投資家の基本的な考え方|分散投資入門
※コロナワクチンにアセトアミノフェンで対抗したが完敗して、先週は更新できず
前回はこちら:
以前、事業資金と貸借対照表の関係の概要をポストした。この中で、貸借対照表の右側が事業資金を供与する出資者リストであると説明した。言い換えると、出資者リストは企業のファンリスト(色々なタイプのファンがいるが)であり、リスクマネーの供給者である投資家は強い好意を持つファンといっても良い。そのような投資家の投資に対する基本的な考え方を知ることは、資金調達が必要な理系の企業家や企業内起業家にとって意味があると考える。今回は、投資家の基本的な考え方の分散投資(詳細は専門書にゆずる)について説明する。
投資家が考える投資リスク
投資家は投資リスクの低減を重視する。個別企業への投資リスクには、市場リスクと個別リスクがある。前者はその証券が属する市場のリスクである。例えば、ある企業が東証一部に上場していたとしよう。その場合、東証一部の株式全体が変動した場合、それに応じて変動するリスクである。後者は、各企業の固有の要件によるリスクである。例えば、製薬企業が薬品の開発をしていたとしよう。この場合、その企業の薬品の開発の成功確率は同業他社と関係が薄く、その成否により市場と関係なくその企業の業績が変動することである。それでは、投資リスクの管理を投資家はどのように考えているのであろう?
投資リスクへの対応
投資リスクへの対応は、多くの読者の直観通り(だと思う)、複数の企業に分散して投資することである。ポートフォリオという言葉を聞いたことがあるだろう。ポートフォリオは複数の書類などをまとめるものを意味し、投資ポートフォリオは色々な投資状況を示すと考えてよい。この投資ポートフォリオ中に投資先が複数社あることで、投資リスクの中の固有リスクを低減できる。これを低減する代表的な方法は二つである。まず、投資先を増加(つまり分散)させることである。理論的には分散すればするほど固有リスクが低減し、市場リスクまでリスクを低減することが可能である。次に、外部環境の変化(景気など)に対して、異なった値動きをする投資資産を保有することである。
※投資の世界には、「卵(お金)を1つのバスケット(投資先)に入れるな」という格言がある。
分散投資の考え方の応用
まず身近なところでは、資産運用への応用例がS&P500や日経225などのインデックス投資ファンドである。これは市場内の多数の企業へ分散投資し、固有リスクを機械的に市場リスクに近づけることを目的としている。個人では同様に分散投資ができないため、このような投資ファンドを購入で分散投資によるリスク低減を個人も享受できる。次に、個人の証券投資については、例えば景気敏感株と生活必需品やインフラ企業の株式を組合わすことでリスクを低減した投資ポートフォリオになるであろう。最後に、事業会社においても定常的に発生するメンテナンス事業と新規の案件獲得で事業収益が向上する事業を組合わせるなどが考えられる。最近話題の経済理論である「両利きの経営」は、既存事業と新規事業の組み合わせという意味で広義のポートフォリオ経営ともいえる。ただし、このリスク管理型の事業ポートフォリオを進めすぎるとコングロマリットディスカウント*という別の問題が提起されるのでご用心を。
*高収益の事業から低収益の事業への資金移転や多岐にわたる事業の意思決定を経営者が効率的に正確にできないことによる企業価値の低下
まとめ
投資家の基本的な考え方である分散投資について興味を持っていただけたであろうか?ポートフォリオによるリスク管理は適用先が広いため、通常のちょっとした意思決定の際にも応用してみてほしい。次回は、本内容を基礎にした起業家と投資家のリスク/リターンの考え方の違いによる期待収益の相違を理論的な視点を加えて説明したい。これを理系の企業家が理解し、現在価値の考え方と組合わせることができると、悪い「大人」に大切な会社の証券を安値で収奪されることが低減できるはずである。
追記)大企業でお勤めの方は「事業ポートフォリオを再編してリスク低減を図る」ということを耳にしたことはあろうか?その際、それらの事業が異なるリスク構造(相関が小さい)か考えてみてほしい。結構、共倒れの事業領域に事業を拡大しリスクの低減ができていない事象がある。そのような時には、本内容(基礎的ではあるが重要)を応用して、経営陣に提言してもらいたい。