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もう一度、訪れたい街


ナポリからローカル線に乗り換えて1時間ほど乗ると、来てみたかった街についた。20年前のこと。


当時はアマルフィに旅するのが流行っていて、さぞかし観光客で賑やかだろうと思っていたが、意外に静かで落ち着いた街だった。
駅から歩いていける近さで、海沿いの崖の上の素敵なホテルに着くと、誰よりも先に5歳の孫娘がわぁ!と感嘆の声をあげた。
案内されたびゅうサイドの部屋に入ると、目についたのはバルコニー。
早速外に出てみると、なんと!そこは海の上だった。吸い込まれそうなブルーの海の上。バルコニーだけが建物から突き出ていた。船の上よりリアルな想像も及ばない光景に、只々、眼を丸くする。
翌日は中庭に面した部屋との交換予定だったが、そのバルコニーが気に入り、頑として応じない5歳の子。
子どもにとっても夢のような部屋だった。
ディナーはテラス席で、カンツォーネを聞きながらの至極のとき。
これだから旅はやめられない。

翌朝は駅まで出掛けてみる。
さほど大きくない商店街だったが、靴やカバンを作っている店が数軒、目についた。皮の良い匂いにつられて入ってみる。年季を重ねた職人たちが作業をしていて、その顔が自信に満ちて誇らしげに思えた。見るもの全てが買いたくなる物ばかりの上等品。さすがイタリアだ。
最高の目の保養になった。

ホテルの方へ戻って、海沿いを風に吹かれてぶらぶら歩いた。
目に止まったのは、入口がアーチ風に花飾りのあるレストラン。
案内されたテラス席は、海が眼下に見える。その雰囲気に魅了されていると、出てきたのは魚介類が山盛りのスパゲッティ。その美味しさに思わずみんな笑みが溢れる。これぞ本場の味だ!
その夜も同じ店で食事をした。何度でも行きたいあのレストラン。


ああ、忘れられない日々が蘇る。
もう一度訪れたい太陽と青い海の街、そこはイタリアのソレント。


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