御神苗しではなくフジバカマ
何時だったか、誰だったのだろう、記憶の中で忘れられずに残っている話しオミナエシ。
お防様が話していたのかしら ? どこぞのじっちゃんかばっちゃんだったかも、全く覚えていない。
野の花は仏様が一番喜ぶ花、その中にオミナエシの花があった。
今を盛りに道端に咲いている、取り留めて美しい花ではないが、この花が咲きだすと仏様が喜ぶ花が咲いているわ、どうしましょう、等とツイツイ思ってしまう。
どうしましょうと言っても、どうしょうもない、御神苗し(オミナエシ)瞳の端に捉えて流れ行く風景。
亡き父との喧嘩・・・一方的にこちらが悪い取っ組み合い ? かな(笑)を思い出す。
10歳頃の記憶は何が原因で父に殴りかかって行ったのか覚えていない。
腕力で勝てる筈などなかった、山で木を切る仕事(ヤマゴ)をしていた父の腕力は、ものの見事に私を壁に跳ね飛ばす。
何度も掴みかかって、一発でいいから父を殴りたかった記憶が思い出される。
幾度も同じ様な喧嘩を吹っかけては壁に叩き付けられた。
心に誓った、いつの日にか父をぎゃふんと言わせてやる、やらねば気が済まない。
午前に喧嘩吹っかけるが、飛ばされて壁に激突、痛いし悔しいし、ギャーギャー泣いて家出をした。
都会ではない、ビルの代わりに野山しか周りにない、山の中に家出、勢い勇んで来たけれどお昼になりお腹が空く、家族は炎天下の中黙々と牛に食べさせる牧草を、裏返しにして乾燥させている。
私の家族は皆冷たい、何故探しに来ない ? 皆人非人ばかり。
今迄誰一人心配して迎えに来てくれた事がない。
スゴスゴ帰りたくない、まだ悔しくてならない、木に登り様子を伺う。
作業している所迄は丘の様な山ひとつ挟んで、見つかる筈がないと思い込んでいた。
結局放ったらかされ、夕方スゴスゴ家出取りやめて帰って行った。
今思う滑稽な家出、ぎゃふんと言わせたかった父に御神苗しを差し出して、にっこり笑っている私に、父はガハハーと笑い
「俺に勝とうなんて100年早いんだよ、山でモソモソ動いていたのはお見透視、考えが甘〜い」
などと言って笑うのかしらね。