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諦めて
870 文字
見上げる空は濃霧に閉ざされ、辺りの風景はぼんやりと薄墨の世界、足元をセキレイが素早く横切った、地面をパタッピトッと力なく飛ぶ蛾を見つけて捕らえる、鱗粉が微かにセキレイのくちばしの辺りに見える。
この濃霧は晴れる朝の濃霧、走り出した車が濃霧を切り裂いているように感じる。
昨日の雨で至る所が、特に草達がビチョビチヨ、スニーカーや短い靴では道草が出来ない、スポッと簡単に足をいれて履ける雨用の靴を買った。
道草ルンルン、蛇行運転で路肩に引きずり込まれない様に走っていると、遠くの山並みの下は濃霧が生きているようにうごめいている。
稜線から上を見つめた、空は白い雲の隙間から水色がおはようございます。
やっぱり晴れるんだわ、いつも諦めている晴れた一日、言葉にしない、心の奥に沈ませて触らない様に蓋をしっかりして、いつかは晴れるだろうと言い聞かせていた青空が見~え~た~。
去年蜘蛛の巣が数え切れない程あった場所、今年は数えられる位しかない。
原因は去年までさかのぼる。
子育て中のノビタキが蜘蛛の殆どを雛に運んだからである。
去年蜘蛛の巣が朝日に輝きキラキラ雲の巣の海原を写メする為車を停めた、ドアをバタんと占めて私はウロウロチョロチョロ、あら~綺麗~こっちの蜘蛛の巣も綺麗などと写メしていて気づかなかった、目の高さに私から一メートルも離れていなかったのに、ノビタキは微動だにしないで細い枝にとまっていた。
私はあの時奇跡が起きたと思い込んでいた。
なんの事はない、ただノビタキは蜘蛛をジーと、出て来る蜘蛛を待っていただけ、可愛い雛の為、そして蜘蛛はいなくなり、蜘蛛の海原は壊滅してしまった。
そんな場所、朝日が木々の間から見える、7月、3回目位の朝日よ~、ありがたや~とひれ伏して~手をすり合わせて拝む~ (笑) やりません。
そんな朝日をチラッと見て写メ、僅かに蜘蛛達も生き残り立派な巣を作っていた。
蜘蛛の減少で今年はノビタキ、別の場所で雛を育てたのね。
自然界の営みに心の瞳をゆっくり閉じて無限の宇宙へ漂う。