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愛猫ビーと犬

  1168文字    ヤレヤレ~1

 チラチラ雪が降っている朝、これから3日間降り続くという地元の天気予報、心が生活面においての困難予想を急激に想像し始めシルバーグレーの空を見上げる。
 雲は旅をしないという事を天気予報専門の方がテレビで話していた事を思い出す。
 雀が10日振りに花畑に設置した餌を食べに来ている、風がなく湿り気のある空気は春を知らせ、上空の雲は威圧感たっぷりに締め付けを強めて居る様に感じてしまう・・・心の狭さを吹き飛ばす。

 家の前をわが物顔でトロトロと歩いている名前をビー(bee)という私の可愛い猫がのどかな夏の空を満喫している。
 
「猫可愛いので貰って来たんだけれど・・私無理みたいなの、お願い引き取ってもらえないかしら」

「エーッ 居候しているから相談してみるね」

 アトリエを建ててやるからと言う父の嘘にまんまとハマリ、事情があり居候となってしまった私には無理だと思っていた。
 居候先の友に相談すると即決で OK だった。
 これには私も驚いてしまった、内心では口実が出来ると胸をなでおろしていたからである。
 物事に動じない気質を持ち何処に行くにも私の肩に乗り辺りを見回していた、ドアの開け方やポットの上を押すと水が出る、一緒に電車に乗りジャズ喫茶では帰りたくなると扉の取っ手に飛びつき開けて帰りたいと意思を伝えて来た。
 そして羽田から飛行機に乗り一人と一匹は北の地に降り立った。

 父の友人が1トン車で荷台に2歳になる大きなハスキー犬を乗せて来た。
 このハスキー犬は私の可愛いビーを見るなり荷台から飛び降り、ビーに向かって猛攻撃をしょうと走り出したのである。
 ビーを見るとその事に気づいてはいない、ノタノタあらぬ方向を見ながら歩いている。
 猫と犬の距離は16メートル程、私はバケツに水を溜めようと水道まで走る、間に合わないかも知れない殺されてしまう、水をかければ犬の興奮が治まるはずという希望にすがった。
 蛇口を回そうとしたその時、実家の犬が物凄いスピードでハスキー犬に飛び掛かって行ったのである。
 体長はハスキー犬の半分もない雑種の小型犬、到底勝てるとは考えられない、水を持ち走る私、ハスキー犬の飼い主も走り犬を叱り付けている。
 犬の毛がそこら辺に飛び散る、手がつけられない状況が繰り広げられているにも関わらず、ビーは悠々と振り向き「どうしたの?」と言う目をしている。
 飼い主は空砲を鳴らし私は水をかけて何とか収まった。

 ビーはいつもこの実家の犬・・へそ曲がりの所があり嬉しいと唸り声をあげ威嚇としか思えない表情をする、チビという名前の犬に擦りついて一緒に何処かに出かけていた。
 このチビはミカンが好きで丸ごとやると鼻で器用に皮をむきみかんを美味しそうに食べる犬だった。
 犬が猫を助けたのを目撃した私はとても嬉しかった。
 チビ・・グー ね  ビーよ お前は幸せ者ね。
 
   続きます
 
 
 
 
 
 


 

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