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一生追いつけない憧れ

 高校時代に一緒にマネージャーをしていたナツと、先輩の結婚祝いにタオルを選んでいた。周りが結婚していく中で、自分の婚期を気にするナツは、気になっていた新潟の男性を捕まえて、絶賛遠距離2ヶ月が経ったらしい。私と違って地元を離れたくないようで、新潟に行くのを渋っているが、
「久しぶりに心から好きだなって思える」
と言っていたので幸せそうで何よりだ。
「そっちはどうするの?」
私?まだ何も決めてないよ、焦ってもないよ、決まってもインスタでは言わないよ。

 悩んだ末、ピンクと青のフェイスタオルにした。高校時代のマネージャーの先輩が結婚1周年を迎えて、お家に招いてくれたのだ。久しぶりの先輩とカナダ人の旦那さんに会えることへの楽しみは、それはそれは大きなもので。馴れ初めを聞きたいね、と話しながら電車に揺られた。

 久しぶりの先輩はあの時と何も変わらず、カナダ人の旦那さんは"トリちゃん"の愛称で呼ばせていただいた。
「人見知りだけどそのうち会話に入ってくるから」
と先輩に紹介されたトリちゃんは、私たちが思い出話をしている間、キッチンでずっと夕飯を作ってくれていた。そのうちいい匂いがしてきて、トリちゃん特製ラザニア、ベーコンポテト、アップルパイ、綺麗に盛り付けられたチーズとフルーツが登場した。

「トリちゃんは料理オタクなんだよね、あと地図」
壁には英字の地図が貼られている。スキー、山登り、サーフィンと多趣味なトリちゃんと、リモートワークをこなすインドアな先輩の話。たまに2人で話す時の英語がかっこいい。

「2人の馴れ初めを聞きたいです」
会話の流れを読みながら話題を振ろうと悩む私とは対照的に、ナツは直球である。私はコーヒーとアップルパイをお供に、聞き手に回ることにした。
「この人と結婚するなって思ったんだよね」
「でもほんっとに大変だったよね」
「国際結婚はやめときなってみんなに言ってる笑」
そんな話を交えながらも、幸せを分けてもらえた気分だ。

 弱小高校の野球部で、私たちはよくふざけてよく怒られていた。好きな犬種の話、バレンタインに手作りのチョコを作ってきた選手、全て断片的だけど、総じて楽しかった。先輩嫌いな私が、高校の先輩だけは「可愛がられてぇ〜」と思ってしまう。色んなことにアンテナを張っていて、語彙が豊富で、何かを相談すると図星をつかれる。素敵でかっけぇんです、私の先輩。

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