ちょっと名前が長い「思い出の料理」
結婚祝いに頂いた、料理本があった。
その料理本が、私たち夫婦の思い出の料理
『カレーハニーマスタードチキン』との出会い。
それは、料理と呼ぶのも申し訳ないほど
技術もセンスも不要なレンジ料理。
鶏もも肉にフォークで穴をあけ、おろしたニンニクと塩をすりこみ、カレー液に浸し、レンジでチン。私達はニンニクが大好きなので、たっぷりと塗る。
本の中の数あるレシピの中から、繰り返し何度も作ったのは、その料理だけ。
そして簡単だけど、時短なわけではない。
途中で肉を裏返したりしながら、30分近くレンジで加熱する。
そのあいだ、どんどん広がるカレーの香り。
狭いアパートの中に、あっという間にその強烈な香りが充満していく。
そのパンチの効いた味が、とても私達好みだった。
そして食べ終えた後も、その強烈な匂いは部屋に残り続ける。なんなら翌日まで余韻が残る。
そんな香りと味の、強烈な記憶。
新婚当初から何度も作った思い出の料理だ。
子供が生まれてからは、みんなで食べられるものを優先しがちで、あまり作ってこなかったのだけど、久しぶりに作りたくなった。
私としての思い出の料理はこれだけど…夫はどうなのか気になり、答え合わせをしてみることにした。
「思い出の料理といったら何?」
「かぁちゃんの作った餃子とー、ばぁちゃんの作った・・・」
私の聞き方が悪かった。
そのあと無事に私のチキンも登場し、ホッとする。
少年時代からの思い出の味に、ちゃんと夫婦の味も続くことが出来ていると分かり、じわじわと喜びが込み上げる。
その後も夫の回想は続き、答え合わせは済んだものの、楽しそうに語る姿を眺めていると、なんだか幸せな気持ちになった。
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珈琲次郎さんの企画に参加させて頂きました。
ありがとうございました。