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負債のちょっといい話(税引き前の利息支払い)

前回はこちら

 リスクをとっている起業家が適切な資金調達(自身の株式持ち分比率の低下の最小化)を考える上で負債も選択肢にあることをテクニカルな部分を省いて示してきた。今回は、負債には資本による資金調達と異なる少し良いことがある。その点をできるだけ財務知識がない理系の事業家にもできるようにまとめてみる。

費用の税引前と税引後という考え方

 企業は利益が上がった場合、税金の支払いが必要である。よって、その費用の支払いが、税引き前か後かで負担が異なる。例えば、税率が40%であった場合、税引前に支払う100万円と税引後支払う60万円(40万円は税金として支払い)が同じ費用支出であることがわかる。よって、同額の費用であれば税引き前に支払う方が負担が少ないことは理解できるであろう。

負債は税引き前、配当は税引き後

 企業や個人は当然リターンが見込めるため(応援投資を除く)、負債や資本にお金を拠出する。負債には利息、資本には配当を支払う必要がある。ここで、利息は税引き前の支払いである一方、配当は税引き後の支払いである。よって、負債の利息の方が税金分の支払い負担が少ない。
※投資家は持ち株比率に応じた企業に対する権利や持ち株価値の向上も投資価値となる。

借りすぎはだめ

 それでは、負債をたくさん借りた方がよい思うのが人情だが、そうはならない。まず、負債を拠出する主体の銀行が負債比率が高すぎる企業にお金を貸すことを敬遠するだろう。また、もし貸し出した場合も、負債比率が高いと倒産リスクが高いということで利率が高くなるだろう。よって、ある比率を超えると資本による調達の方が安くなる。このあたりを深く知りたい方は、加重平均資本コスト(WACC)を調べてみると良い。下記書籍の15章も良くまとまっていると考える。(さらに知りたくなった方に向けて、原典に近いものを最下部に記載しておく)

まとめ

 今回は、ファイナンスにおける負債のコストの考え方の一端を示した。資金調達の際に、資本か負債かを考える一助になればと考えている。強調しておきたいが、負債の調達を勧めているのではない。あくまで、資金調達のオプションとして負債を理解し、より良い資金調達に活かせてもらいたい。
 最後に、資金調達は自身の企業の成長やオーナーシップをどうしていきたいかを決める重要なものであるため、十分な検討と最善の判断が求められる。

参考文献
Franco Modigliani and Merton H. Miller, Corporate Income Taxes and the Cost of Capital: A Correction, The American Economic Review , Jun., 1963, Vol. 53, No. 3 (Jun., 1963), pp. 433-443


記事を書くときの素材購入の費用などにさせてもらえればと思います。