理系のMBA取得(卒業)後の方向性
2021年の春入学を想定して、それぞれのタイミングで参考になるのでは?と思うことを中心に書いてきたこのマガジンも、おそらく最後のポストになるかと思う。最後は、やはり今後のキャリアの選択肢について書いてみる。私の同期や先輩方のお話を受けた事例から、私なりの理系のMBAのキャリアの選択肢を書いてみる。
内容が内容なだけに、完全な客観的な形にはならないかとは思うが、これから卒業に向けて論文のまとめや学習した知識を基にした事業計画の策定に格闘しているみなさまの筆休め(モチベーションアップ?)になれば幸いである。
現在の所属組織を強くする
一番の選択肢は、やはり現在の所属組織に戻って、いかんなくご自身の知見を活かして、活躍することかと考える。特に、企業派遣の学生にとっては、企業から多大な期待と支援をいただいていると推測され、それに応えることは極めて重要であろう。加えて、資源制約の観点からも、新しい組織に飛び込み0から始めるより、色々な資源を利用できる立場にある現在の所属組織で力を発揮することが第一選択肢になるかと考える。しかし、それには条件もあると考える。それは、学んだ知識が活きる業務に携われるかどうかである。どれだけ良い教育を受けても、実践なしにはホンモノにならず、定着もしない。そこで、まずはご自身の組織での業務に学習した知見が活きるか、または、その知見が活きる業務に携われるかの視点で考えて、組織に留まるかの結論を出すことが良いのではないであろうか。
企業家へのいざない
次の選択肢は、理系の知見を活かした科学技術イノベーションの実現のため、所属組織を変えて企業家を目指すことが考えられる。この企業家については、ご自身の事業シーズを他の組織に持ち込んで組織内企業家として事業化する方向性と新し会社を起業して独立企業家になる道がある。もちろん、この事業シーズは新しい技術に留まらない。理系ならではの市場やサプライチェーンの知識、既存技術を用いた他の事業領域における課題解決など広範な内容が含まれるため、事業機会は豊富に存在する。この選択肢が理系の人材がMBAの知見を実装することにより最も活きるかもしれない。
理系の知見を活かした銀行家
少し面白い選択肢として、企業家と対になるシュンペータ的な銀行家を目指す方向性もある。最近、起業を推奨し、失敗を受容する社会環境になってきているため、これから起業が増加してくると考えられる。そこで、これらを投資先として選抜する目利きとして理系の力が求められている投資銀行家になる可能性もあり、投資に加えて投資先企業の支援をハンズオンで行うことも厭わないベンチャーキャピタルリストになることも考えられる。ファイナンス関連(特にアントレプレナーファイナンス)の講義が面白いと思ったり、前に出るより、支援するほうが好きという人に向いている選択肢である。
少しマニアックな教員・研究者の道
最後に、特に理論に基づいた研究を課すMBA(私の卒業校はそうであった)の場合、それらの研究の面白さに「はまる」学生の方々もおり、それら学生はシンクタンクへ転職したり、大学への就職を目指し後期課程へ進学するという方もいた。特に、実証研究は数理統計を多用するため、数学としての統計が好きな方や機械学習などの事業に携わっている方が、社会課題の研究に興味を持たれた場合、すんなり研究者となられる方もおられるような気がする。ただし、金銭面でのリターンを重視する場合は、この選択肢を選ぶことは十分に考えてからが良いと思う。
まとめ
知的には楽しく、時間的に苦しい(苦しんでいる途中)、不案内な学業と通常業務の両方にチャレンジしたリワードとしてたくさんの選択肢が理系のMBA学生には開かれている。もちろん、個々人の努力と実力に依拠するものではあるが、社系の学生が理系を後追いで学ぶ難しさから同様の知見を得ることが比較的困難であることから、理系×MBAには若干の「希少性」があり、市場における優位性はある。
私のおすすめとしては、(国内大学)MBAホルダーをてこにより待遇の良い企業への転職というよりは、学んだことを使い倒すことにより、理系ならではの事業を通じて社会的な価値を還元することである。それにより、社会貢献に加えて、ご自身のキャリアにとってもプラスになると考える。
私も皆さんと同じ理系×MBAとして、縁があり教員という道を選択し、日々試行錯誤ですが、少しでも社会に科学技術イノベーションを実現できる素養を備えた学生やそれらを起業や企業による事業化を通して実現する学生の育成に取り組んでいます。私たち理系の知と妄想の力が事業という形に結実すれば、日本をより良い未来へ変えていけるのではないか?と信じております。一緒に、頑張っていきましょう!
Bon voyage!