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中学受験における豊洲

平成30年間で急変した東京の街はいくつもあるが、個人的に豊洲はその典型例なのではないかと感じる。2月第1週は中学受験シーズンであり、中学受験という切り口から豊洲の性質を記述したい。


1. 豊洲の概要

豊洲はどんなところなのか、豊洲の概要についてウィキペディアには以下のように記述されている。

臨海部の埋立地であり、もともとはIHIや東京ガスなどの工場が立地していたが、都心へのアクセスの良さから再開発により、タワーマンションが林立する超高層ビル街へと発展した。また、IHIを筆頭に、三井住友カード東京本社、NTTデータ、SCSK、住友ゴム工業東京本社、野村アセットマネジメントなど豊洲に本社を置く企業も多い。

ウィキペディア. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E6%B4%B2. 参照2025/02-02.

つまり、元々何もなかった埋立地に工場が建設されたが、次第に再開発がなされ現在の姿になったということだ。個人的には豊洲といえば、真っ先にららぽーとが思い浮かぶ。今でこそ臨海部には、ダイバシティや有明ガーデンなどもあるが、ららぽーとは2006年開業であり、現在の臨海部のあり方を決する契機になっただろう。そして、東陽町・門前仲町・亀戸に比肩するかそれを上回る街へと成長した。以下に有楽町線豊洲駅の乗降人員を掲載する。

営団・東京メトロ豊洲駅の乗降人員
※1988~2000年度のデータは便宜的に乗車人員に2倍したものを乗降人員として使用

1988年(昭和63年) 24,976
1989年(平成元年) 33,852
1990年(平成2年) 38,220
1991年(平成3年) 41,174
1992年(平成4年) 49,802
1993年(平成5年) 56,548
1994年(平成6年) 54,898
1995年(平成7年) 56,558
1996年(平成8年) 53,962
1997年(平成9年) 51,890
1998年(平成10年) 53,124
1999年(平成11年) 52,088
2000年(平成12年) 52,363
2001年(平成13年) 53,712
2002年(平成14年) 51,161
2003年(平成15年) 50,588
2004年(平成16年) 51,190
2005年(平成17年) 58,197 ※2006年3月27日ゆりかもめ延伸
2006年(平成18年) 84,470
2007年(平成19年) 110,635
2008年(平成20年) 122,789
2009年(平成21年) 131,069
2010年(平成22年) 138,876
2011年(平成23年) 154,214
2012年(平成24年) 160,196
2013年(平成25年) 175,147
2014年(平成26年) 182,294
2015年(平成27年) 200,533
2016年(平成28年) 208,012
2017年(平成29年) 214,032
2018年(平成30年) 227,384
2019年(令和元年) 227,843
2020年(令和2年) 140,612
2021年(令和3年) 148,607
2022年(令和4年) 176,881
2023年(令和5年) 202,030

ウィキペディア. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B1%8A%E6%B4%B2%E9%A7%85. 参照2025-02-02.

コロナ流行による落ち込みはあるものの、開業以来一貫して利用客数が増加していることが読み取れる。特に、ゆりかもめ豊洲駅とららぽーとが開業した2006年度付近の伸びは凄まじい。人口減少・少子高齢化が叫ばれる昨今の日本において、豊洲はそれに逆行し、上り調子の街なのだ。また、東京に限った場合でもこれほどの伸びを見せる街はあまりないだろう。大江戸線勝どき駅を挙げることもできるが、背景・立地ともに豊洲と同類なのでここでは考慮しないことにする。

余談だが、乗降人員のデータを参照するうえで個人的に気にしているのが2019年度の数値であり、豊洲の場合2019年度の数値は2018年度のそれを上回っていることが分かる。2019年度は一般にコロナ前の平常時の数値として取り扱われることがあるが、2月後半から3月にかけては不要不急の外出自粛要請や休校要請が出され、ウィズコロナと称された2020年度から2022年度にかけてと比較して極度に外出自粛が徹底された時期でもあった。つまり、極度に利用客が減った1ヶ月を含む2019年度の乗降人員が前年の2018年度の乗降人員を上回っている駅は、急速に利用が増加していることを意味していると考えられるわけだ。この観点からも、豊洲はまだまだ上り調子の街と評価することができる。

2. 中学受験塾

具体的にどこまで中学受験塾に含めるかは難しいうえ、網羅するのは困難である。とりあえず、ここでは以下に挙げる塾を中学受験塾として定義し、豊洲に何校あるのかを調べ上げた。

  • 早稲田アカデミー

  • 日能研

  • SAPIX

  • 四谷大塚

  • 栄光ゼミナール(難関私国立中入試対策コース)

  • エルカミノ

  • Gnoble

  • Z会進学教室(国私立・公立中学受験コース設置校)

  • Genius

  • エクタス(Z会エクタス)

  • 駿台・浜学園

  • 希学園首都圏

  • ExiV(早稲田アカデミーExiV)

  • ena小学部(私立最高水準)

  • フォトン算数クラブ

  • ルータス

  • ena小学部 極

  • SPICA(早稲田アカデミーSPICA)

  • ユリウス(※個別指導)

  • 早稲田アカデミー個別指導学院(※個別指導)

  • プリバード(※個別指導)

結果としては9校が豊洲にあることがわかった。

  • 早稲田アカデミー

  • 日能研

  • SAPIX

  • 四谷大塚

  • 栄光ゼミナール

  • エルカミノ

  • 駿台・浜学園

  • ユリウス

  • 早稲田アカデミー個別指導学院

  • プリバート

また、中学受験塾ではないもののSAPIX kidsという幼児教室もあった。SAPIX kidsは、豊洲の他には代々木と御茶ノ水にしか校舎がないとのことである。先ほど挙げた21の中学受験塾の中で、都内で最も多くの塾が校舎を設けていたのは、自由が丘と成城学園前で13校があった。次いで、吉祥寺の12校、渋谷の11校であり、その次に多いのが豊洲の9校であった。中学受験業界にとっては、豊洲は大きな市場であり、抑えておくべき街という認識になっているのだろう。

3. 千葉に近い

この記事を書きたかった理由の核はこれだ。豊洲は千葉に近いのだ。千葉に近いということは、中学受験において千葉県の学校を受けることができるということを意味する。中学受験をするうえで千葉と埼玉に近いということは選択肢を増やすという意味において重要だったりする。なぜなら、両県は1月に入試があり、2月1日という本番を迎える前にいくつか学校を抑えておくことができる。もちろん神奈川や東京南西部に住んでいる場合であっても、埼玉と千葉の学校を受ける場合が多いだろう。しかし、現実的に通うとなると、電車に乗っている時間が1時間を越えてきてしまい、中学生が一人で毎日通学するには負担が大きい。この点、豊洲は千葉の学校も十分現実的な選択肢として考慮できるのである。

具体的に、千葉県へアクセスする場合、まず豊洲から5分ほど有楽町線に乗って新木場を目指す。そして、新木場で京葉線に乗り換えればあっという間に千葉に入ることができるのだ。ここで、次の章とも関係するので、少し海浜幕張という特定の駅を取り上げる。海浜幕張は千葉市内では千葉市に次ぐ乗降人員を誇り、京葉線内途中駅では新木場に次ぐ乗降人員を誇る。そして、海浜幕張は豊洲から1回乗り換えかつ35分ほどでたどり着くことができるのである。つまり、豊洲と海浜幕張は近いのだ。

4. 渋幕という地殻変動

千葉県の中学受験を考慮するうえで渋幕の存在は大きい。もともと、千葉県は県立千葉高校が進学校の頂点に君臨していたが、現在では渋幕に劣後するうえ、千葉県の中学受験の最高峰は渋幕で間違いないだろう。渋幕は比較的新しい学校であり、意図的に設計された進学校である。場所は幕張駅・京成幕張駅と海浜幕張駅に挟まれた地点にあり、最寄り駅は海浜幕張で徒歩10分といったところだ。海浜幕張という立地が重要で、先ほど述べた通り豊洲と海浜幕張は近いのでかなり有力な選択肢になる。

他にも、同じく新木場から1本でアクセスできる西船橋からスクールバスで通学できる市川や、渋幕に隣接し渋幕と同じく海浜幕張徒歩10分の昭和学院秀英も現実的な選択肢として挙がるだろう。なお、市川の入試会場は幕張メッセであり、奇しくも海浜幕張が最寄り駅である。

5. 東京の主要校も近い

千葉にばかり注目してきたが、豊洲は東京の主要校も近い。というか豊洲から通いやすい場所に魅力的な学校が多いと言った方が適切かもしれない。以下は平日の朝ラッシュ時に豊洲から各校最寄り駅までの所要時間と乗り換え回数を記載したものである。なお、ヤフー乗換案内アプリ¹を使用して調べた。

  • 開成(西日暮里): 29分、1回

  • 麻布(広尾): 27分、1回

  • 武蔵(新桜台): 38分、0回

  • 駒場東邦/筑駒(駒場東大前): 30分、2回

  • 早稲田(早稲田): 25分、1回

  • 芝(神谷町): 21分、1回

  • 桜蔭(水道橋): 24分、1回

  • 女子学院(麹町): 13分、1回

  • 雙葉(四ツ谷): 18分、1回

  • 豊島岡(東池袋): 25分、1回

  • 白百合(飯田橋): 17分、0回

  • 頌栄女子学院(高輪台): 28分、2回 

  • 渋渋(渋谷): 22分、1回

  • 小石川(千石): 27分、1回

ざっと思い浮かぶ中学で豊洲から通いやすそうな場所にある学校を挙げた。乗り換え1回以下かつ30分以内の乗車で通える学校が多いのは強みだろう。

6. 結論

豊洲は、工場地帯に過ぎなかったかつてと比較して人口が急増している。その中には子育て世代の流入も大きいと考えられる。それに伴い、中学受験業界も豊洲に目をつけ多くの塾が豊洲に校舎を設けるようになった。

豊洲に中学受験塾がひしめき合う状況は、豊洲の再開発に伴う人口増加だけに理由があるのではなく、豊洲の立地にも理由があるのではないか。京葉線を介して千葉、とりわけ千葉県内の進学校が所在する海浜幕張へ容易にアクセスができることそもそも多くの東京の進学校へのアクセスが良いことがわかる。

¹: 2025-02-03実行

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