済に追われることはない。加えて、一流のベンチャーキャピタルや投資家から出資を受けることは、その企業(特に若い無名の企業)の名声の保証機能(ボンディング)を利用することができ、企業の信頼性が高まる。さらに、協業(したい)企業のCVCからの事業出資を受けると、協業関係が強くなり、事業の安定性向上につながる。これらは、割引率を低下させ、企業価値が高まる可能性がある。(下記参照)
一方、悪い点としては、負債のように金利を支払う必要はないが、株主から配当を要求されることがある。一番の悪い点は、自身(創業社長)の株式所有割合が下がり、自身の目指す経営を実施できない可能性が高まる。大株主は、取締役になることを要求し、経営に直接的に関与を試みるかもしれない。さらに最悪の場合、創業社長が追い出されるかもしれない。このように、経営判断を自由にできなくなることに留意し、持分比率については細心の注意が必要となるであろう。
上記はとても基本的な内容だが、役に立つ人もいるのではとの問題意識から投稿してみた。また、自身も資本について考えたことはなく、おそらく、理系でこのような知識がのない方が一般的ではとも考えた。最後に、資本にまつわる資金調達に関する経営者の言葉を列挙しておく。資本による資金調達と会社の所有は創業者にとって、とても重要な問題である。(おそらく、著作権はないと思うが、問題があれば削除する。)
・DMM 亀山社長:公開する(つまり出資を受ける)と色々なことを株主総会で言われて、やりたいことができなくなる可能性がある。資金需要がなければ公開する意味はない。
・星野リゾート 星野社長:当代で公開して経済的メリットを受けるのはご先祖に申し訳ない。非公開で後代にファミリービジネスとして引き継いていく。
・知り合いの経営者(匿名ですいません):イクイティー(資本~出資を受けて株式を割り当てると同様と考える)が地獄に落ちるなら、安定成長の方がまし。
(註:この経営者は理系の方であるが、自身の企業の所有構造と自由度に細心の注意を払っておられる。)