本当は

　生きているのが辛い、苦しい

　違う

　そうじゃない

　私は不自由ない生活をしている

　なのに

　死にたい

　私は社会人。ごく普通の会社で働く一般人。成人済み。アラサー手前。女。私の自己紹介はこんなもん。淡泊で中身の無い検索ワードみたいな自己紹介だけどそれしか思いつかないのよ。

　生活には困ってないわ。そこそこいい役職についてるし、それなりにお金も貰ってるし、家も都内のマンションに住んでいるの。夜景は綺麗だし、景色もそこそこよ。

　そう、全部そこそこ。それなりで、そんな感じで、その程度なの。男もいるわ。けれど、互いに大人だから干渉しないし、仕事が忙しくて会う事も少ないの。え？寂しくないか？そうね、寂しくないし、別にどうでもいいわ。私は私で自分の機嫌を取るもの。男の一言で自分の機嫌が左右されるような恋愛はもうとっくの昔に辞めたの。

　私には飼い猫がいるのよ。いつも私の布団で寝るの。可愛いわよね。愛くるしくて、すぐ甘やかしそうになるわ。

　私の友人は皆、結婚しているの。子どもがいたり、再婚して幸せに暮らしているの。最近娘が小学校に入学したってインスタグラムの投稿で見たの。とても幸せそうな家族写真が載せられていたわ。かつては私のと一緒に朝まで飲み明かしていた友人がすっかり母の顔になっていたの。

　私は仕事だけよ。仕事しか出来ないの。周りからは出来る女とか言われるけれど、そんなのどうでもいいの。やらなきゃいけなかったの。私はお金が欲しかったの。けど、お金がたくさんあっても物足りないの。

　お金って人の心をすごく満たしてくれる物でもあるけれど、人の心を虚無にさせる物でもあるの。世の中はお金が全てよ。けれどお金で買えない物は必ずあるの。私はそれに気づいたの。そして知ってしまったの。

　私は友人の様になれない、と。

　可能性はあるじゃないと言われるけれど、そんなもの自分が思っていないと意味ないじゃない。私は自分がこの仕事をこなしてやる、この仕事は絶対に出来ると思って意地でも仕事してきたわ。けれどこればっかりは違うじゃない。意地でどうこう出来る事じゃないじゃない。

　え？今の男と結婚すればって？そうね、出来ればいいわよね。半年近くも会ってないし、そういう事もご無沙汰よ。彼とはって話だけれど。他の男なら三日前くらいかしら、年下の可愛い顔した営業の子だったわ。痛くないですか？なんてそんな事、この年の女に聞くことかしら。初々しさに少し心が痛んだわ。

　いつからか、好きな人にあいさつをするだけで緊張していた事も、手を繋いで歩ける喜びも、一緒に寝て朝を迎えられる幸せも、全て全部色あせていたの。

　私は私がしたい事をして生きてきたけれど、それだけだったの。もう何がしたかったのかも分からなくなって、何をしても満足できなくて、それを話せる人は気付いたら周りにいなかったわ。

　贅沢な悩みだと分かっているわ。だから誰にも話さなかったのよ。こうして今日を迎えるまでは、ね。

　そうね、ここまで読んでくれてありがとうと言っておくわ。今日で私はもうこの世から居なくなるの。全部を捨てて私は私の手で自分を終わらせるわ。最後まで自分のやりたいようにやったわ。もうこれ以上何も見たくないの。何も感じたくないの。だから、もう。

来世ではもう少しわがままな女でいたいわね

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【東京都、品川区の○○マンションにて、○○○○さんの遺体が発見されました。事件性は無く、飛び降り自殺を図ったとして警察が調査を続けています。】

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