与えたものは返ってくる

いつも朝早いので、裏口から入り、守衛さんに挨拶をし、鍵をもらい、新聞をとってから、1台しか動いていないエレベーターのところに行く。

この時間に出勤している人も意外と多くいて、7階が職場の人とよく一緒になることがある。挨拶はこちらからはするが、あまり、表情も変えず反応のない人だった。

昨年の末だったか、エレベーターの前にその職員が立っていた。おそらく、直前にエレベーターを使う人がいて、待っていたのだろう。私が角を曲がったのを、その職員はわかったと思う。

にもかかわらず、エレベーターが開いた瞬間、すぐに乗り込み、出発したのだ。

一瞬、「え!?」と思ったが、もしかしたら、自分もそうしてしまうかもなあと思い、7階で止まったエレベーターが1階に戻ってくるのを待った。

その次の日だったと思う。

今度は、逆のシチュエーションが。

私が待っていて、彼が後から来るという絶好のチャンス。

私は「待ってますよ!」と声をかけ、エレベーターを開けて待った。当然、乗ってくるときに、彼は申し訳なさそうにし、「ありがとうございます」を声をかけてきた。なんだ、挨拶できるじゃないか、と思いながら、心の中であることを思っていた。

もし、次に、また、逆のパターンになったとき、彼はどうするのかと。

それが、今日来たのだ。

私が角を曲がった瞬間、エレベーターの前で待つ彼を確認した。少し小走りに向かうと、やはり、その途中でエレベーターが開いたのだ。

すると、彼は「開」を押して、私を待っていてくれた。

「すみませ~ん、有難うございます」「おはようございます」と声をかけると、彼も「おはようございます」と返してきたので、「今日は寒いですね~」とさらに一言かけると、彼も「いや~、ほんと、寒いですね」と返してきた。

彼が7階で降りる時、再度、お礼を言い、エレベーターを閉め、9階に向かった。

彼がどこの課で働く職員か知らないし、きっと、この後も、話をすることはないだろう。

でも、今後、間違いなく、私の姿を見たら、エレベーターが来たとしても、待っていてくれるだろう。

今朝はいつもより寒く辛い朝だったが、一気に温かくなり、今日もまた、気持ちよく1日が始められる。

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