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2024,7,29

今日は恋人の誕生日だ。日付が変わる頃にお風呂に入ったから、髪を乾かしながら片手でLINEを打つ。「お誕生日おめでとう🎉」。

「夏に合う香水を探そう」と彼が決めたのは7月に入ってからで、それまでは物欲の無さゆえにうんうん唸っていた。「サングラスも良いけど、香水も欲しい。あ、ヘッドホンは自分で買う。高いからね」。

13:00に新宿で待ち合わせたものの、私が5分遅刻。いつも中央東改札で待ち合わせで、言わずもがなそこで待ってくれているはずなのに、電車を降りた時に受けた熱風と人混みに嫌気がさして「何改札だよ」と八つ当たりのようなLINEを送ってしまった。合流した瞬間、深々と頭を下げる。こんな時も、口を尖らせ「いいもん」と拗ねる振りをしたあとすぐに許してくれる。

ひとまずルミネエストのスターバックスで一息。暑い中道で行き場を考えるのは、2人ともまっぴらだった。彼のお母さんが、ドリンクチケットを2枚くれたらしい。ありがたく期間限定の桃のフラペチーノをいただく。彼はホイップなしで、私はホイップあり。生クリームが少し苦手な彼は、「世の中の生クリーム、全部味のしない生クリームなら良いのに」と言うが、私はあるものはあるだけあった方が良いという貧乏性のため、値引なくホイップがなくなることが許せない。


私が好きな香水を嗅がせに、Aesopへ向かう。前にバイト先にいたアメカジ系の人が使っていてメモしておいたものだ。海の磯の香りから柔らかい植物の香りへ変わる。彼も気に入ってくれたようで、腕につけてもらっていた。

次に新宿の伊勢丹へ。入った瞬間、ジュエリーや化粧品が並ぶ壮大な広間に目を奪われる。地元の伊勢丹の閑散とした、あるいはアットホームな雰囲気と対照的で驚いた。Jo Malone LondonやMaison Margiela、その他名前が読めないブランドをざっと1周し、色々な香りが混ざった鼻がずっしり重く感じて店を出る。

ルミネエストのShiroにも立ち寄り、鼻をリセットしようとコメダ珈琲で一息つく。一日で2回もチェーンのカフェに立ち寄るのは初めてで、ちょっと贅沢な気分になる。コメダ珈琲は2人の大好きスポットで、どの店舗も気兼ねなく入れる。直角のくせにふかふかなのが良い塩梅なソファの座り心地は何物にも変え難い。

結局、Aesopのものが気に入ったらしい。また店に戻る。紹介してくれた店員さんがいると気まづいとか気まづくないとかを話しながら横断歩道を渡る。店に着くと、担当してくれた店員さんがいなかった。ほかの店員さんに、「どのスタッフが対応しましたか」と聞かれたが、名前を覚えておらず、特徴だけ細かく伝える。もしかしたら歩合制なのかもしれない。愛想良く、詳しく説明してくれたお姉さんが報われないのは困る。

夜ご飯は水道橋でとんかつを予約していた。誕生日プレゼントは散々迷っていたのに、夜ご飯は即答でとんかつ。一ヶ月前から決まっていた。敷居が高いお店かと思えば、お客さんはカジュアルな格好や仕事終わりのサラリーマンが多く、安心する。「ちゃんとしたところだと怖いから」と、2人とも襟付きのシャツを選んできていたのが滑稽だ。


とんかつは絶品で、ご飯や漬物などが沢山あったから、胃をパンパンにして店を出る。ほろ酔い気分で歩く。東京ドームシティのジェットコースター越しに夕暮れの空を見上げる。

1年前はほとんど関わりがなかったのに、こうして誕生日を祝い合える人になれるなんて思いもしなかった。人生は面白い。生き急がなくても、自然に変化は訪れる。そんな毎日を愛したい。帰路に運転再開見込がない中央線で筆をとる。

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