もぐらのトッポス(草稿)
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「ねえ~お爺ちゃん、またトッポスのお話し聞かせてよ~」
「又聞きたいのかい ? 」
「うん 聞きたい、目が見えていたご先祖様のお話しは、何度聞いてもワクワクして来るんだもの」
「あっ僕も聞きた~い」
「私も聞きたい」
「何度も話して聞かせただろう、お爺ちゃんは疲れて眠いし話疲れたよ」
「えーっ じゃ~トッポスが見た色んな物だけでいいよ」
もぐらのお爺さんは三匹の子供達に話しをせがまれて、内心は嬉しくてたまりませんでしたが、眠いだの、疲れたや話したくない素振りで少し悪戯をしながらゆっくりと話し始めました。
「何処からがいいかな ? 」
「ぜんぶ~」
「全部・・・か ! さっきは見た物だけでいいと言ったではないか」
「僕はそんな事言っていないもん」
「私も~ 」
「ホーッ そんな事、どの口が言ったんだ 嘘言うと目が見えなくなるんだぞ」
「お爺ちゃん目がみえるの ?」
「うん そうだったな、悪い悪い なんとなくボヤッと光りが見えるだけだったよ」
「光りが見えるの ? 」
「そうだよ、でもお前たちはもう少しお勉強してからでなければ、ボヤッとした光りも見てはいけないんだよ」
「え~つまんな~い」
「まあ 今日はボヤッとした光りを見る為のお勉強もする事にしょうか」
「は~い はい はい」
3匹のもぐらの子供達は、今か今かとお爺ちゃんの前でお行儀良く座り、聞き耳を立てています。
「遠ーい昔のわしらのご先祖様は皆、目がみえたんだよ、その中にトッポスというご先祖様がいたんだよ、そのトッポスというご先祖様はある時土を掘っている時に、光る石を見つけた」
「うん そこはいっぱい聞いた」
「シッ 黙って聞かないとお爺ちゃん話してくれないわよ」
「ごめなさい 手で口をふさぎま~す」
お爺ちゃんはそんな子供達が可愛いくて仕方がありません。
「いいかい 良く聞くんだよ」
トッポスはコロンと出て来た小石が何故か気になり、何故気になるのか不思議に思いながら、巣穴の光りがわずかに入る所に置いたまま、すっかり忘れてしまいました。
ある日、目覚めたトッポスの巣穴は虹色の光りで満ちあふれているではありませんか。
トッポスは光りの海の美しさに、ただ茫然と我を忘れて見入ってしまいました。
薄い水色や黄色、桃色、紫色が波打ち帯となり巣穴の中を揺らめいています。
すると今度は赤色や濃い紫色、緑色に変わって行きます。
そして光りはだんだんと色を無くして消えてしまいました。
トッポスはようやく我れにかえり、今のは何だったのだろうと考えましたが、全然わかりません。
そうだ、又、今度色んな色の海が見える迄ここにジッとしていると、又見れるかも知れないと考えました。
夜を5回数える位の日にちが経っていましたが、あれ以来光りの海は出て来ません。
トッポスのお父さん、お母さん、弟、妹、そして友達も心配で代わる代わるトッポスの様子を見に来ては、食べ物を置いて帰って行きましたが、トッポスは何も食べずに石を眺めているだけでした。
つづく